蒼き龍を選び、復讐者を拒絶せん

「・・・ファブレに入り込んでから俺は復讐を果たすための絶好の機会を待った・・・その中で俺はルークと出会ったんだが、そのルークが一度拐われて記憶を失って戻ってきてから俺は復讐をするべきかどうかを迷うようになったんだ・・・」
「・・・何でだ?」
「確かに俺は復讐の為にファブレに入り込んだ・・・だが記憶がまっさらなルークは貴族としての記憶のない、ただの子供だった。始めは俺はそれを当然の報いだと思い、あいつの世話をしていた・・・だがそんな子供として貴族らしくない姿を見ていく内に、ルークまで巻き込んで復讐をするべきかどうかと思うようになっていった・・・」
「・・・だから今までお前は行動を起こさなかったとでも言うのか?」
「あぁ、そうだ・・・正直俺は今もどうしていいか分からない。なのに今ここでルーク達に正体を知られるなんて事になったら、俺は・・・」
「それを俺達が許す、とでも思ってんのか?テメェ・・・!」
「っ!?」
そこからガイの昔語りとルークについての想いを話して何も言わないようにしてほしいと言いかけるが、政宗が苛立ちに震えた声と目で返してきた事に驚愕して制止する。
「ガイ、お前の言い方からすればrevengeをするかどうか見極めるためにルークに何も言わないようにするばかりか、元の場所に自分を戻せってんだろう?・・・それはつまり、結果次第じゃルークを始めとしたファブレを滅ぼす可能性があると言ってるようなもんだ。なのにそれを全く考えてねぇ・・・そんな奴をみすみす見逃すわけねぇだろうが・・・!」
「っ!!・・・あ・・・あぁっ・・・!!」
・・・ここまで来てようやくガイは、政宗達がガイを見逃すつもりが一片もないどころか自分がアクゼリュスの事を忘れてまだ復讐を選ぶ可能性がある事をしようとしていたことに気付いた。
政宗の言葉にガイは膝から崩れ落ち、あらぬ声を上げて両手で頭を抱えた。どうあがいても復讐を達成すれば被害を被る可能性が高いのは自分ではなく、マルクトもだがホドの住民で他ならぬ自分が引き金になる・・・そう理解して、そんなことは出来ないと思ったために。
「・・・ようやく理解出来たようだな。お前が何をしようとしてたのかってのは。だがだからこそ見過ごすことは出来ねぇ・・・小十郎、今度こそそいつを連れて檻の中にでも入れて食事でも出しておけ。俺は戻って風魔に手紙を書いて渡す」
「ハッ、分かりました」
政宗はその姿に背を向けつつ小十郎に指示を出してから場を後にしていき、小十郎は了承をした後ガイの両脇を抱えて引きずるように連れていく。全く抵抗もしないガイの重さなど気にすることもなく・・・









・・・そして引き連れられたガイは石で作られた檻の中に入れられた。
「ちょいと待ってな、飯を作ってきてやる」
「・・・待ってくれ、小十郎・・・」
「何だ?」
「・・・昔と変わったな、お前・・・政宗もそうだが、俺にも敬語を使っていたのに・・・」
それで入口に鍵をかけ小十郎は場を離れようとするが、ガイが何とか意識を戻して昔と違うと寂しそうに漏らす。
「・・・なら聞くが、今のテメェは自分が敬うに値するような人間だとでも思ってんのか?」
「っ・・・それを言われると、キツいな・・・」
しかし小十郎の優しさなど全くない鋭い視線と言葉に、ガイは痛いところを突かれたとばかりに下を向いて力なく笑う。
「それにだ・・・テメェは昔と俺が変わったと言ったが、俺はそこまで変わっちゃいねぇ。単にテメェの方が変わったんだよ」
「俺が・・・?」
ただ続けられた言葉にガイはそうなのかと首を傾げる。自分は変わっていないとばかりに。










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