自業自得を加速させ、愛を奪う

「ルーク・・・」
「っ・・・・・・あぁ、黙ってようかと思ったけどやっぱりやめるわ」
「・・・え?」
息を呑んで少ししてしいながどこか吹っ切れたような言葉を漏らしたことに、ティアは戸惑いの声と共に顔を上げる。
「ねぇ・・・あんたはファブレに侵入したから色々うまくいってその中にルークと出会ったこともあるとでも思ってるんだろうけど、そもそもあんたの行動は間違いだって今言っただろ?そしてもっと言うなら・・・擬似超震動であんたもだけど、ルークも死ぬ可能性があったって事を分かってるのかい?」
「っ!?そ、それは・・・!」
「終わりよければ全てよしじゃないってのは何度も言ったばかりだろ?あんたは今までルークに生死に関わる重大な問題を何個も押し付けてきた・・・そしてそれを本当の意味で理解することもなく、単に迷惑をかけてきた程度の物と思ってきたあんたがルークに対する想いを口にするなんて私からすれば・・・許せる物じゃない」
「っ・・・!?」
・・・正当な理由以上に個人的に募ってきたしいなの怒りが、ティアを恐怖させた。
道理が伴った言葉の後に静かでいて強すぎる感情のこもった目を前にし、ティアはたまらず圧されてしまい後ずさる。
「・・・さて、イオン達には悪いけどあんたはここで片付けさせてもらうわ。覚悟しな」
「か、覚悟って・・・ま、まさか・・・!」
そのまましいなは自身の武器でもある札を取り出して詠唱をし出し、ティアはその言葉の意味する事に気付き戦慄する。



「・・・出でよ、イフリート!」



‘ゴゥッ!’
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁっ!?」
・・・そして詠唱が終わりイフリートの名を呼んだ瞬間に意識集合体の中の一体であるイフリートが牢の中に現れ、その手から業火を出して・・・ティアの全身を包み込ませた、とても女性が出すような悲鳴とは思えない程の悲鳴を上げさせる形で。
「もう聞こえちゃいないだろうけど、最後に言わせてもらうわ・・・じゃあね、私はあんたのことが大嫌いだったよ」
「・・・あ・・・」
業火をまとい、地面に崩れ落ちもだえるティア・・・そんな姿を絶対零度の眼差しを持って見下しながら最後の言葉をかけるしいなに、ティアは辛うじて何かを言おうとしたが結局は何も言えず事切れて動かなくなり・・・数秒後に炎が消えた時には、パッと素人が見ただけでは男か女かすら分からない焼死体が出来上がっていた。
『・・・少しやりすぎではないか?』
「そうでもないさ、死体が残ってるだけマシだよ」
『・・・そうか』
そんなティアだった物を前に場に残ったイフリートがしいなに話し掛けるが、全く気にした様子を見せない姿にそれ以上は何も返さずにいた。
「あんたからしたら後味の悪い召還だったろうけど、安心していいよ。もう他の意識集合体も含めて私が地上に呼び出すような事はないだろうからね」
『・・・分かった。ではさらばだ』
そんな姿に気遣いと最後の別れと取れる声をかけるしいなに、イフリートはまだ何か言いたげながらも最後の言葉を残してその場から消え去った。
「・・・さて、イオン達に報告に行くか。報告をしたらティアが激昂して攻撃してきたからやむを得ず反撃した、とでも言えばいいだろうね」
そしてひとりになったしいなは自分がティアを殺したことなど大した事でもないとばかりに嘘の報告をすると漏らし、牢を出るべく足を運ぶ。物言わぬティアの焼死体を残したまま・・・






END











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