蔵馬をルークの義理の兄にしたらこうなった 掌握・策謀・攻勢

・・・ファブレ公爵達が牢を出てから次に向かった場所。そこは最も攻略し、堕とさねばならない者がいるところ・・・謁見の間であった。






「・・・おお、クリムゾンにシュザンヌか。して、そなたたちの後ろにいるのはクラマにルークか?」
「お久しぶりでございます、陛下。クラマ、只今バチカルに戻って参りました」
「同じくルーク、只今バチカルに戻って参りました」
「・・・っ!」
謁見の間にて、玉座の前まで来た公爵達の姿を見て戻って来た二人の姿にインゴベルトは穏やかな笑みを浮かべながら一応の確認を取る。クラマにルークはすかさず臣下の礼を持って返すが、インゴベルトの隣にいたモースの顔には脂汗がダラダラと浮かんでいる。が、その視線はあくまで蔵馬を捉えて離さない・・・明らかに敵意のこもった視線が、であるが。
(まぁ当然だろうな、この男からすれば。俺はあくまで預言に詠まれていない存在なのだから)
その視線を屁とも思わず身に受ける蔵馬は考える、モースに何もしていない自身に対して向けるその視線の意を。
(・・・まぁいい、この男に対して好意を持てないのは俺も同様だ。それに預言の為ならどのような手段でも使うのだろう?なら俺も使わせてもらうさ、お前達を潰す手段を選ばずな)
しかしそんなことを深く考える意味など蔵馬には別にない、何故なら悪意を持ってくるのならそれ以上の策略を持って潰すのだから。
・・・その策略の初手を賛同してくれた公爵がまず、厳格な語り口で切り出す。
「陛下、この通りクラマとルークの無事の帰国を果たすことが出来ました・・・ですがその旅路において見過ごせない出来事が多々あったとの報告もいただき、この場に参りました」
「ほう・・・その見過ごせない事とは何だ?」
「まずは前日我が屋敷に押し入りましたティア=グランツという者の所業よりお話致します」
「・・・っ!」
まずはと出したのはヴァンに対しても明かしたティアの所業の件。自らの部下の不手際なだけにモースの顔が焦りでひきつるが、そんなことに構わず公爵は事の経緯を話していく・・・








「・・・という訳です」
「・・・っ!!」
「なんと・・・!・・・そこまでその神託の盾は愚かな事をしでかしたというのか・・・」
そして同じことを話しきった時にモースの顔からそれこそ滝のような脂汗が滴っており、インゴベルトの表情には驚愕と同時に険が浮かんでいた。
「・・・大詠師よ。話によればティア=グランツの直属の上司は貴殿とのことではないか。その件について貴殿はどのように釈明されるおつもりかな?」
「なっ・・・!?」
「・・・確かそうであったな、ティア=グランツの地位は。モース、そなたの配下がクラマとルークにしでかした無礼・・・それをそなたはどう受け止めておる?」
「い、いえ・・・まさかティアがそのような事をするなどとは私には・・・!」
「言い訳はよしていただこう、大詠師。ティア=グランツの犯した行動は我が屋敷に不当に侵入してきた時点で既に弁明のしようのない物であったが、これはいよいよもって個人が引き起こした問題と呼べるような事態ではなくなっている!・・・とは言え貴殿が尚もティア=グランツ個人の暴走と言い張られては面倒だ。これよりはエンゲーブの後二人が携わった厄介事の顛末についてもお話致しましょう。これを聞けばいかに貴殿でも言い逃れは出来なくなるでしょう。ティア=グランツの事だけでなく他の事でも・・・」
「・・・っ!」
静かに逃げ場を無くすよう詰めていく公爵にインゴベルトも疑心を浮かべた瞳で加勢する。だが尚も自分は関係ないと言い逃れをして貫こうとしているモースに、公爵は以降の事というモースにとってあまりに都合の悪い事象を出しその反論と息を一気に止めた。








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