揺らがぬ愛と思うは一人ばかり

「・・・ですが、よろしいのですか?彼の事を本当に始末をしてしまって」
「・・・見方によっては彼の行動は仕方のないことだとか彼の本意ではないと言った言葉に、彼は不器用で純粋だからこそあぁなったとそう言う方もおられるかもしれません。ですが彼はあまりにも昔と変わらなすぎた。子どもの視点をずっとそのまま持ち続ける形で・・・」
ただウォルターは再度の確認をナタリアに向けるが、その声にそっと何かを思い出すように目を閉じながら返していく。









・・・ナタリアは王族としての教育を物心つかない内から行われてきた。それは父親である国王から与えられた物もあるが、昔から国に仕えていて王族とはかくあるべきかと見てきたウォルターよりの教育も含まれる形でだ。

そのウォルターの教育は幼いナタリアの心を苦しいと思わせるようなものではなく、かといって甘いとも言えるような物ではない絶妙な加減を持って行われる物だった。幼いながらに国とはどういうものかと、感情だけで国は動かないとナタリアに自然に学ばせ染み込ませるくらいに。

そんなウォルターの教育も受けて成長していったナタリアはまだファブレで『ルーク』だった頃のアッシュと出会い、婚約者だと紹介された。その時は王族として誰かと婚姻関係を結ぶのはまず避けられない必須な事だと思い、その相手はアッシュなのだと単に事実を確認するような形で。

だがそこからアッシュと度々交流するようになったナタリアは、次第に子どもであるという事を差し引いてもあまりアッシュという存在を個人的に好ましい人物だと思えなくなっていった。なら何がナタリアからしてアッシュの事を好ましいと思えなかったのかと言えば、自身と比べてあまりにその認識が狭かったからである。









「・・・昔の彼の考えは多少は子どもにしては大人めいた物ではありました。ですがそれは民の子どもの目線から見た物であり、貴族・・・それも国を担う王となるべき人間が持つ思想としてはあまりにも青臭い物でした。国の問題を見つめはしても、そこにどれだけの苦労があるかに変えることがどれだけ難しいか・・・それが子どもの考えだと頭では理解はしても、当時の私からしてみれば叔父様の姿を見て何故理解出来ないのかという気持ちを抱かずにはいられませんでした。そして今となって実際に会ってみれば、都合のいい所だけは昔のままで中途半端に自分の気持ちを優先した行動を取るようになっていた・・・彼に期待するのは無駄という以上に、手元に置けばトラブルが一杯起きていくだけなのは目に見えていますわ」
そしてそっと目を開け、アッシュに対しての気持ちは子どもの頃から無かった上にもうそれを越えるほど厄介者という気持ちを抱いているとナタリアは語る。









・・・王族としての教育に加え王に貴族の姿に仕事とは如何なものか、それらを子どもながらに間近で見てきたナタリア。そんなナタリアは父親達の苦労を子どもながらに察していたが、同じような立場にいるはずのアッシュはそれらを見て苦労だとかを感じたような事を言いはしなかった。

その事にナタリアは頭では理解はしても、アッシュの事を親達が決めた婚約だと受け入れはしつつも相手のように心から自分を好きになれないと感じた。

ただそれでも上が決めたことであり、王族の血を守るため・・・アッシュとの婚約は必要なことだと思い断ることなく進めていたのだが、ヴァンの策略によりキムラスカを離れたアッシュはプラス方面には全く変わらず、むしろマイナス方面にばかり変わっていった・・・そんな様子を見せられてナタリアが公私ともに、アッシュを問題なしと判断出来る筈もなかった。










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