漂流魔王、異物として深淵世界を変える 前編
「・・・インゴベルト、クリムゾン。いるな」
「・・・なんだ、ノブナガ・・・ノックも無しに入ってくるとは・・・」
「細かいことは気にすんな・・・話をしに来た。あの預言狂いどもの事をな」
「・・・何かあったのか?」
・・・王の私室に我が物顔で入室し、中にいた王と王族に手を上げて気楽に挨拶をするホド特有の着物を崩す形で着た黒髪の男、信長。
その信長の姿に王のインゴベルトは怪訝な顔を浮かべるが、トーンを低く落としたその声にクリムゾンと呼ばれた男が表情を瞬時に引き締める。
「今回奴らがこのキムラスカのバチカルに来た理由は単なるご機嫌伺いじゃねぇ・・・奴らの目的はインゴベルト、お前の妻の出産に関わることだ」
「何・・・どういうことだ、ノブナガ?」
「奴らしきりにいつ子どもが生まれるか、陣痛が来たら教えてほしいと言ってやがるらしい・・・それだけならまだ違う国に来た使者が国主の第一子の誕生を祝う為だなどとでも言えるかもしれんが、他にも控え目にじゃあるが探るように侍女に関しての情報を求めて来ておる。同じ時期に子どもを腹に宿し、同じ時期に子どもが生まれるだろう侍女に関しての情報をな」
「何・・・それは妙だな。侍女の情報をしきりに求めるなど・・・」
信長はその目的がインゴベルトの妻に関わることと言った上で侍女の存在を聞いてきたこともポイントだと言い、二人ともに妙だと頷き返す。
「そこで俺は考えた。奴らが何を待っているのかと・・・二人の女の妊娠、その内一人は後の王となるか王女となるかを宿す人物・・・これが何の意味を示すのか、最も最悪な可能性はインゴベルト・・・お前の妻の子が死産辺りになり、侍女の子を身代わりに使うことだ。それもお前らを筆頭に、何も言わないままにキムラスカを丸々騙すような形でな」
「なっ・・・!?」
「どういうことだ、ノブナガ!?・・・まだ、百歩譲って死産なのは分かるとしても身代わり・・・それも、我々に黙ってなどと何故そのような推測が出てくる・・・!?」
「あいつらは言うべき預言に関しちゃ無遠慮に話す。後に控えたホドでの戦争とやらが預言に詠まれてるからそれをちゃんと引き起こせと相手方にはご丁寧に内緒にしろっていう形でな。だがそうやって無遠慮な筈のあいつらが何にも言わないばかりか、むしろこっちにはこそこそと黙って行動している・・・となりゃあいつらは少なくともその二人に関して何か俺らに隠してんのは確かだが、女の出産・・・それも異なる身分の二人の事を考えりゃ、自ずと答えは出てくるって訳だ。子どもの入れ替えくらいしかねぇって形でな」
「「っ・・・!」」
そこから更に信長がその狙いについて否定する理由がないと言わんばかりに推測を並べ立てていき、二人は怒りを滲ませギリッと歯を噛み締める。信長の言葉が事実だとすればこの上無いダアトのキムラスカへの裏切り行為に他ならないと、そう感じた為に。
「だが今の話はあくまで俺の推測でしかねぇ・・・だからインゴベルトにクリムゾン、俺の考えに乗ってみる気はないか?うまくいきゃダアトの真意を量る事が出来る上、子の死を避けることも出来るかもしれんぞ?」
「それは、真か・・・!?」
「ノブナガの言葉に乗りましょう、陛下・・・もし今の推測が事実であったとしたならキムラスカにとって大打撃になると共に、ダアトに最悪のアドバンテージを握られる事となります・・・!」
「・・・うむ、そうだな・・・!」
そして一応まだ推測でしかないと前置きはしつつ確かめる手段はあると切り出す信長に、二人はすぐに気持ちを切り替えその言葉に食い付く・・・信長の心中がいかに歪んだ笑いで満ちているか、そんなことに考えをいかせることも出来ないままに・・・
.
