命に差はない、だが意識に差はある

長老からミュウを通訳としてつけられた一行は、ライガの現在住んでいる場所へとたどり着いた。





「あれ・・・もしかして長老が言っていた人間ですか?けれどルークほどの体格というには少し・・・」
ライガの住家にたどり着き、ティアが目にしたのはライガの横に誰か白いローブを纏った人物がいるというもの。しかし長老からの話にあったルークくらいの背格好には少し小さく、どちらかと言えばイオンに近い。
「・・・あなたがたは・・・あぁ、あなたが導師イオンとルーク・フォン・ファブレですか」
するとライガの横にいた白いローブを着た人物がイオン達に気付いたようで、三人を見てすぐにティア以外の二人の正体に気付く。
「あなたは何者なの?一体ライガといるなんて」
「答える義理はない・・・って言いたいところですけど、敢えていうならクイーンの友達の友達です。ですが、そこのチーグル。これは一体どういうことですか?食糧と仮の住家を提供しなければいけない身分だというのに、明らかに害意を持った人間をここに連れてくるとは」
チーグルの下りからローブの人物の声が一層冷えたものに変わる。
「ミュ、ミュウ・・・」
「ちょっと!何を言うの!?私達はチーグルの為にここに来たのよ、ミュウは悪くはないわ!」
「あなたは神託の盾のようですが、チーグルの話を聞かなかったのですか?」
「聞いたわ!けれど火事は事故よ!その程度でチーグルに負担をかけることないじゃない!」
「・・・はぁ、話になりません」
ティアの言葉は明らかにチーグルだけを見たライガの行動への憤りから来ている、ローブの人物は溜め息を禁じえなかった。
「あなたがたがライガの退治に来たというならさっさと帰ってください。友達からの報告ではそろそろ森が再生したからこちらに向かうとのことですので、僕らはそちらに向かいます。だからもう僕たちに関わる必要はないでしょう」
やる気の無さを隠しもせずにローブの人物は手をヒラヒラ振り、帰れ帰れと露骨に表す。
「そうは行くか!テメェらのせいで俺は盗っ人だとか言われたんだ!落とし前はつけてもらうぞ!」
そこにルークの怒声が殺気混じりに放たれる。それと同時にクイーンは殺気に対して対抗するように、ムクッと体を起き上がらせて威嚇の声をグルルッと三人に向けて放つ。



「・・・クイーン、あなたが戦う必要はありません」
ローブの人物はクイーンの横顔を触り、なだめる。
「・・・代わりに僕がこの一方通行思考者達に制裁を喰らわせますから」
その言葉にはルークよりもクイーンよりも深い殺気が込められている、明らかに実力差が見える殺気の在り方にルークとティアは畏怖の念を感じた。
「覚悟してください、僕はそこの甘ったれ導師ほど優しくありませんよ」
ジリッと一歩踏み締める。ルーク達は勝ち目がないと無意識に判断したのかローブの人物が踏み込んだだけ後ろに下がる。




「何を戯れているんだ、シオン」





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