蔵馬をルークの義理の兄にしたらこうなった 掌握・策謀・攻勢

「それにお前の自白剤のおかげで六神将から首謀者が表向きはモースで、本当の首謀者はヴァンだと言質が取れたのは大きかった。そして六神将のシンクから現在の導師が自分と同じレプリカであると聞けたのも、それ以上に大きなポイントだ。この事をうまく使いダアトに非礼及び暴挙を詫びさせることが犠牲になった者達へのせめてもの供養となる・・・そうではないか?」
「・・・そうですね。すみませんでした、義父上」
そして公爵の更なる励ましに蔵馬は気を取り直して頭を上げる。



・・・六神将がバチカルに来て牢に入れられた後、蔵馬はその暗示を解いた上で代わりに自白剤として粉末にした植物の粉を六神将達に飲ませた。そこで意識を失ったように虚ろな目をした六神将達に蔵馬は色々と問い質し、ヴァンとモースの関係を洗いざらい白状させた・・・それも、椅子に縛り付けた二人の前で。

何故そうしたのかと言えば六神将からこんな話を聞いたと言っても何だかんだ言い訳をして逃れようとするかもしれない二人(特にモース)へ向けた、黙秘が無駄だとの言葉なき宣告であった。いかに自分は関係無いと誤魔化そうとした所で強引に意志を奪われ口を開かされるとなれば、否応なしに理解するだろう。事実ヴァンはもう諦めがついたのかただうなだれ質問に力なく答えるだけになり、モースに至ってはヴァンに影で利用されていたという事実も聞いた上なので誰も味方がいないことを理解して、途端にガタガタと震えだし命乞いをしてきた。『もう預言達成など望まん、だから命だけは助けてくれ』と。

・・・この時蔵馬は六神将が犯した行動及び導師にティアの取ってきた行動の責任を丸々償わせると言ったから、その責の重さからどうあがいても自分は助からないと感じてのあがきだと感じた・・・だからこそ蔵馬はあえて言葉少なくこう一言で返した。『何故だ?』と。だが心底から向けられる冷たく凍てつくような視線に、モースは何度もめげずに言葉を変えながら命乞いをしてきた。

が、その度に文脈が繋がろうとそうでなかろうと同じ一言で切って返す蔵馬に、モースは何度目かの返答を受け唐突に衝撃を受けたようにいきなりプツリと頭を落とし愕然として何も言わなくなった・・・その徹底した一言で理解して絶望したのだろう。絶対に蔵馬が自分を逃さないことを。それ以降はもう蔵馬に何かを言うことなくブツブツと何かを呟く以外にモースはしなかった。

そしてシンクに関してだがタルタロスで暗示をかけた時よりその正体については知っていたので導師との関係性はと改めて問えば、自分と同じ被験者のレプリカだが向こうの方が出来がよかったため今のイオンになれたとの供述が取れたことでまた蔵馬はダアトに対して有力な材料を得られたと確信していた。それもイオンにだけピンポイントで向けれる刃の材料として。

・・・もしシンクの事を知っていたり勘づいているのなら、シンクの事を匂わせるだけで導師は動揺する。そうでなくとも後々で直に真実を突き付ければ導師自身に多大なプレッシャーをかけれる。つまりはどう転んだ所でこちらには害はない・・・そんな考えを浮かべた蔵馬はいずれまた来るであろうイオンに対し、この刃をどう向けていくかを思案していた。









・・・そんな思案の結果を総合して送られることになったのが数日後にケセドニアに届くことになった、手紙と仮面である。仮面から自身がレプリカであると知られたとイオンが思うかどうかは分からないが、その二つを送られて尚も能天気な事を仕出かしてくれるならどちらとも交渉にすら値しない国と認定してやる・・・蔵馬はそう考えてケセドニアにその二つを送ったのだ。両国の試しの判断材料として。










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