蔵馬をルークの義理の兄にしたらこうなった

「・・・さて、暇をもらいたいと言ったが具体的にはどれくらいだ?」
・・・一通り互いに笑い終えた所で、黄泉は新たに空気を切り替えどれくらいの時間を取るのかを問い掛ける。
「・・・少なくとも数年単位では戻れんな。単に『南野秀一』の肉体を妖怪化するような代物ではないから、色々研究を重ねた上でどうするかを決めねばならない。『南野秀一』と『蔵馬』の肉体を完全に別離させるか、『南野秀一』の肉体に完全に融合させるか、はたまた別の手段を取るか・・・俺のような形は前例がないからな。慎重に時間を取りたい」
「成程、そう言うことなら急かすわけにはいかんだろう。まぁ今は魔界自体は基本平和だ。お前の知恵もそう急に必要になる事態もあるまい。気長に待つから、ゆっくりと問題を解決してこい」
「あぁ、すまないな」
その問いに前例がないからと難しさを語る蔵馬に、差し迫った案件もないため黄泉はアッサリと暇を出すことを許可する。



・・・かつて魔界においてのいわゆる三竦みと呼ばれる状態が幽助の提案で誰が一番強いかを決めるトーナメントをしたいと言って、予想もつかない形で潰した事を切っ掛けに魔界はかつてのような喧騒さも殺伐とした空気も前に比べ比較的穏やかになっていった。

そんな状態になったものだから特にやることもない黄泉は、参謀役の蔵馬がいなくても特に困ることはなかった。あってもそれはしたっぱでもやれるような雑務ばかりでもあったために。



「では早速俺は『南野秀一』の葬儀を進めるよう、人間界に戻る・・・ではな」
「あぁ」
許可をもらったことで礼を言いつつも早速蔵馬は黄泉の部屋を後にしていく。その後ろ姿を視界は無くとも見送る黄泉の顔には穏やかな笑みが浮かんでいた。















・・・その後人間界に戻った蔵馬は黄泉の前では見せなかった自身が老いたと見せるような姿(とは言うものの白髪になり多少シワが増えたくらいで、髪を染めればほとんど老けたようには感じられないが)でかつての仲間達に会い、『南野秀一』という存在を消す事を伝えた。

その結論に歳を取った姿を見せても人間として友達であってくれた桑原に海藤などは、ならとすんなり受け入れてくれた。その上でぼたんを通じて話を聞いたコエンマの計らいにより『南野秀一』の死体を用意して葬儀をするという芝居染みた葬儀も、無事終えることが出来た。



「ふぅ・・・これで終わりましたね」
「これでもうお前も人間界に戻ってくることはないのか?」
・・・自身の葬儀が終わったのを遠くのビルの上から確認した蔵馬に、未だ霊力を蓄える為とは言えおしゃぶりをつけたコエンマがその後ろから話しかける。
「それは俺の体との折り合いがつけば、になると思いますよコエンマ・・・ですがその時には生きていても桑原君ぐらいしか会えないでしょうけどね」
「・・・まぁ人間では百を越える歳を生きるのは難しいからな」
振り返り問いに答える蔵馬にコエンマは若干苦々しそうに答える。
・・・生きていく為の摂理が違うとは言え、友との別れは辛い物。ましてやいつ死んでも不思議ではない年齢に桑原達は差し掛かっている為、それはなおのこと現実味を帯びてしまう。コエンマも長い間幽助達と交流を持っていた為、そんな死という自らにとっての仕事での初歩を忘れていた事に迂闊だと軽く反省していた。
「・・・まぁいいでしょう。それよりどうしたんですか?」
「あぁそうだそうだ。伝えなきゃならんことがあったんだ」
そんなコエンマに空気を変える為の話題を振れば、手をポンと叩き思い出したと顔を明るくする。











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