揺らがぬ愛と思うは一人ばかり

「・・・私がそのような事を言うような人物ではないと、そう思うのは貴方の自由です。けれど貴方がルークを殺してでもキムラスカに戻るという強い気持ちを持って、選択をしなかったのもまた紛れもない事実です」
「っ・・・それは・・・」
「それなのに、何故貴方はルークに対する怒りをのうのうと語れるのでしょうか?本気でそれらについての行動を起こせなかったばかりか、今更ルークを殺そうとした貴方が・・・まさか預言の中身が自分に関係無くなったから、晴れて自分が生きるのに何の障害も無くなったからルークを殺しても問題はないとでも思ったのでしょうか?」
「そ、そんな事を考えてなんかいない!俺はただ、あの屑が気に入らない・・・そう思ったから行動したまでだ!」
「だから深い思惑はない、と・・・ですが貴方、先程自分の意志も関係無くキムラスカに連れて帰られたといった気持ちを露にしていましたわよね?でしたら貴方はいつになったらキムラスカに戻るつもりだったのですか?ヴァン達を止めた後ですか?ルークを殺した後ですか?預言の影響が無くなる今年が終わった後ですか?それとも今言った選択肢以外に何かあるのですか?・・・答えてください、アッシュ」
「そっ・・・それ、は・・・・・・」
そこから更に逃げ場を失わせるように怒濤の勢いで言葉を畳み掛けていくナタリアに、アッシュは必死に言い訳を探そうと視線をさ迷わせるが一切うまい言葉が出てくる様子もなく脂汗をかき出す。
「・・・どうやら質問が難しかったようですのでもう少し分かりやすくお聞きしますが、そもそもキムラスカに戻るつもりがあったかどうか・・・それくらいなら答えられるでしょう。二個しか選択肢が無いのですから。ただし、私に遠慮してだとか場の空気を考えてで発言するのに言い訳を交えるのは止めて、一言でどちらか答えてください」
「・・・それ、は・・・・・・戻るつもりは、なかった・・・今更俺がキムラスカに戻れる筈がないと、そう思っていたから・・・」
「ふぅ・・・やっと言ってくれましたね、本音を・・・」
その様子をラチがあかないと見かねたナタリアは多大に呆れを含ませながら二択にして答えるように言い、アッシュがようやく戻るつもりは無かったと絞り出すように答えたことにタメ息を吐いて声を上げる。ようやくかと待ちわびたような様子で。
「ナ、ナタリア・・・もういいだろう、本当の事を言ったんだ。いい加減ここから出してくれ・・・」
「・・・それで、ここから出て何をしようというのですか?キムラスカに戻るつもりがなかったと今貴方はおっしゃいましたが、だとしたら何の為に外に出たいとおっしゃるのでしょうか?・・・ルークへの恨みの為にカイツールの軍港をアリエッタに襲わせるという指示を出した貴方が、キムラスカの為になる行動をすると判断出来ると思いましたか?」
「あっ!?あれは、アリエッタが勝手にあんな規模の襲撃をしただけだ!俺はあんな風に港を滅茶苦茶にするように襲えなどと指示は出していない!あの屑と導師を拐えるようにしろと言っただけだ!」
それでアッシュはもういいだろうと言わんばかりに牢から出してほしいと切に願う声を上げるが、ナタリアがカイツールの事を出した事に慌てて弁明する。自分は指示を出しただけで、アリエッタにあんな結果をもたらすつもりの事は言ってはなかったと。
「・・・貴方はそうやってアリエッタが全て悪いといったようにおっしゃいますが、その言い方では多少は港に損害を与えることも視野に入れて指示を出していたのでしょう。なのに貴方は規模の面も含めてまるで自分は何もしていないし、責任もないといったように返した・・・正直、どうかと思いましたわ。キムラスカに被害を与えた事もそうですが、そんな無責任な事を何も考えずおっしゃれる貴方の無神経さを」
「っ・・・!」
だが一層冷やかさを増して絶対零度を思わせる視線と声の返しに、アッシュは冷や汗をかきながら絶句する。返す言葉がない以上に、ナタリアにそこまでのモノを向けられているというアッシュにとっての絶望に。









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