足を踏み入れしは自らが作りし墓穴

「レプリカが人間でないというならば、お前は立派な人間らしいことはしているのか?」
「ハッ!テメェなんかと比べるまでもねぇよ!」
「そうですわ!レプリカなんかとアッシュを一緒にするのもおこがましいですわ!」
アッシュが元気になった瞬間、ナタリアまで元気にルークに反論してくる。その勢いを見たルークは質問の矛先を意図的に変える。
「なら俺に対して度々襲撃の手を加えて来たのはなんだ?わざわざカイツール軍港まで襲撃するようにしてまで俺に恨みを持って来るとは、人間じゃない者に行う行動でもないだろう」
「ハッ!テメェなんざに何したって構うか!」
「・・・いかなる手段を持ってしてもお前は俺に対する恨みを晴らす為だけに今まで行動を起こしてきた、そういう事か?」
「屑にしてはよく理解出来たじゃねぇか!その通りだ!」
ああ、馬鹿だ。C.C.がそう思ったと同時に、左側に配置されていた兵士達のほとんどが両膝をつきだした。いきなりの兵士達の異様な光景に、悪態をついていたアッシュも何事かと口を止める。その場にいた全員が兵士達の行動に注目していると、やがて兵士達から声が聞こえてきた。
「俺達の家族はこんな奴に殺されたのか・・・?」
「あなたぁ!あなたぁぁぁー!!」
「あいつが死んだのはこいつのせい・・・クソッ、クソォォォッ・・・!」
兵士達から聞こえる声は全て悲痛過ぎる悲しみの声、だがジェイド以外の面々はこの声が何事なのかと理解出来ずにいた。
悲しみにくれる兵士達を横目に、ルークは衝撃的な事実をアッシュに告げる。



「今この泣いている兵士達・・・実態はアッシュ。お前が指示を出した軍港襲撃の際に命を無くしたキムラスカ兵士の遺族や親友達が兵士に扮装していたものだ」



「「「「!!?」」」」
いきなり告げられた事実に皆が言葉を無くして驚く、すると兵士に扮していた一人がルークに近寄っていく。
「・・・本当に残念でした。オリジナルルーク様がこんな人物だったなんて・・・」
「ということは俺についてくれるんだな?」
「はい。皆同じ心積もりでもあると思いますし、なによりオリジナルルーク様に私は仕えたくありませんので・・・」
「・・・おい、ルーク!どういうことなんだ!?」
事情を把握しきれていない一同に、ガイが代表となって疑問をぶつける。
「賭けをしたんだよ。オリジナルとレプリカのどちらに仕えたいかとな。ルールは簡単・・・カイツール軍港襲撃の事をぶちまけてオリジナルが自らの意志で襲わせたというならオリジナルの負けで、何らかの事情があって泣く泣くやったと納得したら俺の負け・・・とな」
「ルーク様はおっしゃられました。レプリカとしての自分が駄目だと判断されたなら即刻首を跳ねられてもよろしいと・・・ですがあまりにも酷すぎる!」
今まで抑えていたのだろう、憤りを。代表者であろう人物の声は一気に荒くなった。
「あなたはなんだ!あなたは自らの復讐の為に我々の家族を殺し、揚げ句の果てにはさもそれが当然と言い放った!あなたがルーク様だと思いたくもない!レプリカだとかそんなのは関係ない!自分達に意見を求めてくれるこちらのルーク様が私達はいい!」
「・・・っ!!」
涙混じりの代表者の声は紛れも無い本心を表している。言葉以上の怒りと哀しみを浴びたアッシュはもはや何も言えず、ただ民に見放されたという事実に顔を下に向けるしか出来なくなった。
「お待ちになって!アッシュは居場所を奪われていたんです!そのことを思って彼を許してくれませんか!?あのルークはレプリカ、人間ですらありませんのよ!」
まだ雰囲気を理解せずに発言をする、アッシュを手放したくないという気持ちとアッシュを凹ませたという敵意の気持ちで発言をする。だが本人は気付いていない、最悪以下の発言をしてしまったことに。
「・・・ふざけるな」
「え?」
「俺の家族が殺されたのはついでみたいな言い方だったんだぞ!わかるか!?ついでで家族が殺される気持ちを!!」
「あ・・・わ、私はそのようなつもりで言ったのでは・・・」
ナタリアはあまりの迫力に既に敬意を払われていないことに気付いていない。
「それにさっきも言ったじゃない!私達の意見を聞いてくれるルーク様がいいって!あんたの言ってる事は我慢しろとか言って、ただアッシュのやったことをレプリカじゃないからなかったことにしようって押し付けるだけじゃない!」
「あ・・・う・・・」



「結局自分の大事な物は俺達なんかじゃなく、そこのオリジナルだろ?ナタリア王女」



とどめの一言はナタリアの急所を確実にえぐる、愛してやまなかった民からの言葉はなによりの刺となり、ただ茫然自失と立ち尽くすのみとなった。








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