築き上げる苦労

「・・・兄さん・・・」
「ティア、お前も無事だったのか・・・」
「兄さん、私は・・・」
「謡将と話をしたいのであれば後ででお願いします。今は少しイオン様の事で謡将とお話させてもらいたい」
「っ・・・分かりました・・・」
続いてティアがヴァンと複雑そうに向かい合おうとするが、ジェイドが間に入ってイオンの事が先と言ったことに不満そうにだが一応は引き下がる。
「・・・導師もおられるとは一体何があったのですか?」
「道中での事に関しては少し長くなりますので、あの休憩所にてお話しましょう。我々がどうしてこのような形でここにいるのか知っていただいた方が貴方にとってもよろしいでしょうからね」
「分かりました、では向かいましょう」
ヴァンもイオンの姿に気付くがジェイドからゆっくり話をと言われたことに、すぐに頷く。
(『分かっちゃいたけど、本当にこのオッサン俺を見ちゃくれねぇな・・・それこそマジで会話もしたくねぇって風にしか感じねぇ・・・』)
(仕方無いというより、本音を最低限しか隠さずに生きているだけなんだろうな・・・実際俺の方の師匠もこの頃の俺の事を認めるつもりなんか一切無かったしな・・・)
そして休憩所に全員が向かう中、ルーク達は何とも言い難い気持ちを二人ともに抱く。あまりにもルークを必要がないなら徹底的に無視しすぎているその様子に。


















・・・そんな気持ちに二人がなる中、休憩所に入った一同はヴァンに話をし終わった。今までの自分達がどのようにして集まり、ここまでに来たのかについてを。



「・・・成程、そういう訳でしたか」
「つきましては貴方の配下となっている者達に我々は襲われた訳ですが・・・」
「私の関与を疑われているのかもしれませんが、私はバチカルからここまで急行した身で彼らに指示を出しているような暇もありませんでしたし、あくまでも所属的な意味で私の配下と言うだけですので」
「つまり彼らに指示をしているのは別人だということか、彼ら自身で何らかの目的から行動を起こしているのではないかということでしょうが・・・誰かの指示だというなら大詠師が妥当な所でしょうね」
「そうでしょうな」
「・・・ふぅ・・・」
(『こいつ安心したような息を吐いたぞ・・・』)
(師匠の方が信頼の比重が大きいんだろうな、モースより。と言うか多分配下として活動してた時に問題を起こしてた時の事からモースへの信頼が無くなってた可能性も有り得る気がするんだよな・・・)
(『あぁ、自分の言い分が正しいのに何でモース様は私を認めてくれなかったのか・・・とかってことか・・・』)
・・・それで経緯について話終わりヴァンがリグレット達への関わりについてを否定してモースかリグレット達の意思だろうと言うと、ティアがそっと安堵の息を吐いたことにルーク達はその理由を推察する。モースへの信頼がない理由を。
(『でもそれだとリグレット達に対してもオッサン関連じゃなくても良かったみたいな空気になってるのはどうしてだ?』)
(・・・一応リグレットの姿を見て戸惑ってたから全く気持ちはない訳じゃないにしても、師匠に比べればって感じなのかモースに反応しただけなのか・・・その辺りは多分師匠が無実であってほしいと思ってるんだろうと思うんだよ。ティアからすれば何だかんだで師匠が潔白であってほしいみたいな気持ちがあるから行動してるんだし)
(『だから否定された事が嬉しかったって所なのか・・・』)
ただリグレット達に対しても安堵の息を吐いた理由を訝しむ『ルーク』だったが、あくまでヴァン優先だからこそではとの答えに何とも微妙そうに漏らす。疑念を抱いて行動したのに、結局否定されたらそれでいいとの結論になるのかと。









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