善意は必ずしも報われるとは限らない

「でもこれからどうするんですか、ルークは?アッシュに正統王位継承権は移っても、移ったからこそこれからアッシュの罵倒は酷くなるのは目に見えてますよ?」
「ピオニー陛下に言えば融通は利かせてくれるだろうから適当にアッシュの目につかない位置に配置してくれって時期を見て言うつもりだよ。陛下だったら多分無意味に頑張るよっか配置を変えた方がいいって思うだろうし、それこそ何年経ってもあのままってんなら退位しても気苦労は絶えねぇだろうからな。その時はアッシュから見えない位置で頑張るから勘弁って意味も込めて、色々説得の為に動くつもりだ」
「そうですか・・・」
そんな中でエステルからのアッシュに対する対策についての疑問にルークは何でもないと言ったように返し、少し考え込むような表情を浮かべる。
「・・・ルーク、どうせならガルバンゾに来ませんか?」
「ガルバンゾ?・・・それって俺とお前で結婚するって意味か?」
「はい。どうせこの一件については私から陛下に内密という形でですが申し上げなければいけませんし、貴方の立場を考えるとアッシュに不満が出てきた時に代わりという形で矢面に立たされかねません。それに下手な貴族なんかと結婚させられるより貴方と結婚する方が全然いいですし、ヨーデルに王位を受け継いでいただくつもりですから私達の結婚は両国間の親交を深めるための物と見られると思いますよ?」
「お前自分が妙な奴を割り振られんの嫌なだけだろ・・・まぁ考え自体は悪くねぇな。俺もろくでもない奴を割り振られるかもしれないってのは嫌だしな」
それで出てきたガルバンゾへの誘いの言葉を結婚する物と解釈したルークだが、小首を傾げたエステルから出てきた愛情があるとはとても思えないような言葉の羅列に呆れつつもニヤリと笑みを浮かべる。
「んで、手筈は?」
「後一年か二年の内に私達の方も決着が着くと思いますが、十中八九暴走しやすい私より安定して公務に取り組んでくれるヨーデルの方を上層部は選ぶかと思われます。ですからその時に上奏します・・・貴方との縁談についてを」
「成程、それで両者共にフリーな俺らをまとめることで政略結婚が成立って訳か・・・まぁすんなりとはいかないだろうけど国と国の利益に加えて余り物をどう処理するかって考えりゃ、利害は一致するか」
「そういうことです」
それでどうするのかとの確認に対し普段のエステルを知る者(特にリタ)だったなら目に耳を疑うであろう言葉をエステルは次々に用い、その返答にルークは満足そうに笑った後に体を起こし・・・エステルの顔の両横に両腕を押し付け、覆い被さった。
「・・・んじゃそうするってんならもう一回やっか。どうせここの救助が済めばしばらく会えねぇんだし、こうやって人の目を盗んでってのも難しいしよ」
「そうですね、次に会うのは縁談の時になりそうですから・・・その分、激しくしましょうか」
・・・男と女の関係だからこそ出るなんとも言いがたい色気を醸し出す二人はエステルの見た目にそぐわない艶笑をきっかけに影を重ねる。そこから先は言葉などいらないとばかりに・・・















・・・その数年後、ライマとガルバンゾの王族同士が結婚するというルミナシアの歴史の中でも中々に珍しい出来事が起こった。だがその影で一人の女が苦しみ続けていたことは、限られた一部の者を除いて誰も知る事はなかった・・・



END










































(補足として、このルークとエステルの二人はスレてはいるけれど別に仕事に関してやる気が無いわけではありません。単に権力に興味がないことに加え、権力を得ることに躍起になる連中に嫌気が差したからこう言った性格になっただけでそれがないなら全然やることはやります。そして最後の女は誰かと言えばナタリアですが、ルークがいなくなったからと言って政治に復帰出来る訳ではないことに加えて、自分的には友達という感覚の人間であるエステルについてまでもをルークと一緒になったというだけで罵るアッシュに対して、何も言えないということに苦しんでいます。ですが当の本人達はもう何を言われようが勝手にどうぞという気持ちに加え、ライマの王になったアッシュに自分から出向くような事も出来ないしガルバンゾが用があっても自分達が出向く気はないのでもう二人からすれば会うことはない訳です。余程でなければ・・・なのでナタリアの苦悩はハッキリ言えば無駄、と言うのがオチという結末です)










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