「・・・なんだ、ノブナガ・・・ノックも無しに入ってくるとは・・・」
「細かいことは気にすんな・・・話をしに来た。あの預言狂いどもの事をな」
「・・・何かあったのか?」
・・・王の私室に我が物顔で入室し、中にいた王と王族に手を上げて気楽に挨拶をするホド特有の着物を崩す形で着た黒髪の男、信長。
その信長の姿に王のインゴベルトは怪訝な顔を浮かべるが、トーンを低く落としたその声にクリムゾンと呼ばれた男が表情を瞬時に引き締める。
「今回奴らがこのキムラスカのバチカルに来た理由は単なるご機嫌伺いじゃねぇ・・・奴らの目的はインゴベルト、お前の妻の出産に関わることだ」
「何・・・どういうことだ、ノブナガ?」
「奴らしきりにいつ子どもが生まれるか、陣痛が来たら教えてほしいと言ってやがるらしい・・・それだけならまだ違う国に来た使者が国主の第一子の誕生を祝う為だなどとでも言えるかもしれんが、他にも控え目にじゃあるが探るように侍女に関しての情報を求めて来ておる。同じ時期に子どもを腹に宿し、同じ時期に子どもが生まれるだろう侍女に関しての情報をな」
「何・・・それは妙だな。侍女の情報をしきりに求めるなど・・・」
信長はその目的がインゴベルトの妻に関わることと言った上で侍女の存在を聞いてきたこともポイントだと言い、二人ともに妙だと頷き返す。
「そこで俺は考えた。奴らが何を待っているのかと・・・二人の女の妊娠、その内一人は後の王となるか王女となるかを宿す人物・・・これが何の意味を示すのか、最も最悪な可能性はインゴベルト・・・お前の妻の子が死産辺りになり、侍女の子を身代わりに使うことだ。それもお前らを筆頭に、何も言わないままにキムラスカを丸々騙すような形でな」
「なっ・・・!?」
「どういうことだ、ノブナガ!?・・・まだ、百歩譲って死産なのは分かるとしても身代わり・・・それも、我々に黙ってなどと何故そのような推測が出てくる・・・!?」
「あいつらは言うべき預言に関しちゃ無遠慮に話す。後に控えたホドでの戦争とやらが預言に詠まれてるからそれをちゃんと引き起こせと相手方にはご丁寧に内緒にしろっていう形でな。だがそうやって無遠慮な筈のあいつらが何にも言わないばかりか、むしろこっちにはこそこそと黙って行動している・・・となりゃあいつらは少なくともその二人に関して何か俺らに隠してんのは確かだが、女の出産・・・それも異なる身分の二人の事を考えりゃ、自ずと答えは出てくるって訳だ。子どもの入れ替えくらいしかねぇって形でな」
「「っ・・・!」」
そこから更に信長がその狙いについて否定する理由がないと言わんばかりに推測を並べ立てていき、二人は怒りを滲ませギリッと歯を噛み締める。信長の言葉が事実だとすればこの上無いダアトのキムラスカへの裏切り行為に他ならないと、そう感じた為に。
「だが今の話はあくまで俺の推測でしかねぇ・・・だからインゴベルトにクリムゾン、俺の考えに乗ってみる気はないか?うまくいきゃダアトの真意を量る事が出来る上、子の死を避けることも出来るかもしれんぞ?」
「それは、真か・・・!?」
「ノブナガの言葉に乗りましょう、陛下・・・もし今の推測が事実であったとしたならキムラスカにとって大打撃になると共に、ダアトに最悪のアドバンテージを握られる事となります・・・!」
「・・・うむ、そうだな・・・!」
そして一応まだ推測でしかないと前置きはしつつ確かめる手段はあると切り出す信長に、二人はすぐに気持ちを切り替えその言葉に食い付く・・・信長の心中がいかに歪んだ笑いで満ちているか、そんなことに考えをいかせることも出来ないままに・・・
.