蔵馬をルークの義理の兄にしたらこうなった 掌握・策謀・攻勢
「・・・さて、ご苦労であった。クラマ、ルーク」
その姿が場からいなくなったのを見届けた所で、インゴベルトの声が蔵馬達に向けられ四人は視線を戻す・・・と同時に蔵馬の瞳が真剣に細められる。
「そなたたちもバチカルに戻ったばかりで疲れておるだろう。今日はもう下がってよいぞ」
「陛下、下がる前によろしいでしょうか?」
「む・・・なんだ、クラマ?」
二人を気遣い場を終わらせるようにしたインゴベルトだが、唐突に蔵馬が一歩前に出て上げた声に首を傾げる。
「出来れば今宵、陛下の私室に伺ってもよろしいでしょうか?余人を交えずお話したい事がございます」
「む・・・今この場では駄目なのか?」
「その話はあくまで私的な物です。このような公の場で発言すべき物ではありません。ですので私室に伺いたいのですが・・・」
「ふむ・・・そなたがそう言うのだ。何か大事な話なのだろう。わかった、兵にはそなたが来ると伝えておくので下がりなさい」
「ありがとうございます。では失礼します」
その申し出とは後で話がしたい、とのこと。何故そんなことをと問うインゴベルトにうやうやしくも私的な話だからと返せば、蔵馬の優秀さを知っているインゴベルトはすんなりと了承を返し退出を命じる。その返答に頭を下げルーク達と共に謁見の間を後にする蔵馬であったが、口元にはそっと笑みが浮かんでいた。
・・・そんなやり取りから数日が経ち、バチカルの地にある一行の姿があった。
「ではこちらに・・・」
「はい、ありがとうございます」
バチカル城の謁見の間に続く扉の前、セシル少将がこの先と手を出し一行に入るよう促す。一行の先頭にいたイオンはその声に礼を言って頭を下げると謁見の間に一行は入っていくが、その姿をセシル少将は冷やかに剣呑な視線で見送った・・・
「・・・導師よ、久し振りだな」
「はい、陛下。此度はマルクトより和平の仲介を頼まれ、バチカルに参りました」
・・・そして玉座に座っていたインゴベルトはイオン達の来訪に言葉をかけるが、その目と声には情はこもっていない。そんなことに気付かずイオンは笑顔で答え、書簡を取り出す。
「和平、か。聞いておるぞ、クラマにルークからマルクトが和平の為の使者を送ってきているとな」
「そうですか・・・」
「だが話を聞けば聞く程、マルクトとの和平に踏み切る気持ちという物が失われていったな」
「えっ・・・?」
「それに加えダアトの仲介、というのであれば尚更だ。はっきり言えば気乗りがせん」
「そっ、そんな!?」
・・・そんなイオンにインゴベルトははっきり告げる、マルクトとダアトを信じる気にはなれないと。そんな不信の声にイオンは信じられないと声を上げるが、隣にいたジェイドが一歩前に足を出す。
「・・・もし差し支えがなければ、その訳をお伺いしてよろしいでしょうか?」
「そなたはジェイド=カーティスか・・・原因はそなたにもあるというのに、それすらも理解していないそなたに言ってわかるとも思えんな」
「・・・っ」
その瞳が油断なく力を込めて細められるが、インゴベルトの返答には一切の気遣いに労いなどなくただ毒があるばかり。その事にジェイドの瞳がわずかに動揺で揺れる。
「ふん、まぁいい。遠路はるばるご苦労と本来なら言うところだが、今の現状でキムラスカがマルクトと和平に踏み切る気はない。早々と国に帰られるがよい」
「そんな・・・何故ですか!?話を聞かねば到底納得出来る物ではありません!その訳をお聞かせください、陛下!」
「・・・ふぅ」
そこに畳み掛けるようにさっさと帰れとおざなりに言い放つインゴベルトに、イオンが必死な声で訳を言って欲しいと訴えてくるが言われた当人は心底からのタメ息を吐く。
「クラマにルークを罪人扱いで牢に幽閉するような者共に何故我々が対等に接してやらねばならん?」
