足を踏み入れしは自らが作りし墓穴

「罪を精算するというのはダアトがルークとC.C.のやろうとしていることに邪魔だからで、ダアトに全ての罪を被ってもらおうとしているのではないかと私は考えています」
「そんな・・・ルークがそんな事を・・・」
「でなければあそこまでキムラスカの兵士にダアトの人間が嫌われるなんて事はありません。恐らくはアクゼリュス崩壊の原因はダアトで、マルクトと争うのはダアトの思惑通りになるとでもキムラスカ全土に伝えたのでしょう」
「そんな・・・」
呆然と青くなるイオンの顔を見て、対照的にジェイドは更に思考を深める。
(何か・・・何かが足りない・・・)
足りない、というよりは理解していない。ルーク達の事を。仮説は大まかには筋は通ってはいるが、二人の本質を知る事すら出来ていない。みてくれのルーク達の姿すらまともに見ていなかった死霊使いに、今更ながらに甘さを感じ取る。
「・・・ですがこれを確かめるのはルークに会うしかありません。アッシュ、ヴァン謡将の目的を探るのは後回しにして、バチカルにいるルークに会いに行きましょう。いいですね」
「・・・ああ」
だからこそ死霊使いは失敗を犯した、墓穴に自ら入り込む愚を。知ろうとしなかった罪を自覚せずにジェイドは他の面々を促す。それにアッシュを始めとする面々は一も二もなく頷いた。





それから数日後のバチカル、彼らはバチカルの地を再び船から降りて踏み締めていた。
「どうですか?アッシュ。バチカルに戻って来た感想は」
「ここから見える風景は変わらないな・・・だが今王宮にはあのレプリカ野郎が存在していやがる。俺は今すぐあいつを蹴散らしてこの国を変える・・・あんな劣化レプリカじゃなく、この俺がな」
「アッシュ・・・」
オリジナルは紛れも無く彼、レプリカとしてのルークを全く必要としていないナタリアの態度にイオンは若干顔を誰にも気付かせずに歪めながら声を出す。
「・・・早く行きましょう」
蚊の鳴くような小さな声ではあるが、近くにいたアニスは聞こえていたようで、「早く行きましょうよぉ」とアニスが皆に声をかける。その言葉に全員がイオンの顔色に気付く事なく「そうですね」というジェイドの言葉でバチカルの上の階層に繋がる昇降機へと向かっていった。








「申し上げます!下の階層の兵士からナタリア王女と、導師イオンを含む一行がバチカルに到着したと連絡が入りました!」
客室の中の一室、ルーク達が王宮での寝泊まりに使っている部屋に兵士が報告の声と共に入室してきた。
「そうか、なら手筈通りに用意をしておけ。私もすぐに謁見の間に向かう」
「はっ!」
生まれながらに王者と言わんばかりに命令を下すルーク、命に従う兵士は何も戸惑う事なくルークに敬礼を返して部屋を出ていく。
「立派なものだな、ルーク」
そこにベッドに寝転がりながらピザを食べ終わったC.C.が立ち上がり、椅子に座っていたルークに近寄る。
「茶化すな、C.C.」
「私は茶化す目的で言っていない・・・私が選んだだけの事はあるという意味で言っているんだ」
C.C.は惚気にも自分の審美眼に間違いはなかったともどっちとも取れる発言をするが、ルークは至って自信に満ちた笑みをC.C.に向ける。
「当たり前だ、俺はお前の期待は裏切った事はないだろう?」
「・・・ふっ・・・くくっ、そうだな」
何を今更、とC.C.は自嘲の笑いを浮かべる。するとルークは椅子から立ち上がり、彼女の腰に手を添えると自らへと引き寄せた。



「もう俺とお前は運命共同体だ。お前が信じる信じない限らずな。今更俺を信じられんと言ってもお前を離す気は俺にはない。だから不安ならただ俺を信じていればいい」



間近に迫ったルークから言われた言葉にキョトンとしたC.C.、しかし少しすると彼女はいつもの彼女らしさを取り戻し、笑顔ながらに返す。
「安心しろ、私はお前から離れる気はない。私もお前を離す気はないさ」
ルークはどうかは知らないが、依存に近い域にまでルークを求めている自分がいる。C.C.は自分が必要とどのような形であれルークが言ってくれたことに内心では喜んでいた。



「そうか、なら行くぞ。あいつらには大分業を煮やした。預言を覆すついでだ。礼として更なる絶望を見せてやる」
「ああ、行くか」
預言を覆す前にあの無知蒙昧の輩達は屈服させておきたい・・・その考えを持った二人は謁見の間へと向かうべく部屋を後にして行った。









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