自業自得を加速させ、愛を奪う

・・・ユリアの子孫。その存在はオールドラントの歴史の中でその血を細々と、だが確実に限られた周囲にそうであると示しをつけながら血脈を次代へと繋げていった。

だがほとんどの者は知らなかった・・・ユリアの子孫でいて、ユリアの血を受け継いでいる存在は一つだけではないということを・・・そしてその末裔が自身に一族の悲願を託されたことと、ある出会いにより本来こうなるべきであった性格から大きく変わってしまったと言うことは、当人さえ知らない・・・


















「・・・調子はどうだい、ティア?」
「っ!しいな、貴女・・・!」
・・・ダアトの中でも普通より罪深い罪人が送り込まれる、壁が厚く地下にあって深い独房の中・・・その独房の前に来たしいなに、ティアは敵対心を露にする。だがしいなは怯まないばかりか、見下すような笑みを深めるばかりだ。
「おや、その調子なら問題はなさそうみたいだね」
「何が問題はないっていうの・・・私は無実よ!いいからここから出しなさい!」
「無実だって言うなら詠師は何もこんな所にいれもしないし、すぐに出してもくれるさ。でもね・・・それがないってことは、詠師達もこう考えてるんだよ?あんたをここに入れたのは間違いじゃないってね」
「・・・っ!」
そのまま嘲っているようにしか聞こえない事を口にするしいなにティアは抗議に声を荒くするが、ここに入れて出そうとしないのは詠師の判断と言われ目付きをギラリと鋭くする。
「ま、あんたの様子じゃどうしてそうなったのかなんて理解してないようだからあたしが説明したげるよ・・・身を持ってね」
「・・・っ!?・・・こ、これは・・・!?」
その様子にしいなが意味深な言葉の後に歌い出すのだが、その歌を聞いてティアは途端に頭に手を当て体をフラフラとさせる・・・何故歌を聞いてそうなるのかと言うのはティアにはすぐに分かった。その歌は自分も戦闘の際によく使う、ユリアの譜歌と呼ばれる歌だったから。
‘ドサリ’
そしてティアはその歌に対してろくな抵抗も出来ずに地面に倒れこみ、眠り出す。自身を見下ろすしいなの、冷めきった視線になど気付けないままに。



‘パンッ’
「つっ・・・」
「起きたかい?」
「っ!・・・いきなり何をするのよしいな!譜歌なんて歌って、私を攻撃して・・・!」
「あんたが今やったことと同じことをしたから、ここにいるってのをあたしが教えてやっただけさ」
「えっ・・・?」
・・・その数秒後、格子越しに手が届く距離であった為に膝を屈めて手を伸ばして平手でティアの顔を叩いて起こしたしいな。
そんなしいなにすぐに立ち上がりながら敵に対するようなあらぶり方で抗議するティアだったが、同じことをやったと淡々と言われて戸惑い止まってしまう。
「ほら、忘れたのかい?あんたがファブレにわざわざ譜歌まで使って侵入した時さ」
「あっ、あれは・・・兄さんの真意を探る為には必要な事だったのよ!それに夫人にもその時の事は謝ったわ!」
「んじゃ、あんた今自分の体にダメージある?傷がついてるかどうかだけじゃなく、単に痛いかどうかも含めてね」
「えっ・・・い、言われたら頭が痛かったり、体を打ってるけど・・・」
「そう、それさ」
そこで出てきたファブレの襲撃についてに悪びれる事なく終わったことと叫ぶティアだが、体のダメージについて聞かれて途端に戸惑いながらも正直に答えていくと、しいなはその瞬間正解と指を突き付けてきた。









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