変動は静かに広まっている
・・・そんな風にモースがインゴベルトに責められる時間を多少遡った上で、ミレーユ達の方へと場は移る。
(なんなのかしら、一体この人は・・・?)
・・・バチカルからタタル渓谷に飛んでから辻馬車に乗って移動する中、ティアは対面に座るルークの隣のミレーユに対する一種の不安を抱いていた。
・・・タタル渓谷から辻馬車に乗って今に至るまで、短い時間ではあったがティアがミレーユと接して感じた印象は苦手という物だった。
一緒にいるルークに対して抱いた印象は単純に世間知らずのお坊ちゃんと自分の方が上とオマケ付きで感じたのだが、ミレーユの年齢以上の落ち着きに加えて王女という立場にいるのに明らかに旅慣れている事に加えて、腕が立つ事実に強く出ることが出来なかった。
これはティアが王族に貴族=世間知らずという図式をあっさりと打ち砕かれたからだ。もしミレーユが世間知らずな態度を取っていたならティアは兵としての経験に物を言わせ、行動の主導権を取ろうとしていただろう。だが主導権を取れないばかりか、むしろ先駆者としての経験を持ってタタル渓谷からルークと共に出ようとする姿に一種の敗北感を抱いた。兵士としても人としても未熟なのだと、予想しない形で見も知りもしない場所に飛ばされたのに自身よりも冷静な姿を見て。
だがそれでも自分が兵として負けるわけにはいかないと対抗心を抱いて先行して進んだのだが、そこで後で分かるのだがティアは間違いを犯した・・・たまたまタタル渓谷に来ていた辻馬車が首都に行くと聞いてこれに乗ればバチカルに戻れると後から来た二人に言ったのだが、馬車に乗ってしばらくした後に発覚したのだ。その馬車がキムラスカのバチカルではなく、マルクトの首都であるグランコクマに向かう馬車であったと。
・・・その時ティアは内心、顔から火が出るほど恥ずかしかった。自分がミレーユに負けまいと息巻いた結果、自滅してしまったことに。この時ルークがその事に対して不満を漏らした声にミレーユも乗っていたなら、半ば逆ギレのような形で押し黙らせようとしただろう。だがミレーユはティアを責めるような視線も声も向けることはないばかりか、失敗はあることだと嫌味もなく笑顔を向けて言ってきたのだ。この時気遣ってくれたことに感謝をするより先に、ティアはミレーユに対して苦手意識を抱いた。
(いい人・・・ではあるのは分かるのだけれど、教官や兄さんだったらたしなめだったり叱るような言葉が出てきたはず・・・正直分からないわ、この人の考えていることが・・・)
時間にしてつい先程の事を思い出し、ティアは苦手との気持ちを改めて感じる。
・・・別にティアのみに限ったことではないが、知能ある者は自分の経験に基づき行動や思考をして判断をくだす。そんなティアの経験からしてみればミレーユはどこか得体の知れない人間であった。
だがそれは裏を返して見れば、単純にティアが裏のない人間と接する事がなかっただけだ。ヴァンにティアの教官であるリグレットに生まれ育った街の住民達・・・言ってみれば誰もがどこかに秘密を隠し持っていたメンツの中で暮らしてきて、ティア自身も人に言えない秘密を抱えて行動している・・・そんなティアからしてみたら、裏のないミレーユの優しさというものは違和感しかなかった。ティア自身には人をうまく騙せる能力は無くても、何となく程度には裏があると感じれるくらいには感応能力はあったために。
・・・まぁそんなものだからむしろ裏がある人間の方がティアからすれば割り切りやすく付き合いやすいのだが、実際の所あらゆる意味で経験の少なさがあって相手に振り回される事が多いのでハッキリと意味の薄い物だった。ティアの得意とする人物との相性など。
・・・ミレーユが加わったことにより、本来の物語とは大きく異なる各々の関係・・・それがいかな影響を及ぼすか、それは預言すらも予測出来ない・・・
END
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(なんなのかしら、一体この人は・・・?)
