蔵馬をルークの義理の兄にしたらこうなった 掌握・策謀・攻勢

・・・そんなケセドニアにて和平の使者一行+αにとって残酷な事実を知らされた時から少し遡って、数日前のバチカルの中にあるファブレ邸の公爵夫妻の一室である修羅場が出来上がっていた。









「・・・気分はどうだ、アッシュ。いや、今は『ルーク』と呼ぼうか・・・」
「・・・父上・・・」
・・・縄できつく縛られ床に膝だちの状況で座らされているアッシュ。いや正確には本物の『ルーク=フォン=ファブレ』の背後にいる蔵馬が抜け目なくその動向を伺うなか、目の前にいる両親の内の父親から厳格な声を投げ掛けられアッシュは苦みばしった表情になる。
「ダアトを調べていたクラマより全て聞いた・・・六神将として動くお前の事を。お前がファブレを離れたのは死の詠まれた預言の回避の為、ヴァンに付いていった・・・それで間違いないな?」
「・・・はい・・・ですが俺はファブレに戻りたいと思ってました。けれどあの屑がここに来たと知らされ、俺は・・・!」
「何故お前がルークを罵れる?」
「・・・え・・・?」
そんなアッシュを見下ろしながら蔵馬が調べたというダアトに行ってからの行動を確認すれば、それを認めつつもルークを屑呼ばわりしながらルークのせいで帰れなかったのだと言いかける。だが公爵の冷たく心底からの疑問の声が向けられ言葉が止まった。
「お前はルークが身代わりとしてここに送られてきた事をよく知っていたはずだ。お前が死ぬのを避ける為にな。なのにそんな存在に対し何故お前は罵れる?・・・答えよ」
「それは・・・俺の、居場所を奪ったから・・・」
「ならばお前は死を覚悟でファブレに戻り、『ルーク=フォン=ファブレ』として死ぬことを選ぶために戻らねば道理に合わんぞ。居場所を奪われた怒りと言うのであれば、そうでもしなければお前の言葉には真実味がない・・・違うか?」
「・・・それは・・・」
ルークの存在を認めない理由は何か。そう問う公爵にアッシュは居場所を奪ったからと力なく言うが、怒りに行動がついてないと返され視線を背ける。そんなアッシュに公爵は空気を一気に変え痛ましげに顔を歪める。
「・・・考えてみればお前の気持ちはわからんでもない。死を望まれ私自身もその死をキムラスカの繁栄の為にと差し出すことにして、お前と向き合うことを放棄していた・・・そんな状態でこの家に戻りたいと思っても、いずれ殺されると思い戻れるとは思えなかったのだろう。違うか?」
「っ・・・・・・はい、その通りです・・・ですがだったら何故あの屑を排さず、今更になって俺を・・・それに何故こんな得体の知れないやつなんかをファブレに・・・?」
そこには息子の立場に自身の立場もあって本音を明かせなかった父親の姿があった。その初めて見せる弱い父親の姿にアッシュも弱く素直に肯定の声を上げるが、ルークを今もファブレに置いていることと蔵馬を義理の息子として受け入れている事に疑問の声を向けてくる。アッシュの中ではどうしても自身のレプリカであるルークと、王族の条件に当てはまるとは言え身元不確かな人間である蔵馬をファブレに置くことは受け入れられないのだろう。
・・・そんなアッシュにシュザンヌが歩み寄り、その頬に両の掌を優しく当てて包み込む。
「は、母上・・・?」
「・・・可哀想な子・・・これも私達が貴方に親子として接してあげなかったからでしょうか・・・このように敵意を剥き出しにして、関係無い二人に対して罵倒を続けるなど・・・」
「・・・っ」
シュザンヌの突然の行動に戸惑うアッシュだが、悲哀に満ちた瞳を真っ直ぐ顔を背けられない状態で向けられた事に体を震わせ身を引く・・・アッシュは無理矢理にでも顔を背けようと思えば純粋な力の関係から出来なくもなかった。だがそれはアッシュの中に選択肢として存在していなかった。母が自らさらけ出した弱さから目を背ければその母よりも弱いことを認めてしまうという事実を言葉にはせずとも心で感じていた為に・・・









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