蔵馬をルークの義理の兄にしたらこうなった 掌握・策謀・攻勢

「・・・とは言えシュザンヌには酷な事をしたが、あれを諦めてもらうためにもあの方がよかったのだろうな」
「・・・今は俺の薬で体は良くなったとは言え元々精神的な理由でも体調を崩しやすい人でしたから、ただアッシュを放逐したとなれば心労を患っていたでしょう・・・そう思えば直々に別れを告げられたことは辛くとも、早く立ち直る為には必要なことでした」
「うむ・・・」
しかしアッシュを試していたと言ってもシュザンヌに実の息子を拒否する場面に居合わせさせたことは、少し二人にとって心苦しいものがあったのも事実であった。



・・・夫妻の部屋にてシュザンヌがあのようにアッシュに話しかけたのは、二人にとっては予想外であった。あの場はあくまで公爵がアッシュの真意を質すことで成り立つ物だったが、シュザンヌ自身が悲しみを浮かべながら公爵が聞くはずだった問いかけをしたことに内心少し驚いていた。とは言えそこは上手く演技で合わせようと公爵は最後辺りはシュザンヌに合わせるよう、同じく悲嘆に暮れているといった具合に合わせはしていたが・・・そこに二人はある想いを抱いていた。



「・・・今思えば義母上も何処と無く、察していたのでしょうね。俺達がアッシュを試していたことを。だからああやって、自ら辛い中でアッシュを追い詰めていった・・・」
「・・・有り得ん話ではないな。先程執拗にアッシュの真意を訪ねていた時があったが・・・お前の報告を受け、どこかで思っていたのだろうな。アッシュに対し自分が情けないと思うと同時に、私達がアッシュを見限ろうとしているのではないかと・・・だからこそシュザンヌは自らの手で逃げ場を無くしてやっていったのだろうな・・・」
そんな中で実はシュザンヌは分かっていたのではという推測を向ける蔵馬に、公爵自身も引っ掛かっていたと言い複雑そうな表情になる。
・・・そう、ある想いとはそこにシュザンヌが自分達の行動の意図を理解しているのではという物であった。その上で自分達に協力したのではと、そう二人は共通した想いを抱いていた。
「・・・義父上、この後は出来る限り義母上をいたわってあげてください」
「・・・うむ、わかっておる」
そんな心当たりがあるからこそ、自分から息子に引導を渡したその心中は推し量れない物がある・・・そう思った蔵馬は言葉少なくもシュザンヌを気遣うように公爵に言えば、公爵も素直に従うと頷く。
・・・いかに息子が愚かなことをしたとてそれだけで心中から軽々と全て存在そのものを捨てきれる程、シュザンヌは薄情なタチではない。むしろ慈愛溢れる情の持ち主だ。そのシュザンヌにすぐにアッシュの事を忘れろなど無理がある・・・故に公爵は蔵馬の言葉をすんなりと受け止めたのだ。アッシュの正体を含めたその全ては誰にも言えない為にその悲しみを夫として受け入れることを・・・
「・・・とは言えまだお前から話を聞かねばならん。もう少し付き合ってもらうぞ、クラマ」
「・・・はい、わかりました」
だがまだ公爵としての顔が必要だと思い直したのか、表情をまた一新して引き締める公爵に蔵馬も頷く。











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