築き上げる苦労

「・・・そちらがそう言うのであれば一先ず信じることにしますが、これよりは我々と共に来ていただけるのですか?この通り目的であるルーク殿に会えて、ガイとも合流出来ましたが・・・」
「いえ、私は先に港へと向かいましょう。港のアルマンダイン伯爵に報告を早くした方がよろしいでしょうから・・・ただティア、お前は私に付いてきてほしい」
「え・・・私に・・・?」
続けてジェイドが同行についてを聞くと、ヴァンが先に行くと言うと共にティアに来てほしいと言うと戸惑いの様子を浮かべる。
「少し話がしたいのだ。お前がファブレで私を襲ったのは誤解だと分かってもらうこともそうだが、こういう機会でも無ければあまりお前とちゃんと接する時間も取れないだろうからな」
「兄さん・・・分かったわ、私も付いていく」
(『おーおー、随分と簡単になびくなこいつ。つーかこの時点でもうオッサンの事を疑ってないだろ、マジで』)
(だろうな・・・むしろ二人きりの時間が取れて嬉しいって空気だし・・・)
そこから兄としての顔で真摯でありながら優しい笑みを浮かべ道中で話をしたいと切り出すヴァンに、ティアは嬉しそうな空気を滲ませながらすぐに頷くが分かりやすい変心にルーク達は呆れた言葉を漏らすしかなかった。ティアの薄っぺらい考えが見える行動の数々に。


















・・・ただここでいたずらに文句なりなんなりを言っても面倒だということからルークはその場では何も言わず、先を行くヴァンとティアを見送った後に休憩所で一夜を過ごすことにした。そしてその夜・・・



「・・・あんな空気を感じるとマジでこっちのティアって師匠のことがすごい好きなんだなって伝わってきたよな・・・」
「えぇ。嘘をつかれてると感じることに考えることもなく、ほぼ盲目的に謡将を信じている・・・ただ一応は疑うという疑念を差し挟む余地はあるようですから、アクゼリュスで事実を知らせて彼女の心を謡将から引き剥がすのが最大のチャンスになるでしょうね。もしそれ以降にとなると彼女が謡将以外の人物といることが苦痛になっていることを察して勧誘するか、それこそ無理矢理にでも拘束して連れていくかのどちらかでしょうね」
「・・・そのどっちかを選ぶしか無さそうだな・・・」
・・・暗闇の平野部にて、焚き火の周りに立ちながらルークとジェイドは恒例となりつつある二人だけの会話の場で先程のヴァンとティアについてを話していた。決して良くない兆候にルークは頭を抱える形でだ。
「ただ・・・話には聞いていましたが、謡将は終始貴方に視線を合わせて話そうとしていませんでしたね。屋敷でもほとんど会話もすることなく、最低限の剣の指導しかしないと聞いていましたが・・・」
「向こうとしては俺と会話すらしたくないって気持ちがあるからだってのは分かるけど、イオンとかいる前でもあんな風だとな・・・こっちの俺も盛大に呆れてたし」
「それはそうでしょうね」
更に続けてヴァンの露骨なルークとの会話を避ける行為についての話題になり、ルークから『ルーク』の事が出るがジェイドはすんなりと納得する。二人の精神の同居についてはジェイドもだがアッシュも知っていることの為に。
「ただ何て言うか、ちょっと俺としては気が楽にはなってるんだ・・・言っちゃなんだけど俺達の方の師匠は師匠としての顔をちゃんと見せてたけど、あんな感じだとそれは少しは気持ちとしては重くはあるけど踏ん切りはつきやすいって感じられてさ」
「その方がいいでしょう。と言うより私もこちらの謡将に関しての気持ちはあのような姿を見たことから前のあの方に対してより失望が大きくなっていますし、見直すようなきっかけがない方が却って我らとしてもやりやすいでしょうね」
「だな」
しかしルークがそんなヴァンだからこそ気持ちが無くなるというように言うと、ジェイドもそれがいいと返してきた事に頷き返す。こちらのヴァンに対して気持ちが軽くなるのはいいことだと。










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