善意は必ずしも報われるとは限らない

「・・・今までの話でも出てきたが二人の行動でどちらかに王位継承権が転がってくる。余程のトラブルがなければ確実にライマの次期王になれる権利がな。それで二人の立場から考えて見ればルークからはアッシュは自分にとって変わる可能性を持った人物となり、アッシュからすればルークに対して唯一無二の下克上を果たすチャンスとなる・・・そう言った両者の立場を考えてみると、互いが互いを蹴落とす為の争いをしかねないと見たんだ」
「そんな・・・二人はそんなこと致しませんわ!」
「だろうな。二人はそういった争いはしないと俺も思っている」
「だったら・・・!」
「待て。俺が言っているのはあくまで二人共に自分からそう言った争いをしようとはしない、だ。俺個人として一番懸念したのはアッシュからルークに対しての気持ちの激化だ」
「っ!!」
それで気張りの理由について王位継承権の争いに繋がると述べるピオニーにナタリアはすぐさま怒りに声を荒くしたが、一度同意をした後に個人的にとアッシュの事を強調されたことで絶句した。
「・・・俺より二人と接する機会が多い殿下は感じただろう。もしアッシュが王位継承権について聞いたならそうなるだろうことは・・・まぁルークも張り切らない訳ではないとは思うが、そう言った競争に関して普段からルークを屑呼ばわりしているアッシュが後塵を拝するような動きをするとは全く思えないからな。そしてそれをきっかけとして顔を合わせれば罵りの言葉を場も弁えも我慢もせずにアッシュが向けるだろう・・・テメェなんかに負けるかとな」
「そ、それは・・・」
「・・・いくらそういった対立の状況になったと言っても、あからさまに喧嘩腰の姿勢を所構わず見せられては流石に内外問わずみっともないと問題になる。だからこそ当事者達に何も言わずにしようとなったんだ。妙な気張りをされては面倒だとな」
「っ・・・」
明らかに心当たりが浮かんだと言った様子にピオニーが更にアッシュが取るであろう行動を述べ、みっともないと評した事にナタリアは悔しげになりながらも反論の言葉を返せなかった。アッシュはそんなことはしないなんて、普段の様子をよく知るだけにそう否定する言葉が。
「だからこそ当事者達に何も言わずに済ませ公務における態度に成果でどうするかを決めようとしたわけだが、そうするならルークかアッシュの片方だけに公務を多く配置するのは公平と思うか?」
「いえ・・・そうするならどちらにも均等に同じだけの公務を配分するのが公平だと思いますが・・・」
「そうだ・・・そしてそれがルークの公務の経験に名誉を失わせたと言った理由でもあり、同時にアッシュに対して酷いアドバンテージを背負わせた出来事でもある」
「え・・・っ!」
「・・・どうやら気付いたようだな」
ピオニーはだからこそと言いつつ問い掛けを向けナタリアは妥当な答えを返すが、続けられた言葉に一気に顔を青ざめさせた。その顔にピオニーの視線が今までより冷たく鋭く細まる。
「言ってしまえば殿下が取った行動は王位継承権を巡る争いを邪魔する行為だ。例え事実を知らなかろうともな。更に言うなら元々からの婚約者であるはずのルークを蔑ろにした行動とすら呼べる。現に殿下がルークの邪魔をしてアッシュの手助けをしたと邪推する貴族の声もあったほどだ」
「わ、私はそのようなつもりでは・・・」
「それはよく分かってる。殿下は意識してやったことではないとな。だが結果として殿下が邪魔をした事実に変わりはない・・・ルークの邪魔をした事実にはな」
「・・・で、ですがそれなら変わりの公務をご用意すればよろしいのではありませんか?ルークは悪いのではないのですから、そうすれば・・・」
「殿下は何もご存知ないからそのようなことを平気で言えるんだ」
「っ・・・!?」
その目のままなじるように話を進めるピオニーになんとかナタリアは言い訳を紡いでいくが、何も知らないと何でもないように言われ何故か身を引いてしまった・・・その言葉にえもいわれぬ不安を知らず知らずに感じ。











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