比較は似た立場ほど明確に差が現れる
・・・そしてミレーユは城を出、すぐ近くにあるファブレ邸へと入る。入口の兵士は顔を見せただけですぐに通してくれた為、特に止まることもなく。
「・・・ナタリア」
「っ・・・お義姉さま・・・!」
「ルークの記憶は戻ったの?」
「いえ・・・それは、まだ・・・」
そして屋敷の中庭に来たミレーユは年齢的に自身の義妹にあたるナタリアの後ろ姿を見つけ話し掛けるが、ルークと対峙していたナタリアは振り向いてすぐに驚いてシュンとしたように首を横に振る・・・その後ろでルークが両手を合わせ、ミレーユに感謝と笑顔を作り頭を下げていた。
「まだなら戻りましょう。あまりルークに負担を強いるのはよくないわ」
「それは・・・いえ、分かりました・・・ではルーク、私はこれで失礼しますわ」
「おぉ」
少し苦笑いになりかけながらもミレーユが優しくナタリアに話しかければ何かを言いたげになりながらもルークに振り返ってから頭を下げ、ルークの声を受けて場を後にしていく。
「・・・助かった、ミレーユ姉。つーか公務中に来てもらって悪かった」
「いいのよ、ちょうど仕事も一段落ついたしね」
そしてナタリアがいなくなったのを見てすぐにルークはミレーユに礼を言うが、気にする必要はないとばかりに穏やかに返す。
・・・ナタリアは養子となったミレーユと違ってインゴベルトの実子であるが、ミレーユの方が年上と言うことで王位継承権の上ではナタリアの方が上でも妹という立場にある。
そんなナタリアと初めて対峙してから義理のとは言え姉妹としての関係になったミレーユだが、その関係性はかつての弟であったテリーと比べると微妙な物である。そうなった理由として挙げられるのは出が違うとは言え、ミレーユとナタリアの性格や行動の在り方が大分違うことにあった。
・・・まずミレーユは見た目の年齢に似合わない程の落ち着きに元々からの性格として、物腰穏やかに事を進める事を好む。更に言うなら王族としての生活などに入ると思っていなかった為、一層腰を低くして事に挑むようになっていた。迂闊な事をしないためにと・・・そういった王族らしくなく低姿勢で真面目で、ミレーユの単に綺麗な女性にはないどこかミステリアスな魅力もあったことで、キムラスカの中での評判はむしろ悪く言う者がいるのかという程人気に満ち充ちていた。貴族の間でも、民の間でもだ。
対してナタリアだが、王族としての意識も高く積極的に公務にも取り掛かり民の福祉政策などを施工してくれることから、民の間での受けはいい・・・ただそれは、民の間でだ。確かに公務などに関しては積極的に取り組みはするのだが、その過程の上でその積極性が故に結論を急ぎすぎる癖があった。自分が正と思ったのだからそれでいいだろうと、そう進めようとする癖が・・・本人に悪気がないことは周りも承知しているが、悪意なく強引に事を進めようとするやり口に辟易とする声が密かに出るのもある意味で当然と言えた。
ただそれでも民の間にそう言った話は聞かせないようにといった配慮はされていたが、当人にそう言った苦労をかけたという自覚がないことが貴族の間で一層拍車をかけていた・・・ミレーユとナタリアの、どちらが接しやすいかとの比較に。
ミレーユ自身、そういったような評価が自分やナタリアにあることは少なからず知っている。そんな評価で自身がナタリアに対しての態度を変えないことも知ってはいるが、それでも当人同士の相性が悪いという事実はいかんともし難かった。ただここで両者共に嫌いあっているのかと言えばそうではない・・・ミレーユは行動の結果はどうあれナタリアが悪人であるとは思っていないし、ナタリアからしても義姉さまと呼ぶくらいには敬意を持ってはいる。ナタリアの性格を考えればミレーユを義姉と認識したくないというのであればハッキリと言葉にするだろうから、そのくらいにはミレーユは嫌われてはいないのだ。
・・・だがそれでも両者の間にある相性の差は埋めきれない物であるのは事実なのだが、更に二人の仲を微妙な物とする要素がある。それがルークという存在だ。
