奈落はいつも足元に

「さて・・・念のため聞くが、まだ事情を把握しきれていない馬鹿はいるか?」
ナタリアの崩れ落ちる様を見てC.C.が悪態を隠しもせずに、残りのメンバーに確認を取る。とはいえ今までのやり取りで十分過ぎる程に自分達の置かれている立場を理解したのだろう、皆質問には答えずただ苦い顔をしているだけだ。
「なら行くぞ、ルーク。いつまでもここにいてもつまらんからな」
「あぁ、そうするか」
ルークがその言葉に同意すると同時に、市長にかけたギアスを解く。そして二人は部屋から出ていこうと踵を返す。
「待ちなさい、あなたがたは何をするつもりなのですか?」
呼び止めるジェイドの声に、二人は一々何をという感じで振り返る。
「こんなところにいても何も起こらん。私達はさっさと外殻大地に戻る。答えは以上だ」
「出来れば私達と一緒に行動していただきたいのですがねぇ。あなたがたはアクゼリュス行きを知っていたように思われる発言をしている。是非ともそのあたりも含めて話していただきたいのですが・・・」
ジェイドは逃がしてなるものかといった感じで圧力をかけてくる。するとC.C.はおもむろにそのあたりに転がしておいたオリジナルに近付き、首筋を掴むとジェイドの方へと放り投げた。投げられたジェイドは一応しっかりと受け止める。
「・・・お前には一応感謝はしている。お前のおかげでこんな馬鹿ではなくルークとともにいることが出来るようになったからな」
「なっ・・・!?」
C.C.からの言葉に、知っているのかという驚きの部分しか感じられないジェイドの表情の変化がでる。
「だから一つだけ教えてやろう。私の事をユリアシティ・・・ここで調べてみろ。そうすればお前の知りたい事は多少は知ることが出て来るだろうな」
「もういいだろう、C.C.。これ以上は無駄だ。早く行くぞ」
「あぁわかった」
ルークがまだ続きそうだった話を打ち切り、早く行くと促す。彼女もそれに了承を返しクルッと向きを変えて部屋を今度こそ二人ともでていった。
「待ちなさい、まだ話は・・・」
「C.C.・・・C.C.じゃと!?まさかそんな・・・」
ジェイドは二人を引き止めようと声をかけようとしたが、突然市長が名前を聞いた瞬間大声をあげた。その雰囲気にただ事ではないと見たジェイドは市長に話を聞くべきだと即座に体勢を入れ替えた。





「ふん、理解力の乏しい奴らに一々説明するのは疲れる」
「とはいえ顔は楽しそうだぞ?ルーク」
確かにルークの顔には自然と歪んだ笑みが浮かんでいる。
「まさかあれほど脆いとは思わなかった。あれだけ自らの意見を述べる時は強気だったくせに、真実を知った瞬間あれだからな」
「自分達が歩いている道が石橋だからと安心しているからだろう。石橋も凄まじい災害に会えば湖に張る氷程の強度と同程度でしかないと知らんからだ」
「・・・ククッ、成る程。言い得て妙だな」
笑うルークの笑みはより一層深く歪んだ陰のある笑みだった。




奈落の口は常に自らの近くにある。しかし人はそれを知ろうとすらしない。自らの末路はまだ先だと決め付ける安穏さがあるからこそ人なのだから。



END






6/7ページ
スキ