善意は必ずしも報われるとは限らない

「そしてその影響は他国にも降りかかる」
「・・・っ!」
・・・だがまだ話は終わっていない。
ピオニーが他国と切り出した事にナタリアはあからさまにビクッと体を震わせる。
「殿下の事実が明らかになったのなら住民や人々が他国に向ける焦点はその事実を各国の代表者達は知っていたのか、だ。だが各国共同体制で作業にあたった事に加えてルーク達はウッドロウ達と顔を合わせた上で事に挑んでいた事実を考えれば、シラを切ろうと知らないに報告を受けていないはまず通じない。そんなことをすれば俺達ライマの上層部に更に批難が来るのは当然だが、これに関しちゃそうしてもしなくてもどっちにどう転んだって各国の代表者達に向けられる声としては無能に無責任と言った声だろう。何せライマの王女殿下という立場の者の状態を確認しなかったか、もしくは放置していたのだからな」
「そっ!?そんなことになったら・・・!」
「どう少なく見ても代表者達の評判は落ち、外交に亀裂が入る。そして外交に関して言えばライマとその他の国の間の関係だけが悪くなる。これは当然だろう・・・何せ批難される元凶はライマなんだからな。そしてそうなれば当然、場にいたというウッドロウ達も流石にいい気持ちにはなれんだろう・・・と言うより、それで気分が良くなるような奴がいたなら逆に俺が聞きたいくらいだ」
「・・・っ!」
それで今度ピオニーの語った被害とは各国代表者の批難と外交問題の亀裂。そしてウッドロウ達に不快な想いをさせる事だと言い、ナタリアは更にヨロリと後ろによろめき壁へとその身をつけて何とか体を立ったままの体勢に留める・・・流石にナタリアでもライマという国の他国との関係の事に加え、立場が近い友人達に迷惑が多大にかかるとなれば申し訳ないという気持ちが先立ったのだろう。
「・・・まぁこれらの推測に関してはあくまでそうなっていたら、の話だ。これらが実現するような事にならなかったのは殿下がアクゼリュス救助の一団に当然のような顔で付いていった事や、ウッドロウ達が殿下の事を代表じゃないと言い触らさなかったが故の事だ」
「ウッドロウ・・・エステル・・・」
「待て・・・これも勘違いする前に言っておくが、それを言おうとすれば言えた立場にウッドロウ達はいたんだ。ルーク達から殿下がどのような形で来たのかを知っているんだからな。そしてもっと言うなら元々使節団のように他国へと渡るような任というのは相手へこれだけの人数でどのような人物が来るのかと言うのは、ある程度連絡を交わして示し合わせた上で派遣するのが失礼のない普通のやり方だ。その上で人員の変更に誰が行けなくなっただとかは事情の如何だったりを説明するかまたは連絡を送るなりすればそう言った事は許容されはするが、急な増員は相手側へ強いる負担が多くなる為に失礼にあたる行為になる。ましてやその人員の身分が高ければ尚更失礼になるどころか、迷惑すらかける行為だ。いくら気にするなと言ってもそんな身分の相手にそれ相応の対応をしないのは考えられん行為になるからだが、唐突にそれを知らされれば相手側も対応に追われるだろうからな。そしてそれも行き過ぎた事をした場合によっては本人にかどうかはともかく、どういうことだという抗議を送られることすら有り得る・・・色々と長くなったが分かるか、殿下?殿下はあちらの対応を友誼があるからのことと思っているのかもしれんが、端から見れば本来あってはならない失態を情けをかけて見逃してもらったような物だ・・・本当ならその事は恥以外の何物でもないんだよ。国際問題になりかねないことを相手の厚意でなかった事にしてもらうような事はな」
「!!」
しかしナタリアの態度にウッドロウ達が言わなかった事が事態を避けれたと言うと、ウッドロウ達の名を感慨深そうにナタリアは呟く・・・だがすかさず訂正というにはあまりに長く段々と厳しくなっていった言葉を受け、ナタリアは言葉を失った。恥を恥だと認知していないと、そう言われたも同然の言葉に。







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