蔵馬をルークの義理の兄にしたらこうなった 掌握・策謀・攻勢
「それにしばらくの間六神将はこのバチカルの牢に入らなければならん。もしアッシュが件の約束の事を殿下のように覚えていたなら、最悪の事態になることも考えられるからな。何かの偶然で六神将と顔を合わせた時、昔の殿下だったら何を持ってしてでもアッシュを助けようとしたかもしれん」
「ですがそれも今となっては可能性は相当低いでしょう。今の殿下に当時の詳細な記憶はなく、例え自分が本物だとアッシュが言っても身を挺してまで助けようとは思わないはずです。今の殿下は事情を知ったところで精々少しアッシュに同情して、それ以降は彼を見放すものと思われますから」
そんなナタリアについての話の流れからアッシュを再び話題に上げる公爵に、これ以降は再会してもアッシュに救いはないだろうと自信を覗かせ断定する。
・・・ナタリアはアッシュとの記憶を奪い性格を改竄した後は以前の気の強さは成りを潜め、物腰穏やかながらも凛とした一本芯の通った正に淑女と呼べる姿へと変わっていた。きちんと物事には道理を通し、政務に関しても以前のよう予定のないファブレ邸来訪などのイレギュラーを唐突に行動に移すこともなく大人しく予定通りの執務をこなす・・・そんな姿は正に王女と呼ぶに相応しいと一時はファブレ邸で軒並み下がっていたナタリアの評価も、一気にうなぎ登りとなった。
そしてそれはナタリアを更正させたとする蔵馬に対する評価が上がったものと同義でもあった。現にインゴベルトは直接蔵馬を呼び出し、その功績を褒め称えた。その性格は父親で国王であるインゴベルトすらも娘がかわいいとは言え時に手を焼くものだったのだから、余程酷かったと言えよう。
だがその代償として失ったものは、キムラスカに在りし日のアッシュと交わした約束という思い出・・・なのだが周りからすればその記憶はなくなってもらってありがたいという、周囲にとっては得な代償でしかなかった。現に損をすると見られるのは目下、アッシュ以外にいないのだから。
・・・もしナタリアが記憶がある状態で二人が今出会ったなら、まず間違いなく公爵の言ったようにナタリアがアッシュを助けようとするのは目に見えている。それも周りがいかに反対しようが、どのようにアッシュの罪があると言って聞かせても何も聞こうともせずに事を進めるだろう。その上でナタリアはアッシュが責められるのを避けるために悪いのは偽者としてファブレに来たルークが悪いと、責任転嫁も甚だしい事を堂々と言ってのけるだろう。それがどれだけ都合がいいことを言っていて、どれだけ愚かしいことを言っているかを考えることもせず。
だが今はナタリアにはアッシュとの記憶がなく、その事から『記憶を持つルーク』に対してのこだわりも自然と消えていた・・・人という物は妙な物で好きだった物でも、一度その対象物に対する見方が変われば好きが嫌いに容易に変わる稀有な生き物である・・・今のナタリアは考え方が変わったことで屋敷にいるルークを個人として見るようになりそれなりに以前より良好な関係を築いており、記憶にこだわってはいない。むしろ今まで何故過去の記憶にこだわっていたのかわからない、とまで言うほどだ。そんな今のナタリアは王族としての正しい感覚を持ち分別も人並みにあり、時には冷酷な判断を下せる決断力もある・・・そのナタリアにアッシュが何かの偶然で会い、約束だなんだと言った所で多少揺るぐことはあっても最終的にはキムラスカ及びファブレの判断に従うと蔵馬達は見ていた。そしてそうなった時がアッシュの心が最期の時だろうと・・・
「確かに今の殿下ならそうなるだろう・・・そしてそういうお前ならこれも分かっているだろうが、今殿下に元に戻られて困るのは私達なのだ。何か余程の事が無ければ殿下を元に戻すな。お前なら分かっているとは思っているがな」
「はい、わかっています」
・・・そんな状況で今更ナタリアを元に戻されれば、ただ迷惑になるだけ。
公爵は元に戻すかと聞いた蔵馬に心底から重ね重ね戻すなと念を押し、蔵馬も余程でなければ戻す気はなかったのですぐさま頷いた。
