善意は必ずしも報われるとは限らない

「はっきり言って今思い出しても俺からすればあまり気持ちの良くない処置だった。そして今も尚ルークにアッシュの二人を比べるようにしてどちらが王位に相応しいか等と言った話もされてこそいるが、一応は先代の王であるインゴベルト陛下の望み通りルークが王位継承権としては高い位置にいて殿下が婚約者のままいることになってはいる・・・だがそれも今の状態を言うなら、薄氷の上の物だ。結局ルークとアッシュのどちらがいいかと言う論争が終わらなかった事により、まだ正式にどうするかとは決まった訳ではないからな」
「はい・・・確かに・・・」
更にそう言ったルークとアッシュを巡る状況がまだ改善されてないことを漏らすピオニーに、ナタリアも苦い表情のまま同意を示す。
「これが二人ではなく一人であったり歳の離れた兄弟であったらそういった争いもなかったかもしれないが、だ・・・それは置いておいて話を続けるが、現在二人が最近公務を始めたのは知っているだろう?」
「はい・・・国内も落ち着いてきたから王族としての職務を果たす時期に来たからでしょう?」
「違う」
「え?」
「確かにそういう意味合いも無いことはないが、本来の目的はルークとアッシュ・・・二人が公務をどのようにこなすかを見ることでどちらが正当王位継承権を持つに相応しいのか、それを見るためだ」
「えっ・・・わ、私はそのような事は聞いていませんわ・・・」
「当然だ、これは当事者達・・・殿下も含めてその事を言わないようにしていたからな。余計な事になるのを避けるために」
「よ、余計な事とは・・・?」
ピオニーはその流れを一端切った上で話を改めるのだが、自分にも知らせることがなかったという事実にナタリアは恐る恐ると訳を問う。
「まず第一に当人達がその事実を知った場合王位継承権を確実に自分の物とする為当事者が動く事もだが、どちらかの側に寄った人物が相手側に対しての妨害行動を取らせないようにとするためだ。そしてそれは二人の事について言ってきた貴族達にも厳命してある・・・もしどちらかがそれを知っているかのような素振りであったり、誰か介入したという行動が見受けられたなら即刻処罰を与えると言ったことでな」
「で、ですが私に言わない理由が・・・」
「だったら聞くが、殿下がそれを知ったならどちらにも何も言わずにいたと思うか?・・・どちらが正当王位継承権を得たとしてもそれに従う、などという言葉を絶対に言わなかったと思うか?」
「っ・・・っ!」
まず第一にと理由を聞きすぐに自分に言わない理由はないとナタリアは弱く声を上げるのだが、すぐにピオニーから底冷えのするような眼差し付きで問い返された言葉に息を飲み言葉を失った・・・ピオニーが言った言葉は確実に言う、言っていたであろうとナタリアが考えてしまった為に。
「・・・そう言うだろう事にそんな反応になるだろう事が予想がついたから殿下にも何も言わずにしようとなったんだ。殿下がその事実を知れば黙れと言われても心苦しいだろうし、ただ黙っているだけで済むかという話になる・・・そしてそれを言ってしまえば殿下でも罰を与えざるを得なくなる、というわけだ」
「・・・だから私に言わなかった、と・・・」
「そう、二人に密に関わる殿下が耐えれるかどうかが懸念事項だったからな。そして次に話す理由が最も大きな理由になるが・・・それを話すことで当事者達に余計な気張りを生まないようにするためだ」
「余計な、気張り・・・?」
そんな姿を冷ややかに見つめながらピオニーは理由をまとめナタリアは落ち込むようにしながら理解するが、流れが次の理由になった時に意味が分からないと声を上げる。










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