蔵馬をルークの義理の兄にしたらこうなった 掌握・策謀・攻勢
「・・・ですがそのような行動には意味がありません。こちらには向こうの想定していない更なる手がございます」
・・・その上でインゴベルトに、まだ手はあると告げる蔵馬。
「・・・それを見せなかったのは、確か後々に備えてとのことだったか?」
「はい。向こうはこちらの非礼に対する怒りを切り札と見るでしょう・・・ですが今度見せるのは更なる奥の手ですから、向こうはろくな反応も出来ずに右往左往することでしょう。想定していない手が出てきた上に、それが絶大な効果をもたらすのですから」
「・・・恐ろしい男よ。そなたに味方して良かったと改めてわしは思っておる」
「お褒めに預かり、光栄です陛下」
その更なる奥の手についても話し合った上で聞いているインゴベルトだったが、そこにあった自信に加えて冷酷さを覗かせた笑みに冷や汗を浮かばせながら素直に畏怖を口にする。当の本人蔵馬が害意無く礼で返すが、それでもインゴベルトの冷や汗は止まらなかった。
切り札は先に見せるな、見せるなら更に奥の手を見せろ。これは蔵馬が黄泉に向けて言っていた、己の戦いに置ける持論である。とは言え今の状況にそれは当てはまらないのではないかと思われるが実はそうではない・・・今の状況はその持論の最も足るものなのである。
・・・かつて蔵馬が再び魔界に赴き黄泉の陣営についた時、当時のNo.2であった鯱という者がいたがその鯱は自身の地位を脅かす者として蔵馬を忌み嫌った。何故かと問われればそれは蔵馬の回りすぎる程の頭に加え、黄泉の陣営に鯱を上回る実力者となった陣達を引き込んだからだ。その功績が自身の黄泉陣営No.2という地位を脅かす事から、鯱は蔵馬を内密に処刑することを選んだ。陣達にも黄泉にも目の届かない所で、蔵馬の妖力が自分に遥かに及ばない事を確認した上で・・・だが鯱は蔵馬に敗れて死んだ。妖狐になるという更なる奥の手を使われた事で。
この時蔵馬はハナから妖狐になって鯱を殺そうと思えば殺せたし、陣達に頼めば鯱を片付けてもらうことも出来た。だがそれをしなかったが、それは何故か?・・・それは鯱を楽に殺すこととはならないからである。もし最初から妖狐状態だったなら蔵馬を警戒した鯱は別のやり方を選んだであろうし、自分以上の強さを持つ陣達を相手にするなどそれこそ鯱は回避しようとしただろう。だからこそ蔵馬は選んだのだ。陣達という切り札がないように見せ掛け自身の妖狐化という更なる奥の手を持って殺すと。
・・・今の状況が鯱の時と全く同じとは言わないが、それでも強力な切り札をちらつかせられたら当然マルクトにダアト側は慌てるだろう。そうなればマルクトにダアトもこの状況打開に何か手を打ってくるだろうが、その時更に予期しない手を打たれたらどうなるか?・・・鯱のように成す術なく、攻撃を受けるしかなくなるだろう。マルクトにダアトは。
・・・切り札とは蔵馬にとって、その実は真からの切り札ではない。表面上に見せる物をさもそれが最後の切り札と見せようとする物が、蔵馬にとっての切り札なのだ。まず間違っても切り札だと喧伝して、それが本当に最後の対抗の手段となるようなものではない。あくまで最後に繋げる騙しの為の手札であり、決め手の為の前置きの手段である。事実そうやって蔵馬は劣勢からの戦いを覆していった。玄武の時然り暗黒武術会の時然り・・・つまりはあくまでインゴベルトに告げさせた言葉の数々は蔵馬にとって切り札でしかないのだ。更なる奥の手を出すための・・・
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・・・その上でインゴベルトに、まだ手はあると告げる蔵馬。
「・・・それを見せなかったのは、確か後々に備えてとのことだったか?」
「はい。向こうはこちらの非礼に対する怒りを切り札と見るでしょう・・・ですが今度見せるのは更なる奥の手ですから、向こうはろくな反応も出来ずに右往左往することでしょう。想定していない手が出てきた上に、それが絶大な効果をもたらすのですから」
「・・・恐ろしい男よ。そなたに味方して良かったと改めてわしは思っておる」
「お褒めに預かり、光栄です陛下」
その更なる奥の手についても話し合った上で聞いているインゴベルトだったが、そこにあった自信に加えて冷酷さを覗かせた笑みに冷や汗を浮かばせながら素直に畏怖を口にする。当の本人蔵馬が害意無く礼で返すが、それでもインゴベルトの冷や汗は止まらなかった。
切り札は先に見せるな、見せるなら更に奥の手を見せろ。これは蔵馬が黄泉に向けて言っていた、己の戦いに置ける持論である。とは言え今の状況にそれは当てはまらないのではないかと思われるが実はそうではない・・・今の状況はその持論の最も足るものなのである。
・・・かつて蔵馬が再び魔界に赴き黄泉の陣営についた時、当時のNo.2であった鯱という者がいたがその鯱は自身の地位を脅かす者として蔵馬を忌み嫌った。何故かと問われればそれは蔵馬の回りすぎる程の頭に加え、黄泉の陣営に鯱を上回る実力者となった陣達を引き込んだからだ。その功績が自身の黄泉陣営No.2という地位を脅かす事から、鯱は蔵馬を内密に処刑することを選んだ。陣達にも黄泉にも目の届かない所で、蔵馬の妖力が自分に遥かに及ばない事を確認した上で・・・だが鯱は蔵馬に敗れて死んだ。妖狐になるという更なる奥の手を使われた事で。
この時蔵馬はハナから妖狐になって鯱を殺そうと思えば殺せたし、陣達に頼めば鯱を片付けてもらうことも出来た。だがそれをしなかったが、それは何故か?・・・それは鯱を楽に殺すこととはならないからである。もし最初から妖狐状態だったなら蔵馬を警戒した鯱は別のやり方を選んだであろうし、自分以上の強さを持つ陣達を相手にするなどそれこそ鯱は回避しようとしただろう。だからこそ蔵馬は選んだのだ。陣達という切り札がないように見せ掛け自身の妖狐化という更なる奥の手を持って殺すと。
・・・今の状況が鯱の時と全く同じとは言わないが、それでも強力な切り札をちらつかせられたら当然マルクトにダアト側は慌てるだろう。そうなればマルクトにダアトもこの状況打開に何か手を打ってくるだろうが、その時更に予期しない手を打たれたらどうなるか?・・・鯱のように成す術なく、攻撃を受けるしかなくなるだろう。マルクトにダアトは。
・・・切り札とは蔵馬にとって、その実は真からの切り札ではない。表面上に見せる物をさもそれが最後の切り札と見せようとする物が、蔵馬にとっての切り札なのだ。まず間違っても切り札だと喧伝して、それが本当に最後の対抗の手段となるようなものではない。あくまで最後に繋げる騙しの為の手札であり、決め手の為の前置きの手段である。事実そうやって蔵馬は劣勢からの戦いを覆していった。玄武の時然り暗黒武術会の時然り・・・つまりはあくまでインゴベルトに告げさせた言葉の数々は蔵馬にとって切り札でしかないのだ。更なる奥の手を出すための・・・
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