心臓に打ち込まれた罪の楔

「どう思う?やっぱりあの手紙って今までからするとピオニー陛下に渡ったらまずいんじゃない?」
「・・・確かに和平に必要な書簡はともかく、それとは別の手紙を書いたってのは引っ掛かるな・・・」
「やっぱり中を見た方がいいよぉ。もしかすると私達の悪口が書かれてるかもしれないし」
「つっても旦那が手紙を持ってるしなぁ・・・」
「じゃあティアにも協力してもらおうよ。譜歌で眠らせればいくら大佐でも抵抗出来ないし、なんか悪い事書かれてたらこんな手紙ピオニー陛下に渡せないって破って捨てた後に大佐に言えばいいんだよ」
「・・・あまりこういう事は気が進まないんだが、確かに中身は気になるな」
「なら早く行こっ!今日の内に行かないと明日にはグランコクマには着いちゃうんだから」
「・・・ああ、ティアのところに行くか」
その会話を最後に二人はタルタロスの船室から抜け出し、寝静まっているであろうかの女の元へと向かう。



それこそが魔女と魔王の思惑の内だとも知らず・・・









それから翌日、タルタロスは無事にグランコクマへとたどり着いた。本来なら戦争間近だった状況でグランコクマは閉鎖されていると思われた。だがルークから遣わされた兵士の代表者から「今はルーク様からの言伝をグランコクマに送られたため、このタルタロスだけは通れるようになっている」という事を聞いたため、直接グランコクマにタルタロスを入港させる事が出来た。

だが無事に滞りなくグランコクマに着いたというのに、一行の雰囲気はよくない。正確にはジェイドとアニス、ガイ、ティアの間にだ。ナタリアとアッシュはタルタロスに乗っている間、一言も会話を繰り出しては来なかった。ただ独り言をブツブツ呟くだけで、そんな二人はもはや誰かの状態に気を配れるはずもなくただジェイド達の後を追う事しか出来ない。故に二人はついてきただけに等しい状態で、生きた屍がついてきてるようなもの。もはや二人には前の会話に耳を傾ける余裕さえなかった。



「・・・行きますよ」
「いい加減機嫌直してくれよー、旦那~」
「・・・確かに眠らせてしまったのは悪いと思っています」
「けど~、あんな手紙出されたらどうなるんだろうって思うのは当然じゃないですか~。それに中身は何も書いてない白紙だったんだし」
「私が言いたいのは何故無為に破り捨てたのかという事です。全く、余計な事を・・・」
「あんな手紙意味ないからいいじゃないですかぁ」
嫌味を持って吐き捨てるジェイドに、アニスはそれを意味がないからいいではないかと言い出す。



意味がない、手紙を開けてアニスが目にしたのは自身が言ったように白紙そのものの紙であった。何かあると思い目にしたのは白紙・・・正直なところで言えばアニスは自分の罪が書いてあればどんな理由があっても破り捨てる予定だった。しかし全く中身は書いていなかった事に、拍子抜けとこんなもの出す必要ないと自らの独断で便箋ごと一気に破り捨てたのだ。



「まあまあ、グランコクマに着いたわけですし早く陛下のところに謁見に行きましょう」
嫌なムードを払拭しようとイオンはもう手紙の事はいいではないかと言わんばかりに、間に割って入る。
「そうですよぉ、早く行きましょう」
「・・・そうですね、過ぎてしまったことは仕方ありません」
といいながらもあからさまに不機嫌そうにジェイドはイオンに同調する。その言葉を皮切りに、ジェイド達はブリッジから退出していった。






「・・・ジェイド達が帰って来たのか」
「はっ、いかがいたしますか?」
「とりあえずは様子を見る、用意だけはしてもらってくれ」
「はっ、そう伝えておきます」
「・・・ジェイドのヤツ、報告のままのことをしていないよな」







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