自業自得を加速させ、愛を奪う

そしてその方法は至ってまた単純である・・・ティアが改めて裁判にかけられそれを覆す事は出来ない事をルークに伝え、自身が悲しむように振る舞った上で既成事実を作る・・・という手段だ。



・・・旅をしている間、しいなはさりげにルークに対してアプローチを度々仕掛けてきた。自分がルークに対して悪意など持っていないどころか、むしろ好意があってこそやるのだというアプローチを。ただしいなとしては昔のアニスのようなあからさまな媚売りをするような形でやるのは女性として個人的に好きではなかったので、その辺りは一応控え目に端から見て媚びすぎないようにとは気を付けて接触していた。

ただルークは照れたりするものの、男としてしいなを求めてくることはなかった。その理由についてはしいなは分かっている・・・実年齢が七歳という年齢な為、見た目の年齢に伴った性知識に考え方という物がルークにはないからという事を。

その事自体にはしいなは別に問題はないと考えていた。だがそこでティアが関わるとなれば話は別だ・・・何せルークの判断力に思考回路はまだ十全と言えるほどに発達はしていない。自身がルークに嫌われるもしくは悪印象になるような事はしていないとしいなは考えてはいるが、それでもティアの方に惹かれてしまう可能性がなくなることはない・・・しいなはそうなる可能性についてを非常に危惧した。そしてルークが精神年齢的に幼いからこそ功を焦り強行手段で肉体関係を結ぶなどして無理矢理契りをかわそうとし、逆にルークから嫌われるか心を傷付ける可能性に関してもだ。

その為にしいなはルークと結ばれるために体を差し出すことなど躊躇いなどあるはずもなかったが、それらの危険を避けるためにも旅の間ずっと我慢してきたのだ。



・・・そんなしいなだからこそ想う相手を手に入れる機会にライバルを脱落させる機会の、二つがいっぺんに手に入るきっかけを見逃すつもりなどない。だからこその先述の手段である。

その上で今のルークはしいなが事前に用意した家・・・つまりは自分がルークと暮らす為の家にいる。そしてその場所を知る者は当人達を除いてほとんどいない。だが何故ルークがそんな所にいるのかと言えばアッシュがしいなによりキムラスカに戻された事もあるが、ルーク自身が選んだ事でもある。

これもまた様々な経緯があったのでどうしてそうなったのかの過程については色々省くが、結果としてアッシュがキムラスカに戻るというなら自分はそこから去るとルークが言ったからだ。そう決断するに至ったのはヴァンを倒すまでの旅の中で様々な成長をしたからなのだが、そこでキムラスカを出るとなった時にしいなが誘ったのだ。自分の所に来るようにと。そしてその結果としてルーク自身の意志もあるがティアを含めたナタリア達も変に居場所が分からないよりはその方がいいと判断した事で、しいなの家にルークが行くことになったのだ・・・実はその家の場所を知る者はごく限られていて、ティア達にその場所を知らせるつもりはしいなには一片もないことなどルークは知ることもなく。

そして今ルークは一人そこでしいなの帰りを待ちわびる形で待機している。下手に今の状況であんたが動いて目立ったら話が妙な事になりかねないからと、しいなから言い含められたことにより動けないと思い・・・今しいながティアに絶望を与えてきた事になど、考えを及ばせることもないままに。








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