善意は必ずしも報われるとは限らない

「・・・これで貴方の王位継承権は実質無くなりましたね、ルーク」
「だろうな。もうそろそろライマに戻る頃だから、ピオニー陛下にこってり絞られるだろ」
・・・ナタリアがライマに戻る1日前に話は遡る。
アドリビトムの本拠地であるバンエルティア号の一室。そこでルークとエステルの二人は・・・共にベッドの上に横になり、裸身をシーツで覆いながら顔を見合わせつつ話をしていた。
「でもあんなことになるなんて私も思っていませんでしたが、ルークはこの事を予想していたんです?」
「ナタリアが船に乗ってた頃から薄々とはな。つってもまさか隠れて付いてきてるなんて思っちゃいなかったから、流石に驚いたわ。まさかこんなことしでかしてくれるとはってな」
「フフ、私もそう思いました。だってライマの代表はルークだって聞いたのに、着いたらナタリアがいるんですよ?それもほとんど決まりごとを決めていない時に住民の人達を救助していたって言うんですから」
「その割にはいつものお前らしくなかったじゃねぇか。いくら足並みを揃える為って言ってもいつもなら私もって突っ込んでた所だろうし、フレンに不審に思われたんじゃねぇのか?」
「大丈夫ですよ。彼はダメだと思ったことには具申はするけれど、妥当な判断だと思えば疑問に思いはしてもそれ以上の追及はしませんから」
「ハハッ、随分と理解されてんなあいつも」
そんな二人は雰囲気も和やかにそのまま会話をするのだが、普段の二人を知っている者なら目を丸くするような物だった。特にエステルに関してはいつもはどこか天然で向こう見ずな姿な筈なのに、今は全てを知っていると言わんばかりの落ち着き払った余裕の笑みに満ちていた。
「それに正直、ナタリア以下の行動を取りたくなかったんです。普段の私だったら何かを言われて止めるくらいでちょうどいいくらいなんですけど、ナタリアが既にあぁしてましたからね」
「まぁそこに便乗しちまったら確かに同列か、それ以下の行動って言われてもおかしくはなかったな」
そんなエステルはナチュラルに毒を吐き、ルークもそれに同意する。エステルがナタリアに同調した行動を取ったなら、ガルバンゾまでもが足並みを乱したとなってエステルがナタリアに引きずられた行動をしたとナタリア以上の責任を問われた可能性も大いにあった為に。
「ま、ナタリアがあんだけやってくれた事は嬉しい誤算だったぜ。ライマじゃ俺かアッシュのどっちが正統王位継承権を得るのに相応しいかなんて比較をされてるって事だからな。アクゼリュス救助にナタリアがでしゃばってくれたおかげで事を大袈裟にしないためにも代表者は表向きナタリアにするってなったから、俺にその分の手柄を得る権利は無くなった・・・今アッシュがやってる公務は同程度の規模だから、この差はまずまともには埋まらねぇだろうしな」
「前から王の座なんていらないって言っていた貴方からすれば願ってもない話ですからね」
「そういうお前も似たようなもんじゃねぇか」
「いいんですよ、別に私の場合はヨーデルがやってくれるでしょうから」
更にルークは隠してるはずの王位継承権の事についても知ってると言い、エステルと笑いあう。



・・・ルークとエステル、この二人が初対面の時に感じた互いの印象は自分と同じ、と言うものだった。ならば何が同じかと言えばその後互いに話し合った所でこうだと分かった・・・王位に興味はない、周りがそれを押し出した事ばかり言う事にうんざりしている、だから自分の本当の気持ちを言うことを避けるようになった・・・ということが。

そして話し合う内に互いが互いに自分の本音を分かるとは思わなかったと驚いたが、似た者同士のシンパシーから分かったことだということをこれまた二人は言葉にしない内から理解していた。

それから二人は国が違う事もあって滅多な事で会うことはなかったのだが、それでも二人が顔を合わせ十分な時間があるとなった時は・・・今のように秘密の逢瀬を交わし、体を重ねていった。

・・・これは承知の上でやっていることとは言え、本当の自分を知った上での理解者がいないことから理解出来るばかりか、同質の存在を見つけた嬉しさを始めとした感情が爆発した結果だと二人は理解している。そしてだからこそ滅多に会えない二人は二人になれたなら抑えが効かなかった・・・互いが互いに感情を乗せて、体と体でぶつけ合える時間を求めることに。











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