悪魔の手による演劇変更

・・・元々この二人がどうやって出会ったのかと言うと、ローレライが未来からこの時間帯に戻るという時間逆行を行った際に杳馬がそのエネルギーを察知し、接触してきたからだ。

初めは何故と驚いたローレライだったが、杳馬との話とその存在感に理解してしまったのだ・・・杳馬が自身とは何段階も違うステージにいる存在なのだと。

そう理解して自身の消滅も覚悟していたローレライだが、話をしていく内にローレライからして意外な方向へと話は進んだのだ。杳馬がローレライに協力する、という方向に。



「・・・ま、結果も確認出来た事だし俺はこの辺りで失礼するわ。そろそろ俺の演出するステージの幕が上がる頃だろうし、舞台を整えに行かなきゃね」
『・・・感謝する、杳馬。そして願わくば、もう我々が再会する事がないよう祈らせてもらう』
「んははっ!心配しなくてもこんなクソ舞台になんか二度と来ないって!・・・じゃあな、ローレライ」
それで杳馬が行くといったように口にした事にほぼ直接的に会いたくないと言い切るローレライだが、却って愉快と笑いながら杳馬は手を振りスッと姿を消していく。
『・・・運が良かったと言うべきか、あの悪魔の犠牲になる物を増やしたと言うべきか・・・いや、最早あの悪魔に対して我には何も出来ぬのだ。後はその事は気にせずあのアッシュがルークを結果として助けてくれることを願おう。杳馬が変えてくれたアッシュが・・・』
そして場に残ったローレライは何とも言い難い気持ちになりながらも、下の方に意識を集中する。今のアッシュに対して・・・



・・・元々ローレライが時間逆行を引き起こしてまで過去に戻ってきたのは、ルークを助けるためだ。その為なら何でもする、そういった覚悟はしていた・・・しかし杳馬に出会ったことでそれが甘かったことを杳馬から生半可な事では逃れられないことから悟った。

そんなローレライだったが、協力すると言われた上でローレライの望み通りにしてやると全面的に主導権を渡された時には驚きを隠せなかった。協力と言いつつその実は杳馬の言い方で言うなら舞台を引っ掻き回すだけ引っ掻き回しで、ルークの無事な生存も含めてオールドラントの平和などとは縁遠い結末になると思っていた為に。

だが杳馬があくまで自分の為の実験がしたいだけで、それ以外にこんなクソ世界でやることなどないと本心から言ってのけた事にローレライは安堵と共に何とも言い難い気持ちを覚えた。杳馬、いや仮にも自身の上位の存在から見ればこのオールドラントの在り方はそんな見られ方をされているのかと。

しかしそれでも今更杳馬の手を振り払い自身の手だけで事を進めることは出来ないと感じていたローレライは、ならせめてと最低限の程度で事が進められるようにとアッシュの考え方を変えるようにしてほしいと願ったのだ・・・ルークに全て考え方をねじ曲げて向けられるはずだった悪感情の行方を、ルーク自身に対しても抱かないようにした上で正しいベクトルへと向けるように考え方を変えてほしいと・・・















・・・そこから、杳馬の手により考え方を変えられたアッシュはルークの事も手助けをしつつ全ての事をローレライが思う以前よりよい方向に修正して終わらせた。まぁ一部を除いて、ではあるが。

ただローレライの心の内にはスッキリしない物がずっと残っていた。杳馬、いやあの悪魔が本性を明らかにした上で自由にその考えのままに動いたらどうなるか・・・計らずとは言え、悪魔の実験に手を貸した自分のせいでどれだけの悲劇が起こるのかと思う形で・・・












END













10/11ページ
スキ