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「ですがそれも今となっては可能性は相当低いでしょう。今の殿下に当時の詳細な記憶はなく、例え自分が本物だとアッシュが言っても身を挺してまで助けようとは思わないはずです。今の殿下は事情を知ったところで精々少しアッシュに同情して、それ以降は彼を見放すものと思われますから」
そんなナタリアについての話の流れからアッシュを再び話題に上げる公爵に、これ以降は再会してもアッシュに救いはないだろうと自信を覗かせ断定する。
・・・ナタリアはアッシュとの記憶を奪い性格を改竄した後は以前の気の強さは成りを潜め、物腰穏やかながらも凛とした一本芯の通った正に淑女と呼べる姿へと変わっていた。きちんと物事には道理を通し、政務に関しても以前のよう予定のないファブレ邸来訪などのイレギュラーを唐突に行動に移すこともなく大人しく予定通りの執務をこなす・・・そんな姿は正に王女と呼ぶに相応しいと一時はファブレ邸で軒並み下がっていたナタリアの評価も、一気にうなぎ登りとなった。
そしてそれはナタリアを更正させたとする蔵馬に対する評価が上がったものと同義でもあった。現にインゴベルトは直接蔵馬を呼び出し、その功績を褒め称えた。その性格は父親で国王であるインゴベルトすらも娘がかわいいとは言え時に手を焼くものだったのだから、余程酷かったと言えよう。
だがその代償として失ったものは、キムラスカに在りし日のアッシュと交わした約束という思い出・・・なのだが周りからすればその記憶はなくなってもらってありがたいという、周囲にとっては得な代償でしかなかった。現に損をすると見られるのは目下、アッシュ以外にいないのだから。
・・・もしナタリアが記憶がある状態で二人が今出会ったなら、まず間違いなく公爵の言ったようにナタリアがアッシュを助けようとするのは目に見えている。それも周りがいかに反対しようが、どのようにアッシュの罪があると言って聞かせても何も聞こうともせずに事を進めるだろう。その上でナタリアはアッシュが責められるのを避けるために悪いのは偽者としてファブレに来たルークが悪いと、責任転嫁も甚だしい事を堂々と言ってのけるだろう。それがどれだけ都合がいいことを言っていて、どれだけ愚かしいことを言っているかを考えることもせず。
だが今はナタリアにはアッシュとの記憶がなく、その事から『記憶を持つルーク』に対してのこだわりも自然と消えていた・・・人という物は妙な物で好きだった物でも、一度その対象物に対する見方が変われば好きが嫌いに容易に変わる稀有な生き物である・・・今のナタリアは考え方が変わったことで屋敷にいるルークを個人として見るようになりそれなりに以前より良好な関係を築いており、記憶にこだわってはいない。むしろ今まで何故過去の記憶にこだわっていたのかわからない、とまで言うほどだ。そんな今のナタリアは王族としての正しい感覚を持ち分別も人並みにあり、時には冷酷な判断を下せる決断力もある・・・そのナタリアにアッシュが何かの偶然で会い、約束だなんだと言った所で多少揺るぐことはあっても最終的にはキムラスカ及びファブレの判断に従うと蔵馬達は見ていた。そしてそうなった時がアッシュの心が最期の時だろうと・・・
「確かに今の殿下ならそうなるだろう・・・そしてそういうお前ならこれも分かっているだろうが、今殿下に元に戻られて困るのは私達なのだ。何か余程の事が無ければ殿下を元に戻すな。お前なら分かっているとは思っているがな」
「はい、わかっています」
・・・そんな状況で今更ナタリアを元に戻されれば、ただ迷惑になるだけ。
公爵は元に戻すかと聞いた蔵馬に心底から重ね重ね戻すなと念を押し、蔵馬も余程でなければ戻す気はなかったのですぐさま頷いた。
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