自業自得を加速させ、愛を奪う

「だからさ・・・あんたを無理に助けようとしたら、それだけの損害が出るのさ。そしてそうなったら最初はまだしも、次第にあんたが矢面に上げられるのは簡単に想像がつく・・・あんたをルーク達が助けたが為に、戦争になったんだってね」
「っ!!」
そんなティアに情けなどかける気はないとばかりに追撃で最悪の可能性・・・戦争の大元と批難されるとしいなが口にすれば、衝撃に再び顔を下に落とした。
「てな訳だから、あんたは大人しく待つしかないのさ。余計な揉め事を起こしたくないなら、自分が犯した事についてを裁かれる・・・その時をね」
「そ、そんな・・・」
しいなはそこで今度こそ最後とばかりに助かる道はないし待つしかないと言い放ち、ティアは絶望しかないとばかりに呆然と言葉を漏らした。
「・・・ルーク・・・」
「っ・・・じゃあね、あたしはもう行くよ・・・(アハハ・・・これでルークはもうあたしのもんだ・・・あんたには少し嫌な気分にさせられたけど、結果的にあんたを使ってあたしは結ばれるのさ・・・あんたが好意を寄せていたルークとね・・・!)」
そして僅かにティアから漏れでたルークの名にしいなは瞬時に歪な喜びに満ちた笑みを浮かべた後に振り返り、一言言ってから場を立ち去っていく・・・もうティアの方を見ることもなく、内心の狂喜染みた想いを早足という形に出しながら・・・















・・・しいなはとある瞬間が来るまで、心の底から人生を楽しめた事はなかった。それは何故かと言えば自分が隠されたユリアの子孫という立場もあるが、自分の一族が負った指命・・・即ち、預言を覆すという目的を果たさねばならないと同じユリアの血を引く父親から口酸っぱく言われてきた為だ。

話が長くなるのでしいなの一族については世界が滅びるきっかけとなる預言の、聖なる焔の光が炭鉱の街と消滅したなら戦争が始まって最終的にオールドラントが終わるという預言を覆す事を、ユリアが自身の子の中の一人・・・即ち、しいなの祖先に託したのである。来るべき時にオールドラントの最後に繋がりかねない預言を止めてほしいと。

それでその祖先は細々とした上で秘密を保ちながらも確実に血脈を保っていき、しいなの代になってその預言が詠まれる年になったのだ。

ただ、こういう執念が千年以上の時も続いているというのに何故肝心のしいなが人生を楽しめてなかったのか?・・・それは大きく言うなら自身の肩にかかるプレッシャーの存在及び、目的を達成したなら自分はどうすればいいのかと考えたからである。



・・・オールドラントにおいて預言と言うのは絶大極まりない影響力を誇る、いわば神の啓示とも呼べる言葉だ。そんな物を一朝一夕に覆せるかと言うのは、しいなを含めた祖先からしてもまず簡単ではないという結論に辿り着いている。

それに加えて言うなら預言通りに戦争が起きて事が進んだなら、いよいよもっての世界の最後だ。事態は一気に進んで、どちらか・・・正確には預言に滅びが詠まれたマルクトが滅びねば、戦争は収束を遂げることはないのは想像に難くない。

そんな一つ間違えば世界が終わるというプレッシャーを考えれば精神的に相当にズシンと来ることもまた想像に難くないが、しいなはふと考えたのである。もし自分が預言を覆せたとしたなら、その後どうなるのかと。



・・・元々しいなの親、もっと言うならユリアの血を引いている方の親は代々誰かと結ばれ子を成したとしても、伴侶となった相手にも余程でなければ自身がユリアの子孫であることは内密にしてきた。何故かと言えば、もし事実を言ったとして事を公にされでもしたなら望まぬ形で名前が売れてそれ以降自由に動けなくなる可能性を考慮してのことである。

そんな風にして自身がユリアの子孫であることを父親から母親にさえ内密にして聞かされたしいななのだが、母親にも内緒にすると父親の言うことに従うと決めてからしばらくしてしいなはふと思ったのだ・・・全てが無事に済んだのなら、どういう風にして自分は暮らせばいいのかと。










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