善意は必ずしも報われるとは限らない

「・・・どうやら少しは応えたようですが、まだ話はこれだけではありませんよ」
「っ、え・・・?」
そんな姿にジェイドは更にまだあると告げ、ナタリアの表情を一層不安に染める。
「今度はエステルとフレン。貴女方にお聞きしますが、お二人は必要以上にこの場を離れましたか?」
「それは・・・フレンから言われたんです。私達は足並みを乱すべきではないと・・・」
「・・・我々が島に着いた時に既にナタリア様は救助活動に勤しんでいました。それでエステリーゼ様もナタリア様に倣い救助活動に入ろうとした時、ウッドロウ様達から声がかかり詳しく話をお聞きしました・・・それで話を聞き終わった後、我々までもがナタリア様を倣った行動を取れば各国が集まった上で一致団結してアクゼリュスの救援に当たる事が出来なくなる決定的な事由になりかねないと思ったので、ウッドロウ様達のお言葉もあってエステリーゼ様を説得致しました・・・もし我々までもが勝手に行動したなら、各国間での連携を勝手に乱すライマやガルバンゾと協力する義務はない。そう言われてしまいかねないと言って・・・」
「成程、そうですか。それでエステルは救助活動に自ら参加するようなことはしなかったということになる訳ですね」
「はい・・・本当は私もそうしたかったんですが、皆さんの仲が悪くなると言われてしまっては、流石にと思い・・・」
「・・・だそうですよ、ナタリア」
「っ!」
ジェイドはそこで今度はガルバンゾの二人に視線を向け、質問を振る。エステルはそこで気まずげに視線をさ迷わせながら話し、フレンは一応は真っ直ぐを見ながらも表情を複雑そうに歪ませながら話す。それで聞きたいことに聞き終えたとばかりにジェイドが視線を向けると、ナタリアは体をビクッと揺らした。
「今お二方が言われましたが、このように各国共同体制で事に当たる時には顔を合わせて足並みを揃えるのが普通です。変に一国だけで行動して不手際などあってはいけませんからね」
「で、では何故ルーク達は私を止めなかったのですか・・・!?」
ジェイドはそこで共同体制で動く際についての通例を上げるのだが、ナタリアが何故とルークとガイの二人を視線を向けながら問う。自身を止めればよかったことだと、半ば相手を批難するかのよう。
「・・・ウッドロウ達から話を聞いた時、ぶっちゃけお前が聞く耳持たねぇだろうって皆の中で話に出たからだよ。そればっかしか話をしに行ったら逆に何で貴殿方は救助活動に参加しないんですかって、俺らを無理にでも引きずり込もうとするんじゃないかってな」
「それで下手にナタリアを刺激して他の人も見てる前で言い合いになって険悪な空気になるより、自分達は裏方の処理をしてるって体でいく方が収まりがいいって話になったんだ。と言っても流石に王女殿下であるナタリアをずっと一人放っておくのはまずいってことで、俺が護衛につくことになったんだけどな・・・」
「・・・まぁそのやり方が成功したのは貴女がライマから正式に派遣された訳ではないという前提が無ければまず通用しない事なんですよ。国の代表が好き勝手に動いているなど本来あってはいけないことですからね。ただそれでそう言われたからとルークにウッドロウ達の事を疑問に思わずこの数日を過ごしていたと言うのですからね・・・流石に呆れましたよ。貴女の素直さは美徳な点とは言えますが、自分がどのような行動を取っているかもですがルーク達が貴女の性格の事を踏まえた上で放置していることを、自分の事を認めて動いてると何の疑いもなく解釈しているのですからね・・・」
「・・・っ!」
だがルークにガイの二人から返ってきた返答に加えジェイドまでもが取り繕うことなく表情を疲れさせる姿を見てナタリアは息を呑んだ。まさか自分がそんな腫れ物を扱うような事をされているなんて全く知らなかった上に考えもしていなかったために。








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