悪魔の手による演劇変更

「・・・ナタリア。無断でそいつらに付いて来たお前がキムラスカの者から誰にも止められる事なくここまで来たのは知っている。その上で言うと、アクゼリュスはヴァンの手で崩落という形になったが・・・そんな場に王女であるお前を巻き込まれないようにせんとしなかったわけだ、キムラスカは。それはすなわち、他の奴らもそうだがお前の事を見捨てた・・・ということと同義なんだよ、ナタリア」
「っ!?うっ、嘘ですわ!お、お父様が私を見捨てるはずなんてありません!お、お父様はその・・・私がアクゼリュスに向かったなどと思わず、別の所に向かったと探して・・・」
「現実逃避は止めろ、ナタリア・・・話に聞く限りではお前はバチカルでアクゼリュス行きに同行すると頑として聞かずにいたらしいが、それで何がどうして他の場所に行ったという発想になる?そして更に言うならケセドニアはまだいいとしても、カイツールの港はキムラスカの所有地であると同時にアクゼリュスに向かうには国境を越える以外にはそこを経由するしかない。つまりはお前をアクゼリュスから遠ざけたいなら港か国境に連絡を入れて説得に場合によっての拘束をするようにと命令を下すのが妥当な判断になるが、そいつらと共に港に降り立った際には説得すらなかったのだろう・・・つまりはお前もアクゼリュスと共に死ぬようにと判断を下したんだよ。預言を守るために大方ナタリアもそのメンバーに入っているから何事もなければ通せ・・・とでも通達し、下手にお前がごねるか何かをして時間を取られたりトラブルを起こされるのを避けるためにもな」
「!!!?」
・・・ナタリアにとってあまりにも信じがたく、だが否定など出来ない順序だてられた理屈をアッシュから向けられナタリアは魂が抜け出るかと言わんばかりに一気に顔色を青くさせ驚愕の表情のまま制止してしまった。自分も死ぬことを望まれ、放置された・・・そう聞かされて。
「・・・と言うわけだ。国の発展の為に犠牲はつきものだ、といった考えは今なら一応理解は出来ん訳ではない。だがそれを俺自身、しかも俺に言うことなく内密に進めてきた上で多数を巻き込むと容易に決断出来る相手など信用する気はない」
「・・・貴方の判断は妥当だとは先程も言いましたが、それならルークをキムラスカに戻した方が手段としてはいいのではありませんか?貴方の身の上を考えれば下手にルーク共々キムラスカに連れていかれる可能性もありますので、ルークを囮にした方が貴方も逃げやすくなるとは思いますが・・・」
「・・・その事については俺も考えていない訳じゃないが、今の状況ではまた別の可能性もある。それは、キムラスカがそいつを利用して血筋を保とうと秘密裏に動く可能性だ」
「・・・成程、次代のキムラスカ王家の血筋を保つための手段としてルークに悪名を始めとした全てを押し付ける心積もりのある策を取る事もあり得る・・・ということですか」
「・・・っ!?」
アッシュはそれを自身にぶつけることは我慢ならないと告げ更なるジェイドの矛盾点の追求にも答えると、眼鏡の奥の目が細まりルークは言い知れぬ恐怖に震える。まだ何か自身に降りかかるのかといった様子を浮かべて。
「そういうことだ・・・一応は『ルーク』とナタリアで婚約が結ばれているというのは周知の事実ではあるが、二人が共に失われたと言うのであれば普通なら次代のキムラスカを担う王族の血を持った人間など存在しないことになる。だがそれが表向きはそいつからナタリア以外の女を襲い、孕ませたとするなら・・・批判こそ起きるだろうが、最終的にはこういった結論になるだろう。『形はどうあれ王族の血を引く子である事は確かだから、王族の子がいないことを除いても責任を持つという意味で王族として受け入れ育てる』とな。だがそれは事実は全く逆で、そいつが女を孕ませるまで女にそいつを襲わせ、そして一定の目処が立てば始末する・・・という一般に知られる話とは全く逆の事を行う可能性がある。そうなればキムラスカは後継ぎ問題で表向きはともかく苦心することはなくなり、犠牲になった者の事など気にすることはないとなってそれで終わり・・・というわけだ」
「っ!?」
アッシュはそんなルークに可能性の一つとして全てをルークに押し付けキムラスカの未来の為の犠牲とする道筋を事細かに説明し、その中身に戦慄する。幼い知識では全てを理解は出来ずとも、どう聞いた所でいい話とは言えるはずもないその中身を聞いた事により。












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