死の恐怖、再来

(くそ・・・こいつら、なんでルークの事を見る事が出来ねぇんだよ・・・)
最前列を歩いているハセヲは一行の中心にいる辛そうな顔のルークをちらっと見た後、のうのうと周りを歩いている三人に対する怒りが込み上げてきていた。




事の発端はタルタロス脱出後の平原での神託の盾兵との戦いの時だった。ルークはあの時明らかに人を殺す事に抵抗を見せていた。その隙を突かれルークは攻撃されたが、ハセヲがルークへの攻撃を受け止めたがために大事には到らなかったが、このまま無理をさせても心に響くだけ。ハセヲはそう思っていた。

そのあと、ルークの心を落ち着かせるために野営したのだがそこからが問題だった。夜が明けた時、ジェイド達はルークに戦わなくてもいいといった。そのこと自体にはハセヲも賛成だった。しかしやり方が拙い。本人に全く意志を確認せずにもう戦わなくてもいいと告げるだけで、そのような言い方ははっきり言えば見捨てられたに等しい宣告を浴びせるようなものだ。『お前は役に立たないから引っ込んでろ』・・・実際ルークにはそう聞こえたのではないかとハセヲは思った。

そんな言われ方をされればルークに限らず大低の人は存在意義に疑問を持つだろう。そして思うはずだ。『見捨てられたくない』と。認められたいと願う生き物なのだ、人間は。

それらを踏まえた上でのルークの行動は自分も戦うというあからさまな無理がみてとれる宣言だった。

ここでジェイド達は普通は戦わなくていいといったのだからこれも言い出した時点で止めるべきなのだが、逆にルークに覚悟を求めてきた。





(あれ以上あいつらに喋らせていたらルークは今頃戦いに加わらなきゃいけなかった・・・)
無意識にルークが戦わざるを得ない状態を作りつつあった三人の声を、ハセヲは遮ってルークをなんとか説得した。だからこそこうやってルークは思い止まり、戦いに参加しなくてもよくなった。だが無意識にルークは戦わなければいけないという不安にかられているため、あまりいい表情でいれていない。
(それをこいつら・・・世間知らずだって口々に罵りやがる。一体何様のつもりなんだよ・・・)
ルークの態度は寧ろ自分に近い。『ハセヲ』ではないリアルの自分だったら人を殺すのに踏ん切りをつけるかどうかを悩んでいるはずだ。しかし彼らは自分を基準に、ルークの事を基準以下に見ている。それがハセヲになによりの彼らに対する心に溝を作っていた。






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