善意は必ずしも報われるとは限らない

「どういう事かと言われれば簡単に言うと、殿下を罰するような事をしたならアクゼリュスの住民がライマを始めとした諸国に抗議をする可能性があるからだ」
「え・・・何で、そんなことを・・・?」
「ジェイドや兵士からの報告書にあったが、殿下は自分がライマの王女殿下であるということを救助の最中に何度も口にしたそうだが・・・間違ってるか?」
「い、いえ・・・」
その問いに答えるピオニーだが意味がわからないと目をパチパチさせるナタリアに王女と名乗ったかを聞くと、肯定と示すよう首を横に振る。



・・・この辺りはナタリアが自分は王族の蒼い血を引いているのだとプライドの高さを滲ませるよう周りにはばかることなく公言しているため、アクゼリュスの住民を励ますという意味で言ったのだろうが、それは各国にとって普通ならあってはならない拙い事態を招く事になった。



「そうか・・・それを前提に話していくがアクゼリュスの住民にとってそうやって国の王女殿下自らが救助活動をするばかりか、病に苦しむ自分達を身の危険もはばからず助けてくれた事実。これは後々助かった住民は余程考え方がひん曲がった奴でなければ、奇特な方だと殿下の事を思うだろう。そこまで身を挺して救助活動をしてくれる王族などいないとな・・・だが、だ。そんな人物がアクゼリュスの救助活動のメンバーに名前が入ってないとしたなら、人々はどんな反応をすると思う?」
「え・・・?」
ピオニーはその話を受けた上で話を進めるのだが、事実を知ったならという仮定を問う問いにナタリアは意味が戸惑いを見せる。
「意味が分からないと言った様子だから俺が予測出来る範囲で答えてやるが・・・なんて立派な方なんだ。自分達の為に来てくれるとは。国の決定に逆らってまで来てくれるなんて・・・といった自分達に対する行動への感謝が先に来るだろう。殿下の行動は言ってみれば、英雄が取るような美談と言えるような行動と取れるのだからな」
「っ・・・だ、だったら私が呼び戻される理由は「だが俺達ライマの上層部及び、ガルバンゾ以下の他国の上層部の反応は違う」・・・っ!」
そんな戸惑いはピオニーがその雰囲気と打って変わって話の中身はあまりにも好印象な言葉ばかりを向けてきた事で消え、ナタリアは意気を取り戻し反論しようとするが一気に空気に重さを増した遮りの言葉に言葉を詰まらせた。その目もあまりにも鋭く、ナタリアを傷付けんばかりに細まって見ていた事に圧される形で。
「俺達ライマからすれば何故殿下を最初から派遣するように言わなかったと、そう言った批判が来ることはどうしても避けられん。これは流れとしてまず確実に訪れるが、そうなればアクゼリュスの住民が流した噂により人々の間で俺達の評価が下がり殿下の評価が上がることになる・・・つまりは俺達ライマの上層部の顔に泥を塗ることになるわけだ。殿下が国の反対まで押し切ってきた英雄になったなら、その傍らで誤った判断を下した奴らと言われる形でな」
「!!ま、待ってください!私はそんな泥を塗るつもりなんてございませんでした!」
「少なくとも俺を含めた上層部に異論を唱えた上で、ライマを抜け出した事実に変わりはないだろう。その事実がもし殿下を呼び戻さずに救助活動をし終わった際に明らかになったなら、住民から言われるのは殿下が正しくて俺達が間違っていたという俺達にとって不名誉な言葉だ・・・そんなつもりはないもクソもない。殿下自身が俺達の判断を過ちだと断じて行動して住民が救われた事実を前にして、誰が俺達の方が間違ってないなどと言うと思う?・・・もし殿下が俺達の事を庇おうものなら一層俺達が惨めになるだけだ。その時の俺達は間違っていた者達で殿下は正しい者となって、そんな図式の中で殿下に情けをかけられたと殿下の耳に入らない場でいい笑い者にされるのがオチという形でな」
「!!」
そして続けざまに語られた上層部とナタリアのあまりの格差の隔たりを作ることを思わせる話にたまらず本意じゃないと叫ぶのだが、ピオニーからすかさず事実は事実と抜け出した事を強調した上で覆ることはまずないと言われたことに顔色を青くして目を見開きプルプルと震えだした。ナタリアからすればそんなつもりはなかった・・・自分が行くことで全てうまくいくという考え以外に何もなかったのだろう。








11/26ページ
スキ