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「・・・ナタリア」
「っ・・・お義姉さま・・・!」
「ルークの記憶は戻ったの?」
「いえ・・・それは、まだ・・・」
そして屋敷の中庭に来たミレーユは年齢的に自身の義妹にあたるナタリアの後ろ姿を見つけ話し掛けるが、ルークと対峙していたナタリアは振り向いてすぐに驚いてシュンとしたように首を横に振る・・・その後ろでルークが両手を合わせ、ミレーユに感謝と笑顔を作り頭を下げていた。
「まだなら戻りましょう。あまりルークに負担を強いるのはよくないわ」
「それは・・・いえ、分かりました・・・ではルーク、私はこれで失礼しますわ」
「おぉ」
少し苦笑いになりかけながらもミレーユが優しくナタリアに話しかければ何かを言いたげになりながらもルークに振り返ってから頭を下げ、ルークの声を受けて場を後にしていく。
「・・・助かった、ミレーユ姉。つーか公務中に来てもらって悪かった」
「いいのよ、ちょうど仕事も一段落ついたしね」
そしてナタリアがいなくなったのを見てすぐにルークはミレーユに礼を言うが、気にする必要はないとばかりに穏やかに返す。
・・・ナタリアは養子となったミレーユと違ってインゴベルトの実子であるが、ミレーユの方が年上と言うことで王位継承権の上ではナタリアの方が上でも妹という立場にある。
そんなナタリアと初めて対峙してから義理のとは言え姉妹としての関係になったミレーユだが、その関係性はかつての弟であったテリーと比べると微妙な物である。そうなった理由として挙げられるのは出が違うとは言え、ミレーユとナタリアの性格や行動の在り方が大分違うことにあった。
・・・まずミレーユは見た目の年齢に似合わない程の落ち着きに元々からの性格として、物腰穏やかに事を進める事を好む。更に言うなら王族としての生活などに入ると思っていなかった為、一層腰を低くして事に挑むようになっていた。迂闊な事をしないためにと・・・そういった王族らしくなく低姿勢で真面目で、ミレーユの単に綺麗な女性にはないどこかミステリアスな魅力もあったことで、キムラスカの中での評判はむしろ悪く言う者がいるのかという程人気に満ち充ちていた。貴族の間でも、民の間でもだ。
対してナタリアだが、王族としての意識も高く積極的に公務にも取り掛かり民の福祉政策などを施工してくれることから、民の間での受けはいい・・・ただそれは、民の間でだ。確かに公務などに関しては積極的に取り組みはするのだが、その過程の上でその積極性が故に結論を急ぎすぎる癖があった。自分が正と思ったのだからそれでいいだろうと、そう進めようとする癖が・・・本人に悪気がないことは周りも承知しているが、悪意なく強引に事を進めようとするやり口に辟易とする声が密かに出るのもある意味で当然と言えた。
ただそれでも民の間にそう言った話は聞かせないようにといった配慮はされていたが、当人にそう言った苦労をかけたという自覚がないことが貴族の間で一層拍車をかけていた・・・ミレーユとナタリアの、どちらが接しやすいかとの比較に。
ミレーユ自身、そういったような評価が自分やナタリアにあることは少なからず知っている。そんな評価で自身がナタリアに対しての態度を変えないことも知ってはいるが、それでも当人同士の相性が悪いという事実はいかんともし難かった。ただここで両者共に嫌いあっているのかと言えばそうではない・・・ミレーユは行動の結果はどうあれナタリアが悪人であるとは思っていないし、ナタリアからしても義姉さまと呼ぶくらいには敬意を持ってはいる。ナタリアの性格を考えればミレーユを義姉と認識したくないというのであればハッキリと言葉にするだろうから、そのくらいにはミレーユは嫌われてはいないのだ。
・・・だがそれでも両者の間にある相性の差は埋めきれない物であるのは事実なのだが、更に二人の仲を微妙な物とする要素がある。それがルークという存在だ。
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