蔵馬をルークの義理の兄にしたらこうなった 掌握・策謀・攻勢
「とは言えまだ少し用意に時間がかかるのは事実・・・その時が来たなら義父上達と共に陛下の元に参りたいと思いますので、まずは屋敷にて義父上達と当面の問題を片付けて参ります」
「・・・うむ、また来なさい」
・・・そんな蔵馬が指揮を取っている以上、マルクトとダアトに対する攻めの手は残っている。それもより苛烈な攻撃の手が。
しかし今はやるべき事は別の事からだとファブレ邸に戻るという蔵馬に、インゴベルトは義理ではあるが叔父としての顔を見せつつ送り出した。
(・・・今までのわしならけして預言を持って近付いてくるモースを手放そうとしなかったであろう。だがクラマの話は無視出来ない物だったからな・・・それを思えばモースを抱え続けるのも最早無理な領域に入っていた。それこそダアトを敵に回してもいいと思えるような領域にな)
そこでインゴベルトは昨日の蔵馬との二人きりの時の事を思い出す。告げられたその話の中身を。
(・・・それを思えばこのままダアトの無礼に目をつぶり続けるより、クラマの言に従った方がいい。例え預言による繁栄が無くなろうとも、より良くキムラスカが栄える道を選ぶならな・・・)
・・・その話があったからこそ自分はダアトより蔵馬を選べた。今までのダアトからの預言による支援が無くなろうともと。
・・・だがインゴベルトは今までの自分の考え方が急に変わったその明確な理由を知ることはなかった。蔵馬の才覚を恐れたのは事実ではあるが、それだけで自らの心変わりを説明することには繋がらなかった。ただそれを何も疑問に思うこともなく、考えることもないままこのままインゴベルトは進むだろう・・・蔵馬の傀儡の道を・・・
・・・バチカルの城から借りていた兵士の服を脱いで元の格好に戻って出た蔵馬。そこでファブレの家に戻ろうとした蔵馬はある光景を遠目に目撃する。
「・・・何をしに今更バチカルに戻った?」
「そ、それは・・・ルーク様にクラマ様の捜索を終えたので、バチカルに戻ったのですが・・・」
・・・ファブレの門の前、絶対零度の眼差しを持って後ろにイオン達を付けたガイを公爵は見据える。
「ほう?私はその様なことは聞いてはおらんぞ。そもそも貴様にはクラマにルークの捜索など命じておらん。むしろ私は待機を命じたではないか。それを貴様は話も聞かず勝手に二人の捜索に行くと屋敷を出ていった・・・なのに何故役目を命じられたかのよう堂々とそう言葉にしている?」
「そ、それは・・・」
おろおろと何とか言葉を紡ぐガイに公爵は二人の捜索など頼んでいないと突き放すように言えば、答えに窮してまたおろおろと目を動かす。
「公爵、その様にガイを責めないでいいのでは・・・?」
「何をおっしゃっている、導師?この男はティア=グランツと会い捕縛しなかったばかりか、のうのうと共になかむつまじそうにこのバチカルに戻ってきたではないか。私はそのような信じられん事を堂々としでかした者を許す気にはなれん」
「「「!!」」」
そこにイオンが恐る恐るガイを庇うように言葉を挟むが、先程謁見の間でインゴベルトより手痛すぎる批判の中身を彷彿とさせる言葉で返され二人に加えティアの顔が一斉に気まずそうに背けられた。
「何を思われてそこまで貴方がガイの肩を持つかは私には皆目検討もつきませんが、そもそも陛下よりどのように貴殿方の態度に不審を思ったか・・・それを聞かなかった訳でもありますまい。それなのにこの男は私の命令に従わなかった事はおろか、屋敷の襲撃犯をあろうことか再びこの屋敷に招こうとした。これはいよいよ持って許されることではないのですよ、導師」
「そ、それは・・・ティアが謝りたいと言ったのでせめて僕もその気持ちを汲んで、ガイにお願いをしたんです・・・」
「謝る?何を?既にクラマにルークの受けた非礼の数々は謝って許される領域をとうに越えていますし、それも陛下より聞かなかった訳ではないでしょう。それにそもそも動機はなんであれ、この屋敷を襲撃した者をファブレの者が易々と招待するとお思いか?・・・するわけがないでしょう、自分の家を武力を持って制圧した者など」
「「「・・・っ!」」」
そんなイオンを静かに批難する言葉をぶつけていく公爵に辛うじて反論を返すが、そんな行動を信じられるわけがないと更に一蹴されて返され三人は息を呑み項垂れてしまった。取り付くしまが完全にないことを理解してしまった・・・させられただけに。
