自業自得を加速させ、愛を奪う
「・・・じゃああたしは行くよ。もうあんたには伝えるべき事は伝えたしね」
「っ、待ってしいな!」
「・・・なんだい?」
そしてそのまま振り返り退出しかけた時にティアが唐突に顔を上げて叫び、しいなはティアに分からない程度に不機嫌そうに振り返る。
「・・・貴女は、私を助けようという気はないの?」
「はぁ?何を言ってるんだい。先の旅じゃ流れであんた達に協力したけど、別にあたしはダアトに所属してる訳じゃないんだ。理不尽な事を言い渡されてるってんなら同情くらいはするけど、あんたの場合は全部身から出た錆ってやつでそのツケを払わなきゃならない状態だろ・・・それなのに、なんであたしが助けに入らなきゃなんないのさ」
「それ、は・・・っ!」
「ついでに言っとくと、ルーク達にもあんたの事でダアトに抗議に来たり、万が一救出に来るような事にはしないようにと釘を刺させてもらうよ。今は戦争になるって状況も無事に止めることが出来たし、国交も前に比べたら穏やかでいて順調にはなってる・・・けどそれはまだ完全に安定してるかってのとはまた別で、何か問題があればいつ戦争になるか分からない状態になる可能性が高い・・・そんな中でキムラスカにマルクトの代表ともなる人物達がダアトの人間を拐いに来た、なんてのが広まりゃ一気に戦争への気運が高まるよ。折角自分達が止めた戦争を、自分達が引き起こす・・・なんて全く笑えない結果になりかねない形になってね」
「っ!」
そこから仲間だからこそ助ける気はないのかとばかりに半ば批難気味にティアは声を向けるが、即座にそんな気はないとしいなは答えた上でルーク達にも行動はさせないとそうなった場合の危険性についてを口にし、ティアは顔色を再び青くしてしまった。
・・・先の旅でしいなを含めたルーク達は預言に詠まれた戦争を止めたばかりか、その預言に詠まれた世界そのものを壊そうとしていたヴァン達一味を壊滅させるに至った。
この事に関して自体は別に問題はない。むしろ望ましいことであったと言える・・・だが元々戦争への気運が高まっていたという状態を考えると、今ここで再び何らかの問題が起きるのは人々の感情としてはかなり危険な状況と言えた。もし問題が起きれば、今度こそ預言は関係無くとも戦争を行い相手を滅するまで戦えばいい・・・そう極端に考える者が出かねない形でだ。
そしてそんな状況でヴァン達の企みを止めた面々が本来罰を受けるべき仲間を助けに、ダアトからティアを強引な手段を持って助けたとしたらどうなるか?・・・おそらく大多数の人間から取ってみれば、不等な罰を受ける仲間を助けた勇気ある行動と美談に写る事だろう。だが無理矢理奪われる形になったダアトからしてみたら被害を与えられた上に、加害者の汚名まで被せられる形になる。踏んだり蹴ったりどころの話ではないのは目に見えているし、怒りに震える者達もまた出てくるだろう。
・・・そして即刻戦争とはならないだろうが、どう少なく見積もってもダアトとキムラスカにマルクトの関係は一気に悪化の一途を辿るのは間違いないと言えた。それも然るべき罰を受けるはずだった人間を個人的な感情で助けようとしての結果で、今までの苦労が全て水の泡になって消える形でだ。
・・・おそらくティアは戦争になる可能性と聞いて心を揺らしているだろうが、それが自分が理由でとなれば尚更である。基本的にティアは自分は正しい側に立っている人間であると信じていたが故に、その可能性になった場合の自分にかかるだろう精神的な重みを感じてしまい・・・
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「っ、待ってしいな!」
「・・・なんだい?」
そしてそのまま振り返り退出しかけた時にティアが唐突に顔を上げて叫び、しいなはティアに分からない程度に不機嫌そうに振り返る。
「・・・貴女は、私を助けようという気はないの?」
「はぁ?何を言ってるんだい。先の旅じゃ流れであんた達に協力したけど、別にあたしはダアトに所属してる訳じゃないんだ。理不尽な事を言い渡されてるってんなら同情くらいはするけど、あんたの場合は全部身から出た錆ってやつでそのツケを払わなきゃならない状態だろ・・・それなのに、なんであたしが助けに入らなきゃなんないのさ」
「それ、は・・・っ!」
「ついでに言っとくと、ルーク達にもあんたの事でダアトに抗議に来たり、万が一救出に来るような事にはしないようにと釘を刺させてもらうよ。今は戦争になるって状況も無事に止めることが出来たし、国交も前に比べたら穏やかでいて順調にはなってる・・・けどそれはまだ完全に安定してるかってのとはまた別で、何か問題があればいつ戦争になるか分からない状態になる可能性が高い・・・そんな中でキムラスカにマルクトの代表ともなる人物達がダアトの人間を拐いに来た、なんてのが広まりゃ一気に戦争への気運が高まるよ。折角自分達が止めた戦争を、自分達が引き起こす・・・なんて全く笑えない結果になりかねない形になってね」
「っ!」
そこから仲間だからこそ助ける気はないのかとばかりに半ば批難気味にティアは声を向けるが、即座にそんな気はないとしいなは答えた上でルーク達にも行動はさせないとそうなった場合の危険性についてを口にし、ティアは顔色を再び青くしてしまった。
・・・先の旅でしいなを含めたルーク達は預言に詠まれた戦争を止めたばかりか、その預言に詠まれた世界そのものを壊そうとしていたヴァン達一味を壊滅させるに至った。
この事に関して自体は別に問題はない。むしろ望ましいことであったと言える・・・だが元々戦争への気運が高まっていたという状態を考えると、今ここで再び何らかの問題が起きるのは人々の感情としてはかなり危険な状況と言えた。もし問題が起きれば、今度こそ預言は関係無くとも戦争を行い相手を滅するまで戦えばいい・・・そう極端に考える者が出かねない形でだ。
そしてそんな状況でヴァン達の企みを止めた面々が本来罰を受けるべき仲間を助けに、ダアトからティアを強引な手段を持って助けたとしたらどうなるか?・・・おそらく大多数の人間から取ってみれば、不等な罰を受ける仲間を助けた勇気ある行動と美談に写る事だろう。だが無理矢理奪われる形になったダアトからしてみたら被害を与えられた上に、加害者の汚名まで被せられる形になる。踏んだり蹴ったりどころの話ではないのは目に見えているし、怒りに震える者達もまた出てくるだろう。
・・・そして即刻戦争とはならないだろうが、どう少なく見積もってもダアトとキムラスカにマルクトの関係は一気に悪化の一途を辿るのは間違いないと言えた。それも然るべき罰を受けるはずだった人間を個人的な感情で助けようとしての結果で、今までの苦労が全て水の泡になって消える形でだ。
・・・おそらくティアは戦争になる可能性と聞いて心を揺らしているだろうが、それが自分が理由でとなれば尚更である。基本的にティアは自分は正しい側に立っている人間であると信じていたが故に、その可能性になった場合の自分にかかるだろう精神的な重みを感じてしまい・・・
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