自業自得を加速させ、愛を奪う

ここでしいながルークを置いてきた理由に関して、今ルークが外に出ることが望ましい事ではないというのは全くの嘘ではない・・・と言うのも事実だ。ルークにティアを追い詰める姿を見せないようにするだけではなく、だ。

今のルークがレプリカでありキムラスカにいるアッシュとの入れ換えの為に造られた存在だと知っているのは、そう多くはない。様々な条件が重なったが故に、そうであると広まらなかった為に。だが元々ルークの持つ赤い髪に翠の瞳と言うのは見た目からして目立つこともそうだが、キムラスカの王族のみが持ちうる身体的特徴だ。

そんなルークの特徴を見てキムラスカの王族に関連する人間ではと騒がれては、後々に影響するかもしれない・・・そういったことを避けるためにルークは大人しくしようと決めたのだ。心残りがないとは言えないがそれでももうキムラスカに関わらないようにというか、迷惑をかけないようにすると決心していた為に。



・・・話を戻すが、そのような事情もあってルークは大勢の人の前に出ることはもうまずない。だからこそティアに何が起ころうともルークがそれを知る手段はないのだ。ダアトから遠く離れた所にいるティアの事など。

そういった状況だからこそしいなはイオン達と関係を築いていた事も利用した上で、ダアトの上層部を動かした。

ただそれでもティアという仲間を救うためなら無茶を犯すという判断を下しかねないのがガイにナタリアを筆頭にした面々になるのだが、そこについてはしいなが言ったように既に救助しようとした際のリスクは伝えてあるし・・・何より、ナタリア達にとっても明かされてはならない爆弾と呼べる情報は存在しているのだ。今の立場が全てひっくり返りかねないものは。

そんな自分のみを殺しかねない爆弾を無視してまでティアを助けに行くような勇猛さがナタリア達にあるか?・・・そんなことはしいなからすればもうでもいいことだ。何せ世界は無事に預言から離れたばかりか望みのルークという後の旦那となる存在は自らの手の内で、その後の世界の動乱など自分とルークが死ななければ自らは関係無いことと思っているのだから。


















「お帰り、しいな」
「ただいま、ルーク・・・」
「・・・どうしたんだよ、しいな?そんな顔して・・・」
「あぁ、ちょっとね・・・」
・・・人気のない森の中に立つ家。
その家の中から出迎えてくれたルークにしいなは憔悴したような表情を見せ、心配そうに顔を覗きこんでくる姿にティアの事についてを話始める・・・ティアが本来受けるべきだった罪を受けることになりそれを避けることはまず出来ないと、嘘はつかないがそこに至る経緯についても言わない話を・・・


















・・・女の執念とはげに恐ろしき物



一つの存在の為に悪鬼にもなれる



だがそれと同時に、自らの幸せの為には誰よりも優しくなれる生き物でもある・・・



END











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