蒼き龍を選び、復讐者を拒絶せん

・・・ND2002。この年、オールドラントの歴史の中でも類を見ない程の被害を出したホド戦争が行われた。と言っても戦争によって失われた人命が過去最多、という意味ではない。人命もそうだが・・・ホドという大陸に近隣の諸島も含めて、丸ごと消滅したのだ。

この戦争は争いの元でもあり、主戦場となっていたホドが丸ごと無くなった事により両軍は戦争を止めた。目的のない戦争などしても意味がないために。

・・・そして時が流れていくにつれ、ホドにいた人々は限られた一部の運がよく助かった者以外は全て死んだものという認識になっていった。だが・・・事実はそうではなかった。



「しっかりしろ、お前ら!死にたくねぇなら俺についてこい!」



・・・ホドが消滅する時、閉じた右目から血を流しながらも走りつつ後ろを向きながら叱咤激励の声を上げる少年がいた・・・必死に皆と生きるために、自身もあがきながら・・・





















・・・そして16年の時が経った。



「・・・よろしいですか、陛下?」
「・・・佐助か、どうした?」
・・・マルクトの首都、グランコクマの皇帝の私室の中。
そこで皇帝のピオニーは自分のペットであるブウサギを撫でていたが、背後から唐突にかかってきた声に驚く様子もなく振り返る。そこには片膝をついて頭を下げている佐助の姿があった。
「まずは通常報告ですが、予想通り神託の盾による強襲がタルタロスにかけられました。そしてタルタロスを囮と知らなかった神託の盾は疑いもせずそのまま乗り込んだ様子を見て、タルタロスごと爆破させました。ですが流石に全員とはいかず、生き残った神託の盾が少数いて六神将もアッシュにリグレットの二人いるとの事です」
「・・・リグレットはアッシュのお目付け役として暴走を避けるために共に最後尾にいた、という辺りか。そしてその近くにいた神託の盾は致命的な被害を受けず、何とか生き残ったと言った所か」
「はい、そのようです。本来でしたらアッシュも共にいなくなるのが望ましい所だったとは思いますが・・・」
「いや、いい。生きているなら生きているででやりようはある。とりあえずアッシュについてはしばらくそのままでいい」
「はっ」
そのまま通常報告と銘打って佐助とピオニーは会話を交わすのだが、明らかに不穏な空気を醸す中身を平然と交わしていた。
「それで、通常報告と言ったからにはまだ何か報告があるんだろう?」
「・・・ジェイドの旦那からの話では、ガルディオスの生き残りかもしれない存在に出会したそうです」
「何・・・どういうことだ?」
続けてピオニーはその言葉の不自然さについて問うのだが、ガルディオスの生き残りと口調を崩して告げた佐助に不可解そうに眉を寄せる。
「先の報告でルークがエンゲーブにまで来たことは陛下も知っているでしょうが、その迎えに来たファブレの使用人に不審な点がいくつかあったとのこと・・・マルクトの地理についてやけに詳しかったこと、ガルディオスの人間の容姿に当てはまること、そして・・・ガイ=セシルという名前です」
「ガイ=セシル・・・成程。覚えている奴は少ないがガイラルディアという名の子供がガルディオスにいたことや、ガルディオスに嫁いだユージェニー=セシルの名字・・・偶然として片付ける事も出来ないわけではないが、ジェイドが気にするのも分かる気はするな」
「はい、その為にうちの殿に動いてもらいたいとの事です。現にかすがにも旦那が殿の方に動けるようにしてほしいと伝言を直にするよう頼んだそうです」
「・・・分かった。かすがならもう政宗の所に着いている頃だろう。正式に許可を出すから、政宗に動くように言ってくれ・・・ガイとやらがガルディオスか否か、それを確かめるようにな。後、確認の為の手筈はお前達に任せるが・・・事実だった場合に加え、良からぬ企みをしていたならこちらに身柄を送ってくれ。いいな」
「はっ、そう殿にはお伝えします」
そこからガイという人物についてを不審に思った理由を話してから判断を乞う佐助に、ピオニーは指示を出し頭を下げる佐助の姿を認める。








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