足を踏み入れしは自らが作りし墓穴

イオンの言葉を遮ってルークの言葉が辺りに響き渡る。しんと静まり返った場に、今度はC.C.の声が響く。
「ルークに与えたギアスの能力は『絶対遵守』、ルークの命にはギアスにかかった者は絶対に逆らえん。つまりモースにはルーク以外の言葉など聞く余地など始めからない。弁解の余地などないんだ」
「そんな・・・だったら話を出来るように・・・」
「ならばこの場でばらすか?お前の真実を。例えお前がモースと対話してもその真実を引き合いに出されたらお前の言うことは全て否定される。そうすればお前は導師イオンという身分にすらいれなくなる・・・つまり与えられた役割すらも果たせないぞ?」
「・・・っ!」
二人に続き、今度はイオンが顔を青くして息を詰まらせる。その言葉にナタリアとガイは意味が分からないと首を傾げ、ジェイドは心当たりがあるため目を細めるだけですませる。
「イオン、お前の発言はこの場では何の意味もない。場を乱さないように自重していろ」
「・・・」
イオンは下を向いて何も言えないが、ルークはその沈黙を肯定と受け取り残りの面々に向かい合う。
「・・・あなたの目的はなんなのですか?」
続いての相手はジェイド、話を理解出来るかどうかは別にしてもマルクトに繋ぐにはこの男の存在は必要だ。
「預言を覆し、ダアトの存在意義を壊す・・・というのがC.C.の目的だ。俺はギアスを提供してきたこいつに見返りとして協力している」
「・・・ではあなたの目的は?」
「ヴァン・グランツへの意趣返しだ。もっとも預言の覆しを考えているのは奴も一緒だがな。だが奴はレプリカを道具としてしか見ていない。だから俺はそれが気に食わずに奴とは別の方法を取っている・・・レプリカによって全ての人間にヴァンは災厄をもたらそうとしている。レプリカ技術開発の大元がそれを止めなくてどうする?ジェイド・バルフォア」
「・・・やはり知っていたんですね」
「おいおい、一体どういう事なんだ?」
とんとん拍子で進みつつあった流れを止めて、自称親友兼使用人のガイの声が響く。チッと内心舌打ちをしながらC.C.がガイに説明をする。
「今言った通りだ。死霊使いはレプリカ技術の大元の理論を作った科学者・・・つまりヴァンの計画になくてはならないレプリカの存在を作り出すきっかけとなった張本人だ」
「・・・返す言葉もありません。全くその通りなのですから」
ジェイドには抵抗の兆しは見えない、自らの罪が未来を左右する出来事を作っているきっかけになっているのだからそれを突き付けられれば当然だろう。
「死霊使いの事はもういいか?もう聞く事がないなら私が話す・・・ユリアは本来死に行く人々をどうにか救おうとして預言を残した。だが時が経つにつれて人々は預言の存在意義を人類の繁栄の為にユリアは残したのだとしか人は考えなくなった。そしてそのもっともたる存在がダアト・・・預言の盲信者達の地だ。だからこそ私とルークは考えた。預言を覆すとともにダアトの存在意義を打ち消そうと」
「だからといって何故キムラスカにこのようなことをするのですか!話し合いで解決すればよろしいことでしょう!」
ナタリアの怒声が響き渡る、だが謁見の間にいる人間でその言葉に頷いているのはアッシュとガイの二人だけだ。
「・・・とことん場の空気を読めない奴だ。創世歴から私がこれまでダアトと話し合いをしなかったとでも思うか?話を聞く奴などいるはずもなかった。預言に従わない事は繁栄にではなく、破滅に向かう道でしかないと皆が皆口を揃えて言ってきた。そしてダアトだけではなく一般市民にいたるまで預言に従う事が楽だと私の言葉を聞きすらしなかった・・・わかるか?話し合いという意志の疎通にすら応じてはくれんものの気持ちが」
そう言われ、ナタリアは気まずそうに押し黙る。彼女は王女という身分の上で暮らしてきた。発言は大低というより、国内で聞かないものはいない身分だ。C.C.のように辛酸を舐めてきてはいない彼女がそんな気持ちを理解出来るはずもない。
「騙されるな、ナタリア!所詮そいつらは人間じゃねぇ!そんな屑の言う事なんざ聞く必要もねぇ!」
・・・だがまたもや場の空気を読まない発言が聞こえてきた。ようやく鳩尾への傷みの苦しみが消えたのだろう、やけに元気になったアッシュの怒声が響く。その言葉にナタリアは顔を明るくしかけたが、やはりこいつは黙らせないといけないとルークは側にいる兵士達をみやり、アッシュを見据えた。









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