悪魔の手による演劇変更

「何故ですか、ルーク!?私は貴方の事をずっと待っていたのですよ!!」
「っ・・・ナタ、リア・・・!?」
「っ・・・」
だが続いたアッシュに向けての涙声での『ルーク』呼びという切り替えの早さにルークは愕然とした様子でナタリアに視線を向け、アッシュは苛立ちを我慢して歯を噛み締め拳を強く握りしめる。
「・・・失礼、ナタリア。貴女がアッシュに詰め寄りたい気持ちは分かりますが、先に彼に確認したいことを私が聞いてよろしいでしょうか?」
「っ、何ですか早く聞いてくださいジェイド・・・!」
「ではアッシュ・・・貴方はパッセージリングの前で謡将と敵対していましたが、貴方は我々の味方と見ていいのですか?」
「っ!何を言っているのですか、ジェイド・・・ルークは謡将の行動を止めたのですわよ!我々の味方でいいでしょう!」
「・・・すみませんアッシュ、どうですか?」
そんな場にジェイドが慎重に入り味方かどうかをアッシュに聞き、瞬時にナタリアが怒りをぶつけてくるが構わず再度問い掛ける。
「・・・強いて言うなら、俺はヴァンの敵だ。お前らと進んで敵対する気もないが、かといって進んで味方をする気もない」
「なっ・・・何故ですか、ルーク!?」
「っ!俺をルークなどと呼ぶな!」
「っ!?」
アッシュも仕方無くといったように答えるとその中身にナタリアが瞬時に悲しげに表情を歪めるのだが、反対に怒りの沸点が一気に上がった怒声を受けてたまらず萎縮してしまう。
「ちょっと、今の答えはどうかと思うわアッシュ」
「そうだよ~、ナタリアは悪気があって言ったわけじゃないんだし・・・」
「・・・悪気がないだと?・・・フン、悪気がなければ全て許されるとでも言うのか?他者のカンにさわる行動を取ったとしてだ」
「・・・一体ナタリアの何がカンにさわったって言うんだよ、アッシュ?」
その様子を少し離れた場から見ていたティアにアニスという女性がナタリアの擁護に出てくるが、アッシュは見下すような表情を浮かべてカンにさわったのだと言いこれまた近くで見ていたガイという男性も近付き若干ギスリとした空気を滲ませながらその中身についてを聞く。
「・・・今ナタリアがさも当然のように俺の事を『ルーク』と呼んだが、俺はその神経がカンにさわった・・・7年前から今に至るまでそいつがファブレにいたというのに、俺が本物だと分かった瞬間あっさりとためらいなく・・・」
「そ、それが何が悪いと言うのですか・・・貴方が本物の『ルーク』だという事実に違いはないと、貴方自身がおっしゃったことではありませんか・・・」
「確かにその通りだ・・・だが一度俺は、ヴァンに連れられてダアトに行った後に命をかけてバチカルにまで戻ってきた・・・だが遠くそいつがナタリアを含め、屋敷の人間に『ルーク』として手厚い歓迎を受けている光景を見た時・・・俺は、俺でなくとも『ルーク』がいればいいのだと思ったんだ・・・!」
「っ!そ、そんなことありませんわ!」
「お前はそいつを偽者だと知らなかった時でも、『ルーク』として見なかった訳ではないだろう!そんな存在と7年近くも時々接していたと言うのに、お前は全てそいつとの時間など無かったかとすら言わんばかりに俺を『ルーク』と呼んだ!その気の変わり方の早さを見て、俺は思ったんだ!お前は俺とそいつを本当の意味では見ず、ただお前の理想に想う『ルーク』という存在が欲しかっただけなのだとな!」
「っ!?」
アッシュはガイの言葉から次第に熱を増していき、ナタリアは必死にそんなつもりはないと返していくのだが、アッシュが一気に怒りが爆発させ指を指しながらぶちまけた言葉にナタリアは絶句した・・・言葉ではそうではないという気持ちだが、真意はどうあれ自分の切り替えの早さがあまりにもアッシュにとって都合がよく見えたと映ったことに気付かされて。








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