異端者と逆行せし者達の協力

「・・・という訳ですよ」
「・・・ナタリアがラルゴの実の娘、か。預言で子供を奪われたとまでは聞いていたけど、まさかそんなことだったなんて・・・」
「ラルゴからそれを?」
「まぁ・・・ラルゴを説得するうちに色々話を聞いてね。ただナタリアがそうだとは思ってなかったから、ちょっと驚いてる」
「そうですか・・・」
・・・ナタリアについての説明も終わり、素直に驚きを口にするラムザにジェイドは少し考え込む。
「あの・・・大佐、どんなことを考えてるんですか?ナタリアとの婚約について聞いたりして」
そこに黙って聞いていたアニスが先を促すよう、何なのかと問う。
「・・・いえまぁ、簡単と言えば簡単な事です。要はナタリアが本物のナタリアでないことを上手く利用出来れば婚約解消は出来なくはないと言おうとしたんですよ・・・ただそうなった場合、彼女には王女の座から降りていただく事にもなりますがね」
「えっ!?そんな事が出来るんですか!?というよりそんな事していいんですか!?」
「・・・それはラムザにかかってます」
「僕?」
そこから深く言葉を選びつつも明らかな爆弾発言・・・王女を引きずり下ろすという物に、アニスも驚き声を大きく上げる。しかしラムザ次第というハッキリとしない物言いに、ラムザは首を傾げる。
「いいですか?前のままのように行けばほぼ確実にモースはナタリアをインゴベルト陛下に諦めていただくためにその事実を明かすでしょう。あれは本来民にも公表されていたなら王女の座は剥奪などとは生温く、王族の名を騙った物として死罪になってもおかしくはありません。そうならなかったのはあくまでインゴベルト陛下による情もありますが、偽者という事実が下の方にまで広がりきってなかったという点が大きかったからこそです」
「あ・・・確かに一部は知ってはいましたけど、そこまで大袈裟に騒がれてはいませんでしたね。ナタリアの事・・・」
そこでまた前の事を引き合いに出すジェイドに、アニスは前のバチカル城からの脱走の事件を思い出し納得する。



・・・あの時ナタリアは殺されそうになったことを取り上げられはしたが、実際に真に殺される動機という物を知っていた者は民の中にはいなかった。もし偽者だと公表した上で処刑したならそこまではと言う者もいただろうが、王族の血を尊ぶキムラスカがそれを許す訳はないとキムラスカに住む民は多少苛烈だと思いつつも納得するだろう。

だが事が大きくなることを嫌い、ひっそり毒殺で終わらせようとした。結果助かりこそしたがそれがナタリアがずっと王女で居続けられた事の大きな分岐点でもあった。もし公表されていたらインゴベルトの声とは言え一朝一夕には納められなかっただろう。



「・・・なら大佐、今度はそれを大々的に広めるんですか?」
・・・そこまで思い出し、アニスはそれを利用する気かと慎重に確かめる。そうすれば確かにナタリアは王女としていさせるには無理な状態に勝手にキムラスカの民がしてくれるという・・・かなり乱暴な手段だと思いながら。
「いえ、そうではありません。厳密に言えば大事なのはその前、インゴベルト陛下にその事実を知っていただく事です」
「えっ、陛下に?」
しかしジェイドはアニスの発案の物ではなく、ただ知ってもらうことだと言う。
「インゴベルト陛下も話を聞けばまたナタリアの事で揺れ動くでしょう。どうするべきかと。ですが前の通りなら最後に娘を取るくらいには情は残っているでしょう・・・だからラムザにかかっているんです。いえ、正確にはファブレ公爵もですね」
「父上も?」
「えぇ、いくら婚約を解消したいとは言え貴殿方の婚約はそもそも陛下に公爵の二人で交わされた物。それを貴方だけの都合で破棄となれば陛下も黙ってはいないでしょうし、その頃には娘の地位を保持することを考えるだろうから尚更です」
「・・・だから僕と父上が協力しないとナタリアとの婚約を解消出来ないのか」
「そういうことです。だからこれから私の考えたことが出来るかどうかが分かれ目になると思ってください。でなければ多分婚約解消はスムーズになどいかないでしょうからね」
「あぁ」
そこから公爵も巻き込み、かつ慎重にやらねばならないという事を重々に言い含めればラムザも重く頷く。







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