・・・バチカルからタタル渓谷に飛んでから辻馬車に乗って移動する中、ティアは対面に座るルークの隣のミレーユに対する一種の不安を抱いていた。
・・・タタル渓谷から辻馬車に乗って今に至るまで、短い時間ではあったがティアがミレーユと接して感じた印象は苦手という物だった。
一緒にいるルークに対して抱いた印象は単純に世間知らずのお坊ちゃんと自分の方が上とオマケ付きで感じたのだが、ミレーユの年齢以上の落ち着きに加えて王女という立場にいるのに明らかに旅慣れている事に加えて、腕が立つ事実に強く出ることが出来なかった。
これはティアが王族に貴族=世間知らずという図式をあっさりと打ち砕かれたからだ。もしミレーユが世間知らずな態度を取っていたならティアは兵としての経験に物を言わせ、行動の主導権を取ろうとしていただろう。だが主導権を取れないばかりか、むしろ先駆者としての経験を持ってタタル渓谷からルークと共に出ようとする姿に一種の敗北感を抱いた。兵士としても人としても未熟なのだと、予想しない形で見も知りもしない場所に飛ばされたのに自身よりも冷静な姿を見て。
だがそれでも自分が兵として負けるわけにはいかないと対抗心を抱いて先行して進んだのだが、そこで後で分かるのだがティアは間違いを犯した・・・たまたまタタル渓谷に来ていた辻馬車が首都に行くと聞いてこれに乗ればバチカルに戻れると後から来た二人に言ったのだが、馬車に乗ってしばらくした後に発覚したのだ。その馬車がキムラスカのバチカルではなく、マルクトの首都であるグランコクマに向かう馬車であったと。
・・・その時ティアは内心、顔から火が出るほど恥ずかしかった。自分がミレーユに負けまいと息巻いた結果、自滅してしまったことに。この時ルークがその事に対して不満を漏らした声にミレーユも乗っていたなら、半ば逆ギレのような形で押し黙らせようとしただろう。だがミレーユはティアを責めるような視線も声も向けることはないばかりか、失敗はあることだと嫌味もなく笑顔を向けて言ってきたのだ。この時気遣ってくれたことに感謝をするより先に、ティアはミレーユに対して苦手意識を抱いた。
(いい人・・・ではあるのは分かるのだけれど、教官や兄さんだったらたしなめだったり叱るような言葉が出てきたはず・・・正直分からないわ、この人の考えていることが・・・)
時間にしてつい先程の事を思い出し、ティアは苦手との気持ちを改めて感じる。
・・・別にティアのみに限ったことではないが、知能ある者は自分の経験に基づき行動や思考をして判断をくだす。そんなティアの経験からしてみればミレーユはどこか得体の知れない人間であった。
だがそれは裏を返して見れば、単純にティアが裏のない人間と接する事がなかっただけだ。ヴァンにティアの教官であるリグレットに生まれ育った街の住民達・・・言ってみれば誰もがどこかに秘密を隠し持っていたメンツの中で暮らしてきて、ティア自身も人に言えない秘密を抱えて行動している・・・そんなティアからしてみたら、裏のないミレーユの優しさというものは違和感しかなかった。ティア自身には人をうまく騙せる能力は無くても、何となく程度には裏があると感じれるくらいには感応能力はあったために。
・・・まぁそんなものだからむしろ裏がある人間の方がティアからすれば割り切りやすく付き合いやすいのだが、実際の所あらゆる意味で経験の少なさがあって相手に振り回される事が多いのでハッキリと意味の薄い物だった。ティアの得意とする人物との相性など。
・・・ミレーユが加わったことにより、本来の物語とは大きく異なる各々の関係・・・それがいかな影響を及ぼすか、それは預言すらも予測出来ない・・・
END
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