善意は必ずしも報われるとは限らない

「さて、ティアの事について話が行き過ぎたがお前が起こしてきた行動は数多の人物に迷惑をかけてきた行動だということくらいは今の話で理解しただろう。そして話を戻すが代わりの公務を用意するために俺達がどれだけ気を揉んだ上で作業をしなければならないか分かるか?・・・いや、お前には分からんだろうな。その公務1つ1つがどれだけの人材に手間暇をかけてきたのかと言うことを、こちらの方が重要だからと大を勝手に取って小を捨てるようなお前に」
「・・・っ!」
そんなティアの流れを継いだ上であからさまに馬鹿にして見下すような言葉を吐き捨てるように向けるピオニーだが、本来のナタリアであったら激昂して食って掛かるだろう話を受けてもただ愕然とするように頭を抱えるばかりであった・・・もう自分の愚かさを突き付けられたくないとばかりに。
「・・・随分と堪えているようだな。本来ならまだまだ言いたい事はあるが、後何個か言ったらそれで終わりにする。そしてそこから部屋に戻って一人で悩め。ここでウジウジされても迷惑なだけなんでな」
「っ・・・」
そんな姿に当然だが優しく声をかけることなく話を進めるピオニーに、ナタリアはビクッと反射的に震えることしか出来なかった。
「まぁまず先に言っておく事としてアクゼリュスの手柄の件に関してはさっきも言ったが、それは丸ごとくれてやる。だが事実を知っている俺達からすれば似たような事を平然と繰り返されても困るし、何より表向きはともかく何も罰もないと言うのは俺だけでなく貴族達も不満に不安があるからな・・・だからこの場でお前に対する処分を申し渡してやる。それは今度似たような事をやればその時はどう言った状態であれ問答無用で処罰を下す。そして今後政治の場に来ることに発言をする権利を無期限で剥奪するから、こちらが渡す公務を黙々とこなせ・・・分かったか?」
「っ・・・は、発言まで出来ないと言うのですか・・・?」
「不服などとは言わさんぞ。本当なら王女という地位の剥奪以上の事をされてもおかしくない事をしたのに、何事もないばかりか名誉すら更に増した状態でいられるようにしたんだ。これで何の罰もなしというのは都合が良すぎるし、何よりこちらの命令に歯向かってまでアクゼリュスに行ったお前がそんなことを気にせず我が物顔で発言をする姿を、俺を含めた貴族達が心地いいものと思うと思うか?」
「っ!・・・それは、思えません・・・」
「それが分かるなら処置を素直に受け入れろ。こちらに対して申し訳ないという気持ちがあるならな」
「っ・・・」
そこで実質的な罰を与えると今後の事に釘を刺した上で政治への参戦権を奪うと言い、ナタリアは弱い声ながらも恐る恐ると信じられないと声を上げるがすぐさまこれでも甘い処置と言われた上で信用がないと言われてはそれ以上は何も言えず押し黙り下を向いてうつ向くしかなかった。
「なら後はこの事についても言っておくが、アクゼリュスの一連の裏事情については公の場でもそうだがルークとアッシュの二人には絶対に口にするな。特にルークには謝りたいからと思っても絶対にその事を口にするな」
「!?・・・そ、そんな・・・な、何故謝ることすら駄目だと言うのですか・・・!?」
しかしまだ続くとばかりにルークとアッシュの二人、特にルークに言うことを禁じると言われ涙をまなじりに浮かべながら訳を聞いてくる。
「訳として言うなら流石に王位継承権については言わないが、アクゼリュスの責任者としての立場を譲ってもらうように言う中でお前の事も伝える事にしている。お前を止めることが出来なかったとは言え、一番の当事者であり被害者であるルークに不満を言わないようにしてもらうためにもな・・・そんな事になると言うのに例え周りの目を気にして謝ったとて、惨めになるのは謝って少しでも気が楽になるお前ではなく感情を爆発させることも出来ずに何か得を得られる筈もないルークの方だ。そんな風になるのが見えているのにお前の罪悪感を晴らしたいが為の謝罪など到底認められる物ではない」
「っ!」
・・・言葉だけの自分が楽になる為の謝罪、それも辛いのがわかると言いつつ理解してない者の言葉など神経を逆撫でするだけになる。
ピオニーからそう言われてしまったナタリアはビクッとした瞬間にツゥと涙を流す。そんなことにしかたったわけでないと言わんばかりに。
「・・・まぁルークとアッシュの二人に言うなと言った理由に関してはもう1つ、それもこれが最も重要な理由がある。それがルークとお前の婚約の解消だ」
「っ!?・・・こ、婚約解消・・・!?」
しかしまだナタリアにとって衝撃的、それもピオニーが最もと言うように最大の言葉が告げられた。ナタリアやアッシュに言えば確実に否定や怒りを返されるが、二人の許されぬ恋の大元になっていた婚約が無くなると知らされ。







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