蔵馬をルークの義理の兄にしたらこうなった 掌握・策謀・攻勢

「えっ・・・っ!?」
「・・・っ!」
・・・インゴベルトより放たれた言葉にジェイドは静かに目を見開き、イオン以下の他の面々は驚きつつも戸惑うばかりだった。察するに純粋にその行動の意味のまずさを理解出来ているのはジェイドくらいのものだろう。
「確かエンゲーブよりカイツールに二人が向かう道中で貴様らはタルタロスを用い、二人を脅迫する形でタルタロスに乗せたのだったな?」
そんな状況で明らかに怒りと共に見下したような色を灯した声がイオン達に向けられる。
「それで貴様らは先に乗っていたティア=グランツと共にクラマ達に和平への協力を願い出た、とのことらしいな?協力しなければ機密保持の為に軟禁する、と言う脅しをつけてな・・・結果クラマにルークは貴様らの脅迫に屈する事を選ばず、幽閉される道を選んだとのことだがな」
「・・・それは・・・」
「それはあの二人が勝手に選んだことです!大佐にイオン様は和平の為に尽力しているのに、そんなわがままを言うから大佐はしかるべき処置を取ったまでです!」
「・・・ティア・・・!」
「・・・ほう」
その声のまま蔵馬達が取った行動を述べ上げていくインゴベルトにジェイドはなんとか言い訳の声を上げようとするが、途端に後ろにいたティアがその声を遮りあろうことか二人を批難する言葉を盛大にぶちまけた。その事にジェイドがティアを苛立ちを込めた瞳と声を静かに向けるが、インゴベルトの瞳と声は対称的に静かに冷やかに向けられる。
「それはそなたは二人が間違っていたから当然の結果だ、と言いたいのだな?」
「そう言っています!」
「・・・っ!」
そしてティアにその真意を尋ねるように質問すれば間髪入れず即答した、蔵馬とルークが間違っていたのだと。その答えにジェイドの表情に瞬時に焦りが浮かぶが、もう誤魔化すには遅すぎた。
「そうか・・・ならキムラスカがクラマとルークの処置について異議を唱え、和平を拒絶するのも間違いだとそう言いたいのだな?」
「そう「ティア!!」・・・大佐?」
「お願いします、これ以上何も言わないで「もう遅い」・・・っ!」
更に今度は自分の判断も誤りかと問えばまた即答で肯定しようとしたティアに、ジェイドが焦って大声で先を言わせるのをやめさせるが当の本人は何故止めると訝しげな視線を向ける。そこに懇願の声を出し制止を求めるがインゴベルトの更なる声にジェイドはその言葉を止めざるを得ず前を向かざるを得なかった。
「そうかそうか、わしに二人が誤っていると言うか・・・ならいいだろう。別に貴様に正しいなど思われなくても構わん。キムラスカはマルクトとの和平になど興じる事はない。ダアトの仲介などそれこそもっての他だ。何せ貴様らはキムラスカの王族である我らを否定したのだ・・・そのような者達と時を共にしたくはない」
「「「「!!」」」」
そこにあったのは冷徹な顔を見せるインゴベルトの徹底した両国への否定も含めた和平への否定だった。その言葉にイオン達全員の目が驚愕に見開かれた。
「何を驚いておる?そこのティア=グランツは我々を否定したのだ。クラマ達の受けた仕打ちを不当とする我々の言い分をな。それはすなわち我々には言うことを聞く以外に選択肢はないと押し付けているのと同義だ。そんな強制を押し付けるような者達に従う程キムラスカは落ちぶれてはいない」
「あ・・・で、でも、それはあくまで二人がわがままを言ったからで・・・わ、私はキムラスカを否定なんて・・・」
「自分で言ったことも忘れ、わしが言ったことも聞き忘れたのか貴様は?我々は王族だ、キムラスカのな。断れば潰すと言う力を用いた脅迫を受け、キムラスカの王族がマルクトの力に屈したなどという事実などあってはならんと考えたから、二人はキムラスカの王族としてその申し出とやらを拒否したのだ。それをわがままだと?・・・わしは力に屈さず王族としての矜持を守った二人を誇りこそすれ、嘲りはせん。だが貴様はその行動をわがままと言い放ち果てはわしまでもを否定した・・・王族の矜持を否定するような者など、信じるに値せん」
「・・・っ!」
そこにティアの行動を王族として受け入れられないとインゴベルトは言うが、ティアは個人に向けてでそんなつもりでなかったと今更に自分の行動の言い訳を震えながら紡ぐ。が、それこそ逆鱗であるとインゴベルトが王族の矜持を口に出した正論の反論にティアは返す言葉を無くし顔を青ざめさせながらガタガタと震え出した。流石に自身の発言でキムラスカの王の不興を買い、和平が不意になるとなってしまったらと思い恐怖しているのだろう。









8/34ページ
スキ