善意は必ずしも報われるとは限らない

「・・・まぁ一方的にただ通告されてもナタリアも納得出来ないでしょうから、段階を分けて説明しましょう・・・ルークにガイ。まず貴殿方にお聞きしますが、ナタリアはどのようにして貴殿方の前に現れたのですか?」
「あ?・・・俺らが船で出港してからしばらく経って船室から現れたんだよ・・・んでなんでここにいるんだって言ったら、さっきのような事を言われたんだよ。自分が行かなくてどうするんですか!・・・ってな」
「・・・それでどうにかナタリアに帰ってもらうように説得しようとしたんだが、船が出港してから大分時間が経ってて一回港に戻るなんてしたら確実に他の国と比べて大分遅れた時間にしか着かないって船長に言われてな・・・だから足並みを出来る限り揃えてやる事を目標にしてたのもあって仕方なくそのままナタリアを船に乗せるってなったんだよ。キュビ半島に着いたらすぐに送り返すようにしようってルークと二人で話し合ってな」
「・・・ま、そいつも出来ないまま終わっちまったんだけどな。ナタリアが島に着いた瞬間行動を起こしちまったもんだから」
「成程・・・」
ジェイドはそのまま仕方ないと言わん様子で話をルークとガイの二人に振ると、当時の様子を快くない物だったと思い思いに話す姿に納得してから視線をウッドロウとリオンの方へと向ける。
「・・・それからのナタリアの行動はどうだったのですか?」
「・・・我々はこの中でも一番早くにこの島に来ることが出来た。その為まだ来るであろう皆を待つ為に私とリオン君は一通りやることを済ませて港にいたのだが、しばらくしてこの島にライマの船が来た」
「そしてその船から我先にと現れたのはルークではなくナタリアだった」
「始めは私は何故ナタリア君がここにいるのかと思ったよ。キュビ半島にライマの代表として来るのはルーク君と、そう事前に連絡を受けていた物だからね・・・それで私はナタリア君の性格を考え、急遽こちらに来れるようにピオニー陛下に上奏して許可を取ってきたのではと思い接していたのだが・・・」
「後ろから来た二人の不本意そうな顔と前で話す一人の顔があまりにも対照的に明暗が分かれていたのでな・・・ナタリアがいない場で二人にそうなっていた理由を聞けば、先のような答えを返されたと言うわけだ・・・この話を聞かされた時には流石に僕も二人への同情を禁じ得なかったぞ。まさかそのような蛮行に王女が走った上に、その尻拭いもロクに出来ぬまま更に暴走されたというのだからな」
「っ!リオン!いくら見知った仲とは言え言っていいことと悪いことがございますわよ!」
続いて視線の先にいた二人に質問を向けるジェイドに、ウッドロウは重く答えリオンはいつもの口調で答えていく。だがリオンの心からのナタリアへの呆れを込めた言葉に、本人はまた一気に怒りを爆発させた。自分への罵倒以外の何物でもないと感じた言葉に。
「見知った顔でこの場だからこそ彼も言っているのですよ、ナタリア。でなければ普段の彼は色々と思いはするでしょうがこのようなことを言いません。本人の前で堂々とはね」
「一言余計だ。それに思ったことを包み隠さず言えと言ったのはお前だろう」
「その点については感謝していますよ。私がこれを言ってほしいと思っていた事を言っていただいたのですから」
「えっ・・・何を・・・?」
すぐさまリオンに詰め寄りかからんばかりのナタリアを手を前に出しながらジェイドは制止しつつ、どことなくフォローと言いがたい言葉を向ける。リオンもその言葉に言及しつつお前の要望だからと言えば、ジェイドはまた謝罪と言い難い言葉を発しつつナタリアを軽く戸惑わせる。そのナタリアにとっての不穏な物言いに。








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