蒼き龍を選び、復讐者を拒絶せん

・・・それから数日、ガイは政宗に小十郎と顔を合わせる事なく牢の中で過ごした。一度食事を持ってきた小十郎と顔を一瞬見合わせたきり、以降は他の人間が食事を持ってきた為に。

しかし数日経って、ガイが食事を持ってきた人物に政宗と小十郎に会わせてほしいと嘆願してきた為に二人はガイを呼び寄せる事とした。






「・・・で、用はなんだ?」
そしてホド特有の和室ともいう部屋の中、あぐらをかいた政宗と正座でその後ろに控えている小十郎の前で正座の状態でガイは頭を下げる。
「・・・頼む、政宗。一度俺をここの皆と話をさせてくれ」
「Ah?・・・別に構わねぇが、なんで今更そんなことを?」
「・・・確かめたいことがあるんだ、頼む・・・」
「・・・どうしますか、政宗様?」
そこで出たガイからの懇願に少し意外そうに政宗は聞き返すが、大事な所は言わずに頭を深くする姿に小十郎が伺いを立てる。
「・・・いいだろう。ただしここでお前がガルディオスの生き残りであることを知っているのは、俺達を含めて限られた一部だけ・・・だから状況を混乱させないためにもお前が自分の事をガルディオスと言わずに俺達が立ち会いの元、一人一人と会話をしていくこと・・・それが呑めるんなら話をさせてやるよ」
「・・・すまない、政宗・・・」
政宗は振り向かず条件付きで了承すると言い、ガイは深く頭を下げたまま礼を言う。



「・・・よろしいのですか?」
「一種の賭けになるが、だからこそ俺達が抑止力にならなきゃならねぇ・・・言動が怪しくなったと思ったら即座に取り押さえにかかるぞ、いいな?」
「・・・ハッ」
・・・それでガイに少し用意の間待つようにと言い、通路に出た二人。
そこで小十郎が歩きながら本気かと確認を取ると、政宗が真剣でいて言葉に重さを伴わせて返す様子に同じように重く頷いた。












・・・そして政宗と小十郎は用意が出来たとガイを呼び出し、集落の中を歩き出す。
「あっ、政宗様に小十郎様!・・・と、そちらは?」
「・・・ちょいと訳ありの奴でな。すまねぇがこいつの質問に答えてやってくれ。出来るだけ疑問を挟まず素直にな」
「・・・はぁ・・・」
そこで近くにいた村人が嬉しそうに政宗達に話し掛けてきた後にガイに気付き不審げに目をやると、政宗からの注釈付きの要望を向けられ何とも言い難い声を上げる。
「・・・んじゃ言え」
「あ、あぁ・・・一つ、聞きたい・・・貴方は政宗とガルディオスについて、どう思っているんだ?」
「政宗・・・?」
「Stop。気にせず答えてやってくれ」
「・・・はい」
そして政宗からゴーサインが出るがガイの呼び捨てに反応して険悪な空気になりかけた村人をすぐに政宗は諌める。
「・・・政宗様は我々を救ってくださった方だ。そして今もこうして我々を守るためにあえて自らの存在を隠してくださっている。軍に行けば将官クラスは確実の実力を有していて、尚且つ貴族としての名誉も誉れ高い物となっていたはず・・・確かに我々はガルディオスの統治の元、ホドで暮らしてはいた。そこに忠義というか、恩義はなかった訳ではない。だが今となってはこの村に住む我々が主として見定めているのはガルディオスではなく、我々を今も守ってくださる政宗様だ」
「!?・・・じゃあ、もう・・・貴方には、ガルディオスに対する想いはないっていうのか・・・!?」
「はぁ?・・・言っただろう、我々を今も守ってくださる政宗様を主として見定めていると。そのようなことをしてくださるのは政宗様しかいないのだからな。むしろ今更ガルディオスの誰かが生きてて名乗り出てこられて、自分達の主になるなんて言われても困るだけだ・・・ホドが滅びて十数年、もういない筈の人間に現れられるのもそうだが忠誠心を持てなどというのはな」
「!!・・・っ・・・」
・・・ガイにとって想像だにしていなかった言葉が続けざまに投げ掛けられ、たまらず絶句した。政宗に人心が完全に行っていることもそうだが、それ以上にガルディオスに忠誠心はもうないとハッキリ告げられた事に。
気分を新たにして自分の気持ちを素直に答える男の言葉に、ガイは虚ろな目になり下の方向を向いてしまう。何かを映しているとはとても思えない目で。








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