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その姿が場からいなくなったのを見届けた所で、インゴベルトの声が蔵馬達に向けられ四人は視線を戻す・・・と同時に蔵馬の瞳が真剣に細められる。
「そなたたちもバチカルに戻ったばかりで疲れておるだろう。今日はもう下がってよいぞ」
「陛下、下がる前によろしいでしょうか?」
「む・・・なんだ、クラマ?」
二人を気遣い場を終わらせるようにしたインゴベルトだが、唐突に蔵馬が一歩前に出て上げた声に首を傾げる。
「出来れば今宵、陛下の私室に伺ってもよろしいでしょうか?余人を交えずお話したい事がございます」
「む・・・今この場では駄目なのか?」
「その話はあくまで私的な物です。このような公の場で発言すべき物ではありません。ですので私室に伺いたいのですが・・・」
「ふむ・・・そなたがそう言うのだ。何か大事な話なのだろう。わかった、兵にはそなたが来ると伝えておくので下がりなさい」
「ありがとうございます。では失礼します」
その申し出とは後で話がしたい、とのこと。何故そんなことをと問うインゴベルトにうやうやしくも私的な話だからと返せば、蔵馬の優秀さを知っているインゴベルトはすんなりと了承を返し退出を命じる。その返答に頭を下げルーク達と共に謁見の間を後にする蔵馬であったが、口元にはそっと笑みが浮かんでいた。
・・・そんなやり取りから数日が経ち、バチカルの地にある一行の姿があった。
「ではこちらに・・・」
「はい、ありがとうございます」
バチカル城の謁見の間に続く扉の前、セシル少将がこの先と手を出し一行に入るよう促す。一行の先頭にいたイオンはその声に礼を言って頭を下げると謁見の間に一行は入っていくが、その姿をセシル少将は冷やかに剣呑な視線で見送った・・・
「・・・導師よ、久し振りだな」
「はい、陛下。此度はマルクトより和平の仲介を頼まれ、バチカルに参りました」
・・・そして玉座に座っていたインゴベルトはイオン達の来訪に言葉をかけるが、その目と声には情はこもっていない。そんなことに気付かずイオンは笑顔で答え、書簡を取り出す。
「和平、か。聞いておるぞ、クラマにルークからマルクトが和平の為の使者を送ってきているとな」
「そうですか・・・」
「だが話を聞けば聞く程、マルクトとの和平に踏み切る気持ちという物が失われていったな」
「えっ・・・?」
「それに加えダアトの仲介、というのであれば尚更だ。はっきり言えば気乗りがせん」
「そっ、そんな!?」
・・・そんなイオンにインゴベルトははっきり告げる、マルクトとダアトを信じる気にはなれないと。そんな不信の声にイオンは信じられないと声を上げるが、隣にいたジェイドが一歩前に足を出す。
「・・・もし差し支えがなければ、その訳をお伺いしてよろしいでしょうか?」
「そなたはジェイド=カーティスか・・・原因はそなたにもあるというのに、それすらも理解していないそなたに言ってわかるとも思えんな」
「・・・っ」
その瞳が油断なく力を込めて細められるが、インゴベルトの返答には一切の気遣いに労いなどなくただ毒があるばかり。その事にジェイドの瞳がわずかに動揺で揺れる。
「ふん、まぁいい。遠路はるばるご苦労と本来なら言うところだが、今の現状でキムラスカがマルクトと和平に踏み切る気はない。早々と国に帰られるがよい」
「そんな・・・何故ですか!?話を聞かねば到底納得出来る物ではありません!その訳をお聞かせください、陛下!」
「・・・ふぅ」
そこに畳み掛けるようにさっさと帰れとおざなりに言い放つインゴベルトに、イオンが必死な声で訳を言って欲しいと訴えてくるが言われた当人は心底からのタメ息を吐く。
「クラマにルークを罪人扱いで牢に幽閉するような者共に何故我々が対等に接してやらねばならん?」
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