善意は必ずしも報われるとは限らない

・・・ルミナシアの中枢近くにキュビ半島という島がある。そこには港から多少離れた所に鉱山の中に作られた街、アクゼリュスがある。

そこで取れる鉱石は良質な物ばかりであり、キュビ半島はどこの国にも属しない中立地帯であることから国から国へと船を出す際の中継地点としてもだが鉱石を売り出したりするのにも都合がよく、大小問わず各国の人々に重宝されていて港町も人の集まりがよくて賑わいを見せる場所である。



・・・そんな島にかつてない事態が起こった。それはアクゼリュスの中から紫色の霧・・・後に障気と呼ばれる毒が街を覆うように出てきたのである。

最初の頃は不気味がっていた住民も大して何も起こらない事に拍子抜けしたが、徐々に体調を崩していく人々が出てきた事に恐怖を抱き各国へと救助を願い出た。その呼び掛けに各国の代表はすぐに応え、救助の為の一団にアクゼリュスの異常の理由を調べる調査団を出す事を決断した。












「・・・はいこれ、調査結果ね。ハロルドとも話し合ったけど、やっぱり障気をすぐにどうこうってのは難しいわ。鉱山の奥から障気は出てるっぽいし、大元の根っこをどうにかしないとまず人が住む環境には出来ないわね」
「そうなんですか・・・」
とある船の展望室・・・そこでリタから紙を受け取りながら聞かされた話にエステリーゼ、通称エステルは背後に各国の代表を背にしながら表情を辛そうに歪めていた。



・・・各国の決定から数日後、各国からの救助団はキュビ半島に辿り着いた。しかし各国々から人々が来ていて、中には王位継承権を持つ者もいる。そんな状況でちゃんとした決まりもなく、雑然と動いていい物だろうか?と、そういった声が上がった。

そんな声を受けて様々に話し合う内に、こういった案がでた。それは各国の代表及びそれに近しい者達は依頼で来ていたアドリビトムというギルドの各国の船と形状が著しく違うバンエルティア号を目印としても分かりやすいし、中立な立場でもあるからそこを間借りして使わせてもらい、代表達の本部としてはと。

それでアドリビトムのリーダーのアンジュという女性に話をした時は最初はいい顔をされなかったが、使用料の提示に各国入り乱れていて更にギルドと言った面々が好き勝手に動くのは逆に非効率的だから情報の共有に意志の統一は必要なことだと言えば、了承を返してくれた。彼女もその辺りは大事な事だと理解してくれたのだ。

・・・故にそう言った理由でアドリビトムというギルドの船であるバンエルティア号を使っているのだ、代表達は。そしてその代表達の中にはアンジュもいる・・・彼女の責任感を買われる形で。



「ま、障気をどうするにしたってこの状況じゃ症状に犯されてる人も十分に休めないでしょうし、街に人が溢れかえったらそこに住んでる人もどうしていいか分からないでしょ。だから話に出てたように住民を事態が沈静化するまで各国で預かるって方向性で進めた方がいいわよ。じゃないと色々面倒になるのは目に見えてくるし」
「やはりそうした方がいいか・・・」
「後でピオニー陛下に手紙を出さねぇとな・・・」
続けてリタが住民の預かりを勧めると代表の一人であるウッドロウは悲しげに顔をうつむき、同じく代表の一人であるルークはいつもの強気な態度は鳴りを潜め静かに呟く・・・ルークからしてもこの問題は変に茶化せない事もあるし、周りの面子の真剣さもあって空気につられた部分もあるが真剣にならざるを得なくなっていた。









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