善意は必ずしも報われるとは限らない

「そしてルークに代わり、お前の相手となるのはアッシュだ」
「ア、アッシュ・・・!?」
更にそればかりかアッシュと婚約となると聞き、戸惑う以外に出来ない・・・ナタリアにアッシュの二人は隠しているつもりだろうが、互いに想いあっていて結ばれないと思っていたのにこんな形で結ばれる事になると思っていなかった為に。
「言っておくがこれも勿論まともな理由での物じゃない。じゃあ何なのかと言えば、ルークが正当王位継承権において大きなハンデを背負わされたからだ」
「っ・・・な、なんでそれが婚約の解消という話になるんですか・・・!?」
「それについてはお前がルークとアッシュのどちらが正当王位継承権を得るにしても、その相手になるからだ。これは前陛下のインゴベルト陛下の愛娘であるお前が次期女王以外にないという見られ方があるからで、それに従って見れば正当王位継承権を持つ方にあてがうのは順当と言えるが・・・アクゼリュス行きでお前がルークの公務の経験に名誉を奪った事がアッシュとの差を大きく作ったことが原因だ」
「っ!?・・・ま、まさかそれで私とルークの婚約が解消という事になったと言うのですか・・・アッシュが正当王位継承権を得るために、ルークとの婚約は無しだと・・・!?」
そしてその理由についてを告げるピオニーだがルークとの婚約の解消理由が自分だと理解し、ガタガタとまた涙を流しながら震え出す。
「余程アッシュが何か重大な失敗をしなければの話にはなるし、表向きはまだ婚約の解消はするとは発表はしないがな。だがこちらとしてはアッシュが同じような規模の失敗をされたらそれこそ面倒以外の何物でもないから、ストッパーは常につけさせてもらう。いざという時アッシュを無理矢理にでも止められる力を持たせたストッパーをな」
「っ・・・ではもう、アッシュに王位を継がせる事は確定していると言うのですか・・・ルークの事を考えることもなく・・・!?」
「・・・確かにやろうと思えばアッシュの公務の数を減らすなどして、ルークと同等の立場にすることも出来なかった訳じゃない」
「だったら何故・・・!?」
「さっきも言ったが、規模の問題でもある。アクゼリュス救助はお前はこうやって先に帰ってきたから実感は湧かんだろうが、数十日はかけて行う長期間の公務だ。それだけの期間をアッシュに空けさせるのはあまり利口な選択ではないと同時に、アッシュが納得するとも思えなかったからそうしなかったんだ。何故自分の時間を無駄に余らせるのか・・・そう言ったことを言われかねないとな」
「っ・・・(アッシュでしたら・・・そう言うのは間違いないですわ・・・!)」
それで対策を取った上でアッシュを失敗させまいとするピオニーにナタリアはルークに対する救済措置に関することを口にし、対策があったことを聞いて精一杯に抗議の声を上げるがすぐさまアッシュの行動を述べられ言葉を詰まらせる。アッシュの事をよく知っているが故に、そうするのが目に見えた為に。
「そうなるならアッシュには非はないし、こちらの目的は元々ルークとどちらが正当王位継承権を得るべきかを見定める為だ。故に下手に波風を立てるような事をするよりはそのままにしておこうということになった訳だが・・・それは同時にルークに正当王位継承権を継がせる事はまず無くなったと言うのを意味するという訳だ。そしてお前とルークが結婚する事がなくなったということにもな」
「っ・・・私の為に、ルークがそのようなことに・・・」
「悲しむのは勝手だが、ルークにもだがアッシュにも今の事を口にすることは許さんというのを忘れるなよ。ルークについては言ったが、もしもアッシュにどんな形でもその事実の事を口にしてみろ・・・確実にあいつはお前を責めるような事などせず、ルークが悪いと責め立てるのが目に見えているからな」
「そっ、そんな!・・・アッシュは、そんなことしませんわ・・・」
「・・・まだお前はそう言うことを言うのか・・・まぁいい、これで最後にしてやるから耳の穴をかっぽじってよく聞け」
ピオニーは構わず続け突き付けるようにルークは正当王位継承権と婚約解消される事になると告げ、ナタリアは更にボロボロと涙を流し出す。だが再度黙るように言われた中でアッシュの事を酷い人物として言っていると捉えたナタリアは力ないながらも抗議の声を向けるが、ピオニーは顔を一回手で覆った後に手を退け最後と表情を新たに冷めたものとしながら告げる。言うことがあるから聞けと。






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