善意は必ずしも報われるとは限らない

「・・・失礼します」
「っ・・・ジェイド、それにアニスも・・・どうしてここに・・・?」
そんな空気の中でリタの背後から現れたジェイドとアニスに、ルークは軽く驚きながら訳を問う。このキュビ半島に来ているはずのない二人が現れた為に。
「・・・その件につきましては場所を変えてお話ししましょう。この場では少し問題があります」
「いや、待ってくれ・・・もしや貴方のその話とは、ナタリア君に関することでは?」
「「「「・・・っ!」」」」
ジェイドはその問いに固い口調で場の変更を切り出すが、ウッドロウから出たナタリアとの名前にウッドロウとエステルの護衛に来ていたリオンとフレンも含め一気に全員の空気が緊迫したものへと変わった。
「・・・もしやナタリア様は何か既に行動されていたのですか?」
「あぁ、現在進行形で行動している・・・今この場にルーク君の護衛であるはずのガイ君の姿がないのがいい証拠だ」
「・・・ガイをナタリアにつけたのは貴方ですか、ルーク?」
「・・・ウッドロウ達の話を聞いて仕方無しに、だよ。今の状況じゃここにいる俺よっかナタリアにガイをつけた方がいいってな・・・」
「そうですか・・・ふぅ、そこまで聞いただけでもうナタリアがどのような行動を取ってきたのかある程度分かってしまいますね・・・」
ジェイドは静かにウッドロウに問いを向け、名前が出たルークに呼称を改めて問い直すと自分だって本意じゃなかったと、半ばヤケになって手をヒラヒラと振る姿にそっとタメ息を吐き頭に手を置き目を閉じる・・・普段のその動作は単なるポーズだったり嫌味に繋げる為の前フリだったりするのだが、その声と姿にはそんな演技とはまず言えないような生の感情がこもっていると場にいる全員が感じていた。
「・・・ギルドのリーダーは貴女だとお聞きしたのですが、間違いありませんか?」
「え?えぇ、そうですけれど・・・」
「出来ればご協力いただけませんか?我々は確かにウッドロウの言うようナタリアの件で来ました。それで会話の流れから貴女もナタリアの行動がいかな影響を及ぼすのかウッドロウからお聞きしたように見受けられるのですが、それは間違いありませんか?」
「・・・えぇ、それは・・・」
そんなジェイドはアンジュに視線を向け確認の問いを投げ掛けると、歯切れが悪く言いにくそうながらも頷いて返す。アンジュ自身微妙な気持ちを抱いていたのもあるのだろうし、正直に答えねばならないとも感じたのだろう。
「それなら話が早い・・・ギルドの人間である貴女にこのようなことを頼むのは筋違いだとは承知しているのですが、これ以上事態がこじれるような事になればライマの体面にも関わりますし他の国の方々にも迷惑となります。そして何より・・・いつまでもこちらの方々のご厚意に甘えたままにしてはいられないのです。彼女の行動を見過ごすような厚意に」
「・・・分かりました。そう言うことでしたらこちらも協力させていただきます」
理解を示す姿にジェイドは協力を願い出るのだが、これまた常日頃にない心底からの望みがこもった言葉にアンジュもそっと表情を引き締め頷いた。その姿に応えようと決めて。












・・・そんなやり取りがジェイドとアニスの二人が来てから行われて数日の間、その時間に何か起こることはなかった。精々がジェイドにアニスが来ていることをナタリアが知り、それで陛下よりの命で来たと言われナタリアがすんなりと疑うことなくその言葉を受け入れたくらいだ。そしてジェイドは元々技術畑出身だったことからリタ達と障気対策の研究メンバーに入り、アニスはルークの護衛として数日間過ごした。



・・・そして数日後、ルーク達が各国々に救助活動の為の手紙を出したことにより、各国から続々と船がキュビ半島に着くようになっていった。そしてその中にはライマからの船も存在していた。






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