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「・・・うむ、また来なさい」
・・・そんな蔵馬が指揮を取っている以上、マルクトとダアトに対する攻めの手は残っている。それもより苛烈な攻撃の手が。
しかし今はやるべき事は別の事からだとファブレ邸に戻るという蔵馬に、インゴベルトは義理ではあるが叔父としての顔を見せつつ送り出した。
(・・・今までのわしならけして預言を持って近付いてくるモースを手放そうとしなかったであろう。だがクラマの話は無視出来ない物だったからな・・・それを思えばモースを抱え続けるのも最早無理な領域に入っていた。それこそダアトを敵に回してもいいと思えるような領域にな)
そこでインゴベルトは昨日の蔵馬との二人きりの時の事を思い出す。告げられたその話の中身を。
(・・・それを思えばこのままダアトの無礼に目をつぶり続けるより、クラマの言に従った方がいい。例え預言による繁栄が無くなろうとも、より良くキムラスカが栄える道を選ぶならな・・・)
・・・その話があったからこそ自分はダアトより蔵馬を選べた。今までのダアトからの預言による支援が無くなろうともと。
・・・だがインゴベルトは今までの自分の考え方が急に変わったその明確な理由を知ることはなかった。蔵馬の才覚を恐れたのは事実ではあるが、それだけで自らの心変わりを説明することには繋がらなかった。ただそれを何も疑問に思うこともなく、考えることもないままこのままインゴベルトは進むだろう・・・蔵馬の傀儡の道を・・・
・・・バチカルの城から借りていた兵士の服を脱いで元の格好に戻って出た蔵馬。そこでファブレの家に戻ろうとした蔵馬はある光景を遠目に目撃する。
「・・・何をしに今更バチカルに戻った?」
「そ、それは・・・ルーク様にクラマ様の捜索を終えたので、バチカルに戻ったのですが・・・」
・・・ファブレの門の前、絶対零度の眼差しを持って後ろにイオン達を付けたガイを公爵は見据える。
「ほう?私はその様なことは聞いてはおらんぞ。そもそも貴様にはクラマにルークの捜索など命じておらん。むしろ私は待機を命じたではないか。それを貴様は話も聞かず勝手に二人の捜索に行くと屋敷を出ていった・・・なのに何故役目を命じられたかのよう堂々とそう言葉にしている?」
「そ、それは・・・」
おろおろと何とか言葉を紡ぐガイに公爵は二人の捜索など頼んでいないと突き放すように言えば、答えに窮してまたおろおろと目を動かす。
「公爵、その様にガイを責めないでいいのでは・・・?」
「何をおっしゃっている、導師?この男はティア=グランツと会い捕縛しなかったばかりか、のうのうと共になかむつまじそうにこのバチカルに戻ってきたではないか。私はそのような信じられん事を堂々としでかした者を許す気にはなれん」
「「「!!」」」
そこにイオンが恐る恐るガイを庇うように言葉を挟むが、先程謁見の間でインゴベルトより手痛すぎる批判の中身を彷彿とさせる言葉で返され二人に加えティアの顔が一斉に気まずそうに背けられた。
「何を思われてそこまで貴方がガイの肩を持つかは私には皆目検討もつきませんが、そもそも陛下よりどのように貴殿方の態度に不審を思ったか・・・それを聞かなかった訳でもありますまい。それなのにこの男は私の命令に従わなかった事はおろか、屋敷の襲撃犯をあろうことか再びこの屋敷に招こうとした。これはいよいよ持って許されることではないのですよ、導師」
「そ、それは・・・ティアが謝りたいと言ったのでせめて僕もその気持ちを汲んで、ガイにお願いをしたんです・・・」
「謝る?何を?既にクラマにルークの受けた非礼の数々は謝って許される領域をとうに越えていますし、それも陛下より聞かなかった訳ではないでしょう。それにそもそも動機はなんであれ、この屋敷を襲撃した者をファブレの者が易々と招待するとお思いか?・・・するわけがないでしょう、自分の家を武力を持って制圧した者など」
「「「・・・っ!」」」
そんなイオンを静かに批難する言葉をぶつけていく公爵に辛うじて反論を返すが、そんな行動を信じられるわけがないと更に一蹴されて返され三人は息を呑み項垂れてしまった。取り付くしまが完全にないことを理解してしまった・・・させられただけに。
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