善意は必ずしも報われるとは限らない

「・・・いくら自己弁護の為とは言え、数日前にサレ達に言われたことをもう忘れたか」
「サレっ・・・何故陛下がそのようなことを・・・!?」
「ジェイドから報告の手紙を受け取った。その時の様子を仔細にまとめられた中身の物をな・・・だがそれを全く忘れたかのようなことを平然と言うとは思っていなかったぞ。それともなんだ?自分の中で部下は自分のヘマのフォローを喜んでやる奴らの集まりだと本心から思っていたのか?だったらその考えは見当違いもいいところだ。現にお前の護衛だったティアもハッキリとお前への不満を口にしていたからな」
「っ!?・・・ティア、が・・・!?」
そこで呆れたようにサレの事を口にしたピオニーにナタリアは何故と動揺しながら問うが、すぐに返された返答の後にティアも不満を口にしたとの言葉に最大限に驚愕し目を見開いた・・・ナタリアからして見れば自分の護衛と言う存在であると同時に、数少ない歳が近い仲間で女の友達であるという認識がある存在からそのようなことを言われると思わなかった為に。
「何も驚くような事じゃない・・・お前が勝手にアクゼリュスに行ったことについての責任問題について言った時、不満を口にしたそうだ」
「せ、責任問題・・・?」
「・・・一つ聞くが、何故お前はティアを連れていこうと思わなかった?自分の護衛であるはずのティアという存在を」
「そ、それは・・・彼女はこういった時には反対すると思ったので、それで待っていてもらった方がいいと思って・・・」
「止められると思ったのならそこで自分の行動の非について考え、留まっておけばよかった物を・・・そのせいでティアがお前の護衛から外されることになったんだがな」
「え・・・っ!?」
ティアが何故そう言ったのか。ピオニーは段階的に話をしていくのだが、護衛から外されたと言われてナタリアは心底から意味が分からないと驚きに声を上げた。
「自分で言っただろう、ティアは反対すると思ったから何も言わずに抜け出してきたと。そんなことを易々された人物を護衛としてずっと付けると思うか?王女殿下ともあろう立場の人間を逃がすような人物を」
「そっ、それは・・・私が悪いのです、彼女は何も悪くありません!」
「自分が抜け出したから悪くないと言うのは言い訳にならん。俺達が問題視しているのは易々と逃げ出された事についてだ。護衛が簡単に護衛対象から逃げられる・・・これの何処が職務怠慢でないと言えるんだ?そしてもっと言うなら抜け出したのはお前自身の責任から来る行動であって、ティアが悪くない事には繋がらん。あくまでもお前はお前で、ティアはティアの責任と個人個人にあると俺は言っているんだ。例え庇いだてしようと意味がないどころか、責任を負わせたお前に言われたら流石にティアも貴女が言うなと返すだろうな」
「っ!!」
それでティアの責任について言い出すとナタリアが何とか擁護しようとするが、それはブーメラン以外の何物でもないとピオニーから返されて一気に言葉を詰まらせ息を呑む。
「まぁ殿下の行動を正当化しなければならない事に加え、ヴァンの立場の事もあるから配置移動という程度で表向きは処分は済ませるが・・・もうティアとは以前のように話が出来ないとは思っておけ。まずいつも会えるような距離でないことになることに加え、表向きは処分ではないとは言え王女殿下を逃がしてしまった事実は関係者に知られ、尚且つ本人も自分が迂闊だったと認めた上でお前に対して不満を感じていたからな」
「っ・・・」
更にティアに対して物理的にも精神的にも距離が出来ると告げられ、ナタリアは今まで以上にダメージを受けたように顔を下げた。ティアと離れることになった上にその原因は他ならぬ自分、そして下手に謝ることすらはばかられる状況になっている・・・その事を否応なしに理解した為に。








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